インテル0−2リヴァプール

アリソン6ダイク8コナテ7ロボ8アーノルド6ファビーニョ6チアゴ7エリオット3マネ5ジョタ5サラー6フィルミーノ7ケイタ6ヘンド6ディアス6ミルナー-クロップ6

MOM ダイク

相手のプレスが非常に有効でリヴァプールが60分まで試合を支配できなかった事は間違いないし、エリオットの脇や裏をペリシッチやバストーニに使われ続けた。しかしDF陣がほぼ全勝したのでピンチ自体は殆ど作られておらず、ゴール期待値的にも妥当な勝利だった。2点目を取ったことが非常に大きくベスト8に進出する可能性は90%から99.9%にまで上がった

マンツーマンによるビルドアップ問題再び。完成度が低すぎる銀河系サッカー

インテルのプレスは完全マンツーマンで時間とスペースを奪い、リヴァプールの完成度が低い拙いビルドアップの問題を露呈させることに成功した。リヴァプールのビルドアップはルールというものが存在せず適切なサポート距離を取ることもない。何を出口にしているのかも共有できておらず設計がないため、彼らの執拗なプレスに苦しみアーノルドが苦し紛れにロングパスを出すいつもの悪循環にハマっていた

リヴァプールのビルドアップは狙いがはっきりしていたインテルと違い、ファンダイクのロングボールをマネやサラーが背負って受けてキープできたり、ロバートソンのゴリゴリドリブル、ファビーニョやチアゴの個人技など、ワールドクラスの選手による曲芸スキルでの打開に頼りすぎている

リヴァプールのサッカーはクロップが7年間積み上げてきた完成度の高さを褒められることが多いが、監督交代1年目のインテルに戦術的には完全に負けるただのカオスサッカーに過ぎない。リヴァプールの完成度が高いのはセットプレーくらいであり、最終ラインのライン統率も日によってはバラバラだし特にビルドアップは非常に稚拙だということを露呈した

この試合でインテル唯一の決定機となったのは15分のシーンも攻撃の形がないことから生まれた。エリオットはファビーニョからのボールに対して準備不足でパスに反応できずロスト。左サイドの展開でファビーニョが連れ出されると外のビダルと内側のチャルハノールのマークをエリオットは迷った。ペリシッチとビダルに対してファビーニョとアーノルドの2v2が成立しておりカバーに行くのはチャルハノールだという所の判断までは早かった

ところがアジリティに劣るファビーニョがペリシッチの一瞬の加速で振り切られるとカットインを警戒していたアーノルドの反応が遅れてサイドからクロスを上げられてしまった。このシーンでエリオットはチャルハノールの危険性を認識していながら中途半端なポジショニングでフリーの状態を作ってしまったのも良くなかった

コナテの絶妙なスライドでシュートコースを消したおかげもあってポストに救われたが危険なシーンだった。守備で何がいけないかと言えばアーノルドの油断である。ファビーニョは急激なスピードの変化への対応力が低く交わされることを頭に入れるべきだしクロスは上げさせるべきではなかった。しかしファビーニョにプレスがかかっているのにサポートに行かず前に行こうとしたエリオットの連携ミスとチームとしての約束事のなさこそがアーノルドやエリオットの守備以上に問題だった

インテルの完璧な戦術を打ち砕くリヴァプールの個

インテルの攻撃面ではバストーニやデフライはパスが非常に精度が高くシュクリニアルもグラウンダー系のパスが非常に正確でリヴァプールのプレスを何度か無効化した。ブロゾビッチが最終ラインに入ってシュクリニアルが右のサイドバックとして大外に張る形だったりリヴァプールWGの横スライド速度が落ちていることを彼らは見抜いて上手く組み込んでいた

彼らのビルドアップの出口は大体がWBやサイドに開いたCB(バストーニかシュクリニアル)になる。だが外をWGに上手く封じられた時の対策としては1度GKやスイーパーまでボールを戻して逆サイドもあるよ、と見せることで両WGを外に開かせるのが上手かった。こうしてリヴァプールの最前線が横に広がるとインサイドを中継地点としてWGの裏の広いスペースをWBが使うという作戦も両立してビルドアップ対策への対策を講じていた

リヴァプールが対策の対策としてチアゴとエリオットがチャルハノールとビダルを高い位置までマークしてインテルがフリーの選手を作り出せなければCBからジェコに向けてロングボールである。するとリヴァプールのFW3枚とIHの5枚が置き去りになり、5vs5の局面が完成する

12㎞以上も走る彼らのMFの走力はリヴァプールMFを上回り続け、特に後半の立ち上がりからは中2日に加えて遠征だったリヴァプールに対して彼らは中3日だった事もあってCBとジェコが競った2ndボールを拾い続けた。この支配率83-17とインテル優位だった時間が49分~59分と長く続いた(特に54分から91%を支配されるほどバラバラだった)ので互角の印象を与える事となった

更にリヴァプールのゴール期待値は殆どがセットプレーによって生み出されていたので崩された感覚がないことも互角という印象を与えたのだろう。しかしながら選手のクオリティに相当な差があり、得意のセットプレーから作り出した数々の決定機から2得点したリヴァプールの勝利は妥当だった

支配率でみても前半はお互いに決め手を欠いた50-50だったが走力に頼っていたインテルが後半につぶれる事は明らかだった。そしてエリオットというハンデがなくなった60分以降リヴァプールの支配率は67%を超えた。彼らの戦術が何度か機能してリヴァプールのプレスを上手く崩した場面は10回弱あったが、その後はほぼ全てダイク、コナテ、ロボ、ファビーニョ、チアゴといったリヴァプールの個によって押しつぶされてしまった

エリオットのクオリティに苦しむアーノルドとファビーニョ

戦術で負けていたのはゲーゲンプレスしか作戦をもたない戦術的に劣るクロップが監督なのでいつものことで仕方がない。普段は選手の質で殴り勝てるのに、この日の60分まで出来なかった原因がエリオットである

エリオットは技術的には優れた選手であり、プレー選択の面でも優れた賢い良い選手だ。しかしながら彼はサイドハーフまたはウィングの選手であり、IHとしての適性は現時点では0と言っても良い。とんぼ氏が長年にわたって指摘されているように彼は前を向く力が低すぎるし、IHとしては致命的なレベルでゴールを背にした向きでのプレーが下手だからだ

また近距離のパスが9/12で成功率75%というのはIHとして低すぎる。試合全体のパス成功率も74%と低く、プレスがかかると彼のところでボールを繋ぐことが出来ず3回か4回ほど危険なロストを招いた。特に24分40秒あたりのロストはIHならば絶対にやってはいけないコントロールミスだった。ロングパスの精度は高いものの、近中距離のパス精度はCLレベルに出す選手ではない

アーノルドの酷いスタッツをあげつらっている他サポが居たが、IHからの適切なフォローがなく数的不利で戦い続けた時間が長かったのだから苦しいに決まっている。スタッツ的にはアーノルドだけでなくファビーニョも苦戦したようにリヴァプールのビルドアップは問題だらけで最大の原因はエリオットの力不足にあった

またエリオットは守備の面でも効いていなかった。アーノルドの近くで数的不利を作られないように右のIHには低い位置から貢献できるチアゴを置きたいと私は事前に書いていた。しかし残念ながらナポリ戦の戦い方から予想された通り、CBのオーバーラップによるSB化にに対策は全くないどころかスペースの管理も下手で技術的にも問題が多いエリオットを使うというハンデ戦になってしまった

インテルがリヴァプールをエリオットが交代する60分まで後半に圧倒した理由はリヴァプールが15分近くシステムの変更に対応できなかったからである。後半のインテルはバストーニが左サイドに大きく開いた4-4-2となっていたが、このバストーニをエリオットが全くケアできなかったためデフライやブロゾビッチなどの正確なパスによって崩され続けた

まず46分10秒頃のシーンではファビーニョのヘディングが相手ボールになった際、4-4-2に変化してLBの位置に入ったバストーニのポジションをサラーがカバーできていない状態でプレスに行ったのは最悪の判断である

また50分頃も中途半端なポジショニングでSB化したバストーニの存在を全くマークできておらずピンチを作られかけた。バストーニがフリーでボールを受け、エリオットが空けた大きな穴を埋めるために各自がスライドしていき、ポジショニングが崩れてロングボールを蹴り返してはボールを失った

仮にインテルがロバートソンのような世界最高レベルのウィングバックやサイドバックが出来る選手を持っていたなら流石のリヴァプールも苦しかっただろう。しかしペリシッチはゴール前でのクオリティは高いがクロスの精度は並。ダイクとコナテなどの適切なサポートもあって彼らは数的優位を活かせなかった

今日のエリオットのクオリティは何故クロップが彼を使い続けるのかという疑問をより大きくすることになった。前半はサイドハーフの位置に開いてパスコースを消してカウンターに脆くした時間が長く、後半は逆にバストーニのポジションに気付かずインサイドに止まって相手のサイド攻撃を許した。若い選手に多大なプレッシャーを負わせるべきではないと日頃から口にしているクロップは彼に何を期待しているのだろうか

若き日のアーノルドは守備の問題が非常に大きかったものの、裏を取られる回数も徐々に減ったり対人守備が劇的に改善されたりした。またアーノルドのキック精度にはクラインやゴメスといった並のサイドバックではない非凡な才能があった

だからアーノルドを使うことに私は全く疑問を抱かなかったのだが、エリオットのスキルは課題が何一つ進歩していない。試合に出る前にショートパスの精度を上げ、ボールの受け取り方を練習で磨くべきでしばらくベンチに置くべきだ。少なくともケイタより優先させるレベルの選手ではない

効いた交代

実力不足のエリオットをケイタに、身体能力不足でスライドが間に合わなかったり2ndボールを拾えなかったファビーニョをヘンドに代え、明らかに疲れが見えて周囲のサポートが悪くなり、プレスも効かなくなっていたマネをディアスに代えた

この交代策が最高にハマった。ビルドアップで苦しんでいたリヴァプールはディアスという預け所を見つけると途端に落ち着くことになった。そうなるとインテルはボールを奪うだけの力は残されておらず、落ち着いてボールを回すことが出来た。その後はインテルのスタミナ切れもあって防戦一方となり、セットプレーで先制点を決められたインテルは途端に意気消沈して与えてはいけないトドメの追加点も失った

完璧なリヴァプール対策でも完敗の苦しいインテル

インテルのリヴァプールのプレス対策は17-18シーズンでリヴァプールが完璧な対策で4-3で下したPLホームのシティ戦を思い出させましたね。インテルには完璧な戦術、実行した選手の戦術理解度と体力にファンの情熱という魅力的なサッカーに必要な殆ど全てが揃っていた

それだけにビルドアップ戦術が殆どないリヴァプールに対してセットプレーなど個の技術力に完敗したのは無念だろう。リヴァプールはサッカー界以外の知名度がない地味なメンツで昔のマドリーの銀河系サッカーをやっているだけである。そして悲しいことにどれだけ頭で考えた対策も銀河系サッカーは打ち破ることがあるのだ

フィールドの11人中10人は世界トップレベルの力を持っているからリヴァプールは強いのであって完成度は高くない。まあどちらにせよ個の力があれば殆どの問題は解決するし、個の力がなければ監督を変えても苦しむものだ。どこかのチェスターユナイテッドのように

ホームで再びエリオットを起用するハンデ戦となっても2点取られる事はなさそうでCLのベスト8は濃厚となった。この日のインテルはラウタロがラモスの如くチアゴの手を取って肩を地面に叩きつけたり(自然に故障させたラモスに比べて下手すぎ)、コナテのタックルに痛がるフリをしたシーンを除いてクリーンだった。またスタジアムの雰囲気も熱気にあふれていて気持ちの良い試合となった。次節もそんな試合を期待しつつ、油断せずに勝ち進みたい。そしてCL準々決勝でも楽なカードを引きたいものだ。目指せ4冠、である

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