会社やクライアントに依存しない働き方
こんにちは。秋元康さんが20年前のインタビューでこう仰ってました。
大多数の支持がヒットにつながる『最大公約数の時代』は終わった。これからはインターネットのように『最小公倍数の原理』が支配するパーソナルなメディアが流行の拠点になる
現在全くそのとおりの世界になっています。稀代の天才プロデューサー秋元さんの慧眼恐るべしですね。
さて・・
先日こんなマシュマロが届きました。
僕自身フリーのデータ分析ディレクターから起業に至った男なので、ちょうどタイムリーだと思ったので僕の経験とか考えとかを書いてみたいと思いました。
大前提とする現世の仕組み
まずもう「大学卒業して企業に就職して、「安定」と引き換えに滅私奉公することが標準」という社会はとっくに終わっています。
結論から書くと、この世は
貨幣経済→評価経済→信用経済(今)
なっています。昔はお金をたくさん持っている人が大正義の世界でした。なので、みんな「貯金をしろ」「お金を貯めろ」と言ってました。まだネットがなく、個人に発信力がなかったので個人の力がほぼほぼお金でしか測れなかったのですね。なので「お金を持っている」ことが正義でした。
そんな中、ネットが成熟し、SNSが登場して、「評価経済」が始まりました。評価(フォロワー数)をたくさん持っている人に、お金が集まるので、今度は皆、評価(フォロワー数)を稼ぎ始めました。お金はフォロワー数に比例しました。どんな手を使ってもフォロワーさえ集めれば正義。ひたすら昆虫採集のようにフォロワーだけを集める「力(数)こそパワー」の世界です。
最近になってユーザーのリテラシーが高まってくるとそのような評価経済の覇者の欺瞞のようなものが糾弾されるようになってきます。いわゆる評価経済でブイブイいわせてきた芸能人やインフルエンサーは「うかつなたった一言」や「不祥事」で一発退場することも多くなってきました。
実は、評価経済と信用経済は似ているのですが、退場した後の強さが「信用経済」の本質です。
ここで評価・信用経済における「人気」と「認知」はぜんぜん違うことをしっかり整理しないといけません。
昔女性タレントと音楽グループのボーカルの不倫騒動が起こったとき、女性タレントはあらゆる出演番組やCMが中止となり、あっという間に世間から干されてしまいました。当然すべての収入を広告主やTV局に頼っていましたから彼女には干された瞬間から1円も入ってきません。
ところが、音楽グループのほうは、相変わらずCDは売れ、ライブのチケットはソールドアウトで、少なくとも「金銭的には」まったく痛くも痒くもないという状況でした。
何が明暗を分けたのでしょう?このヒントが「認知」と「人気」の違いです。女性タレントは多くのレギュラー番組出演やCMなどによって国民の殆どが知らない人はいないというほどの「認知」を得ていましたが、ファンが直接お金を課金する手段を持っていませんでした。いえ、そもそもそのようなファンがいたかどうかも怪しいと思います。
彼女はどんな商品もサービスも食べ物もクライアントからのお金と引き替えに「笑顔でおいしい」と褒めることで、たしかに「お金を」得ていましたが同時に「信用」を失っていまいた。
一方、音楽グループのほうはCDやライブやグッズという「ダイレクト課金」の仕組みがあったのでTVやCMに出られなくても痛くも痒くも有りません。また、嘘をつかない、ブレないスタイル、そして圧倒的な曲のクオリティによって「信用」を稼いでいたので不祥事があってもファンは「信用」に付いてきました。
※念の為注意:当記事は不倫を擁護・肯定する意図は全くありません。
まとめると、評価経済は「フォロワー数と大きさと広告費」で成り立ち、信用経済は「フォロワーの深さとダイレクト課金」によって成り立っているということになります。
人生の絶頂からどん底へ
前置きが長くなりましたが、そこを間違えるときっとこの先の話はまったく入ってきません。とりあえずこの時点では「今は信用経済なんだな」という認識だけしてください。
さて、僕の話を少ししたいと思います。僕は大学卒業後、東証一部上場企業に入社し、途中で専務直々に一本釣りされ、予算1億5千万を渡され、社長直轄プロジェクトのリーダーを任されました。
同期と比較しても順調に出世街道を歩みました。超堅物でゴリゴリの地方公務員だった父親にとっては「自慢の息子」「理想の成功ルート」を歩んでいたと思います。
当時まだ20代だった僕にとって、会社の待遇や環境、地位、給料、上司(直轄だったので社長と専務だけだったけど)、仲間、全てに満足していましたがプロジェクトが一定の成功を収めたある日、転職を決意します。
理由は「この会社でこれ以上できることはない」でした。
その後、僕はネット系ベンチャー企業の執行役員として既存事業や新規事業に関わりながら上場準備に邁進します。
その会社はベンチャーにありがちな給料はいいけど体育会系の社風、ようするにクソブラック(笑)だったり、まるで怪しい自己啓発セミナーの教祖のような社長の「ありがたい精神論(笑)」や、ドラマのような裏切りと権謀術数に翻弄されていました。
仕事では数少ない「信用できる仲間」に助けられて、それなりに結果を残すことはできましたが、すっかり心身ともに病んでしまい、プライベートも荒んでいました。
攻撃的な言動を繰り返して多くの友達が自分の周りから去ってしまったのもこの時期です。
ついにはうつ病を併発し、毎晩風呂に入ると全てが嫌になって泣き出してしまうほどになり、心配した家族の助言や助けもあって上場直前に退職を決意しました。
そのまま会社に残れば豪邸が建っていたであろう額面の「ストックオプション(予め決められた価格で自社株を買う権利)」も失いましたが、いまとなっては思い出したくもない闇の歴史ですです。
そして鷹匠へ
その後、転職先も決まらないまま、自宅でぼんやりとTVを見ていると、ある番組で地元の鷹匠を紹介していました。幼い頃から生き物が好きで鷹匠に憧れていた僕は、その鷹匠に即メールをし、翌日会う段取りをします。
開口一番僕は「弟子にしてください」と言いました。
鷹匠というと「気難しい怖い人」というイメージがあったのですが、元々学校の教師をしていたその鷹匠はとても物腰が柔和な方で、「いやぁ・・僕は弟子は取ってないので・・あ、もちろん訓練の仕方は教える。ま、あえて言うなら『友達』でいいじゃない?w」と笑いながら言ってくれました。
そして
「本気でやる覚悟があるなら●●万円で僕の鷹を譲ってあげましょう」
と言いました。相場の倍近い価格ですが、鷹匠によって完璧に訓練された美しい鷹が空を舞い、呼び声に鋭く反応して腕に戻ってくるのを見た僕は
「わかりました。なんとかします」
と言い、翌日にはその金額を用意して再度会いに行ったのでした。
後日談ですが「僕は気持ちを試すためにあの金額を提示しただけなのに、山本さんに即答で買いますって言われてほんとにびっくりしたし。ぼったくりしちゃってどうしよう悪いことしちゃったってすごく自己嫌悪したよねw」って鷹匠は笑っていました。
「ぼったくり」部分はもちろん伝統技法の伝授や、漆塗りの高級な鷹狩用具を譲っていただいたりで、すぐにそれ以上の還元をしてくれました。
その後約3年に渡り、猟期(11月ー2月)はほぼ毎日。鷹匠と行動をともにしました。愛鷹が初めて獲物を獲った時は震えるくらい感動し、鷹匠仲間で食べた鴨鍋、キジ鍋は人生で一番美味しいものでした。お金は全然なかったけどとても充実した楽しい日々でした。
鷹匠で学んだ最も大切な言葉は
「腕に鷹を『呼ぶ』のではないよ。あなたの腕を『鷹が最も安心して帰ってこれる場所』にするんだ」
です。
「呼ぶ」のではなく「安心できる場所」を整える。
この経験は現在でもとても役に立っています。
しかし、個人的都合でいろいろあって、鷹匠生活も一旦休止をします。
45歳で起業、Vtuber事務所の設立へ
その後紆余曲折あったのですが、リーマン時代の親友のツテや紹介などもあって、フリーランスのデータ分析ディレクターとして、それなりにほそぼそとした収入を得ることができました。
その後ひょんなことからZOZOTOWNのAIプロジェクトの顧問として約2年間お世話になる傍ら、絵守未來プロジェクトを開始しました。
絵守未來を始めた経緯などは長くなるので省略しますが、これを始めるに当たって自分に課した3つの縛りをご紹介します。
1.継続:最初の2年は無償奉仕。そして2年は何があっても続ける。
2.信用:作品に嘘をつかない。誰にも媚びない。世辞で褒めない。
3.信念:利益は 会社 < イラストレーターとすること。
もちろんそれまでに培った細かいノウハウなどが生きていることもあるのですが、原則としてこの3つはずっと守ってきたことです。
結果として、絵守未來プロジェクトは多くのファンやイラストレーターに支えられて、「事業」としてギリギリ成立するところまで来ています。
ですが、3年経ったある日、ふと「事業をスケール」ことに全く無頓着だったことに気づきます。(地獄的に遅い)
会社を大きくすること自体はいまでも目的ではないのですが、より多くのイラストレーターの期待に応え、より多く支援するには今のスピード感では僕の寿命が尽きてしまう・・そう気づきました。
かといって、絵守未來には3つの縛りがあるので「ドーン」と拡大路線を取ることが難しい。
どうしたものか。
新規事業か?大好きなバイク屋?いや、好きなものを仕事にしてはいけないって婆っちゃが言ってたな。「バイクが好きなことと、バイクを売ることは全く違う」って言ってたな。これは100%絶対すべるぞ・・。じゃあうどん屋は?・・なんで急にうどんやねん。・・いや、実はいつかやりたいけど今じゃないな。
などと考えてる時に、仲良くさせてもらってた絵師さんからLINEが来ました。
「山本さんに折り入って相談があります」
聞くと、「とあるVtuberが困っているので人生の先輩として相談に乗って欲しい」というものでした。それが僕とVtuberの最初の出会いです。
それまでどっちかというと僕はVtuberには否定的でした。理由はいくつかありますが、最大の理由は「外見」です。
Vtuberは外見に変化が見られないことから飽きられやすく、動画内容の違いも明確化しづらいのです。かといって、Vtuberに大きな変化を加えてしまうと、これまでのイメージ崩壊、キャラクター崩壊を招き、登録者離れを引き起こすという矛盾を抱えているのです。
また、Vtuberにとって「かわいい」というのは機能要件ではありません。なぜなら全員フラットにかわいいからです。(あえてブスな子もいるけど正直それは差別化はできても優位性にならないのでスベってると思う)
外見的は皆同じだし、YouTuberのように外に出ていくことができません。差別化しづらく、優位性が作れず、誰もかれも似たようなエンタメしかできません。持っていける武器がとても少ないんですね。
「かわいい以外の圧倒的な何か」がないといけなくなるため必然的に「かわいい」単体で商品サービスになる人間よりオペレーションの難易度が高くなります。
また、Vtuberには生理的だったり宗教的だったりな理由で「とにかくキモい」という層が一定数います。特に欧米や、年齢の高い層。これもスケールする上では決して無視できない影響があります。
一言でいうと動画でやるなら「人間でいいじゃん」なのです。
ですが、Vtuberさんと話す中、どんどん興味が湧いてきて
「困難だからこそやりがいがあるのでは?」
「札束で差がつきにくいからこそうちみたいな零細でも勝ち筋があるのでは」
「Vtuberって外見的にハンディキャップや障がいのある方でも活躍できるんじゃ?」
と思うに至ったんですね。さらにVtuberを始めるに当たっては多くのイラストレーターに知名度や信用があるうちはVとも親和性高いし、イラストやグッズやイベントのノウハウもあって自社で全て完結するってうちくらいで、先行者と比べても控えめに言って圧倒的アドバンテージがあるなと思いました。
思い立ったら即行動の僕です。LiverCityという事務所を設立し、社名も同時に登記変更。とても親切なSHOWROOM様との出会いや、色んな人の助けもありつつ、素晴らしい演者との出会いにも恵まれ、設立3ヶ月でなんとか軌道に乗せることができました。
マシュマロへの回答
死ぬほど前置きが長くなりましたが、まず「世界設定」が頭に入ってないとこの世という「神ゲー」は楽しめません。その上で、マシュマロで求められている僕のスタンスを書きたいと思います。
「技術で食っていく」事自体は悪いと思いません。ただし、僕の経験上ですが、何年も業界にいたのであればそれなりに知名度も上がり「引き合いが増えてくる」はずです。僕がそうでした。僕みたいな場末のフリーランスでさえ、日本IBMから「講師依頼」が届くんですから。
あなたのことをめちゃくちゃ尊敬し、応援しているという大前提で聞いてほしいのですが、ちょっと厳しい言い方をすると何も手元に残らない「人の人生」を生きてきてしまったのかもしれません。
それは今日で終わりにしましょう。あなたはあなたの人生を生きるべきです。それにはたった一つのことを行えばOK。しかもいますぐできます。
それはつまり何かというと
決定権を自分で持つ
ということです。今あなたに決定権はありますか?おそらくいま決定権を持っているのはクライアントではないでしょうか?例えば
今すぐ派遣を辞めて起業する
これも決定権の一つです。
会社は10万円もあれば明日にでもすぐに設立できます。
実は「社長・起業家」という称号はたった10万円で買えるんですよ。安いですよね。まったく実体がなくても田舎の親戚くらいならこれだけでめちゃくちゃドヤれますよ笑
冗談はさておき
次に大切なことを言います。決定権を自分で持つことに覚悟を決めたら
困っている人を見つけて、それをあなたの技術で解決してください。
ここで肝心な考え方は「あなたの技術をどう使うか」では有りません。そんな自分目線の考え方は成功を掴むためには最もやってはいけない考え方だと思ってください。必要なのは圧倒的他者目線です。
まず困っている人を見つけ、それを解決する「手段のひとつ」としてあなたの技術を使ってください。あなたの技術はお金を稼ぐツールではありません。
誰かを助ける武器です。
まず目の前の誰かを1人助けてください。それが全てのスタートです。
闇雲に動いてはいけない理由
よく巷で言われる「とにかく行動だ!」「とにかくやれ!」というのは正しいんですが笑
それを勘違いして、多くの人が「野球やったことない人が、一打席目からホームランを狙う」ことをしてしまいます。
そして夢破れて(当たり前笑)死体ゴロゴロ・・焼け野原です。
じゃあどうするか・・・というと、まずは「必ず成功する、しかも1日とかすごい短期で成果がでるもの」をやったほうがいいんですね。
例えば誰か困っている人がいたとします。それをあなたの技術で解決できるとします。僕だったらまずそれを勝手に作ります。
作った上で、その人に「ひょっとして力になれるかもしれないのでやらせてもらっていいですか?」と聞いてみます。OKが出たら一時間位ですでに作ってあったものを渡します。相手は当然「速い!?」とびっくりします。感謝もされます。これで相手の記憶に「めちゃくちゃ仕事が速い人」「鮮やかに悩みを解決してくれた人」って印象が残ります。
初期クオリティが70点でもとにかくアウトプットが早く、かつ毎日改善してどんどん良くすることができるという「めちゃくちゃ速い人」はどの業界でも圧倒的に人気です。そうやって小さな成功を積み重ねることで、「大きな成功」を引き寄せます。
みんな勘違いしている人が多いのですが、多くの人に信頼され、周囲に人が集まってくるのは「夢やアイデアを語っている人」ではなくて実戦経験が豊富で「こいつなら実現できそう」と思われる人です。
もしあなたが宇宙人の大群に襲われているとして、ついていきたい人は
世界一の戦略コンサルタント か ジェイソン・ステイサム
どっちですか?
「こいつの近くにいれば実現してくれそう(助けてくれそう)」こんな人物になればなるほどあなたはどの業界でも仲間が集って成功に一歩近づくことができます。
まとめ
マシュマロに答えるふりをして、どんな人、どの業界でも通用するように組み立てたので、書き上げるのにとても時間がかかってしまいました。
とにかくマシュマロの質問主さん、僕は45歳で起業した超遅咲きですが業界の隅っこでなんとかご飯を食べることができています。物事に遅すぎるとか早すぎたなんてことはありません。いますぐ自分に決定権を持ってください。応援してます。
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