大谷選手の結婚報道で加熱するメディア狂騒曲

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 政倫審、予算案通過の政治ドタバタ劇大混乱の中、大谷選手結婚報道にメディアはお祭り騒ぎ狂想曲に踊っている。

 記者会見した大谷選手は、「メディアがうるさいので」、と結婚発表理由をジョーク交じりに明かした。
 こういう場合、欧米でうるさいのは「パパラッチのメディア」でタブロイド紙をさすのだが、日本の場合は高級紙とされる大新聞までが、パパラッチ同様にプライバシーに踏み込む報道をすることが多い。狙われたら最後、プライバシーはとことん破壊される。荒らされたら草木も生えなくなるから、油断できないのである。
 1997年、パパラッチに狙われたダイアナ妃がパリの高速道路トンネルで事故死した時、私はパリにいた。あの惨劇はいまでも忘れない記憶として残っているが、ル・モンド紙がパパラッチ特集を組んだことがある。
 欧米では高級紙とパパラッチ紙は峻別されていて、ル・モンドのような伝統ある高級紙は、スキャンダルやプライバシーに属する記事は書かない。
しかし高級紙でもスキャンダルを書く唯一の例外は、日本のメディアとル・モンドは指摘した。
「日本の大新聞はスキャンダルも書き、パパラッチと同じ取材をする。しかしパパラッチといえども、王室やスター、セレブ、上流階級の人々のスキャンダは狙うが、いたずらに普通の人々のプライバシーは追わない。しかし日本のメディアは事件に巻き込まれた普通の人々のスキャンダルを書き、ターゲットを追い詰めることが多い。メディアが有力政治家や支配階層をウオッチするのではなく、弱者をターゲットにすることが多い」と書いた。

 

それにしても大谷選手の結婚報道加熱は異常だ。


朝から晩までテレビは大谷選手一色である。

 理性を欠いた一極集中報道は、日本メディアの悪しき異常性と特質を如実に物語るサンプルだが、近年日本の経済、外交、政治、教育、知力、少子化、メディア、安全保障等の諸指標に渡る国力落ち込みへの反作用として、世界のトップスターへと昇りつめた大谷効果を持ちだす、虚勢を張った「ニッポン凄いバージョン」報道の相乗作用もあるだろう。

 要するに、日本メディアの大谷結婚報道加熱には、「失われた30年」の自信喪失ジャパンへの「癒し報道の側面」があるのだ。
それにあたっては、日本人のメンタルには、海外先進国に対するコンプレックスが、根強く染み付いていることが考えられる。
  MLBで大谷選手が、「もう憧れるのは辞めよう」とサムライジャパンの面々に呼びかけて、試合に臨んだ風景を思い出す。
 大谷選手が言ったとうり、憧れている間は相手と対等な関係にはならない。  

 もちろん、マスコミの過剰報道は大谷選手の責任ではないことはいうまでもない。野球一筋に生きる大谷選手には、さぞ迷惑な話だろう。

 しかしそんな劣悪なマスコミの前に晒されるのも、傑出したスターの運命であることを、大谷選手は自覚しているようだ。

 とはいえ、プライバシーを守る為に発表した結婚発表が、メディアのお祭り騒ぎとなり、公表されなかった”お相手探し”に至るおせっかいなマスコミによって、さらなるプライバシーを穿られる危機に大谷選手は直面している。

 これが、ダイアナ妃を追い詰めたパパラッチを糾弾した欧米社会だったら、許される行為ではあるまい。

 メディア腐敗が極端に進行した日本社会は、そんな前世紀的で劣悪なマスコミのお祭り騒ぎから、大谷選手のプライバシーを守る義務を負っているのではないか。どうしたら大谷選手の人権を守ることができるのか、メディアの報道姿勢や記事、番組に対する市民レベルの真剣な議論を起こすべき時期が来ている。

 政治もメディアも自らの内なる腐敗の中にどっぷりとつかり、既得権益を貪るだけで、本心からの反省のそぶりも見えておらず、改革は期待できない。ここに至ったからには、市民社会が率先して議論し、有効な影響力を齎す行動を起こす必要がある。
 それが大谷選手に資する道ではないかと思う。まずはアメリカで活躍する大谷選手を静かに見守りながら、応援したい。

 実際、大谷選手は宮沢賢治を生んだ岩手の地から「銀河鉄道」に乗って渡って来たような傑出した選手で、日本の誇る「希望の星」だと私も思っている。





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