映画監督として海外で活躍するジャーナリスト伊藤詩織さん

伊藤詩織監督、性的暴行の調査過程を自ら記録『Black Box Diaries』サンダンス映画祭へ出品(cinemacafe.net) - Yahoo!ニュース

 今年1月に米国ユタ州で開かれた独立系映画祭「サンダース映画祭」で
ジャーナリスト伊藤詩織さん監督の映画「Black Box Diaries」が、国際(長編ドキュメンタリー部門で出品された。
自らの性被害体験をテーマにしたドキュメンタリー映画だが、彼女の勇気あるジャーナリスト魂への共感が集まり、コンペティション作品に選ばれた80点中、ロサンゼルス・タイムズ紙はベスト10に選んだという。
 
 2015年に元TBSのY記者から性被害を受け警察に被害届を出したが、検察捜査で「不起訴処分」とされた不信感から、伊藤さんはスタート、自力で証拠資料や証言を集めて事件を再構成した。まさにサツ回り記者たちが足で稼ぐ集団で行う仕事と同じことを、被害者の伊藤さんは自力やってのけたのは驚くべきことだった。
 またジャーナリストが被害者となり、自力で事件を追及したケースは、日本のジャーナリズム史上、稀有なことだろう。

  まさに、伊藤さんの仕事は、日本の主流メディアに欠如する欧米型の「調査報道」で、かつて米国ワシントン•ポストの「ウォーターゲート事件」スクープと同じ手法なのである。

 映画では、民事訴訟で勝訴するまでの約400時間に及ぶ映像資料を使ったといい、これらが映画製作の元になった。また、伊藤さんの著作『Black Box』(文藝春秋社)には時系列で追った事件の経緯が刻銘に描かれている。
 しかし当初、日本の新聞やテレビ等の主流メディアは事件を報道することはなく無視し続けた。やがて海外の英国公共放送BBCが放映したこと等で、事件はようやく日本でも知られるようになる。
 事件から2年後の2017年10月、日本外国特派員協会で実名を出した伊藤詩織さんの初記者会見が行われた。5月に予定されていた会見が延び延びになったことを伊藤さんは明かしている。
 会見で伊藤さんは事件の経緯を詳細に語っている。なぜY記者は直前で逮捕を免れたのか。記者会見で事件を公にしてからは、「多くの迫害もバッシングを受け、前のように生活することができなくなった」と記者会見で語っている。「日本で性被害を告白することには強いダブーがある。私はこのタブーを破りたくて、顔も名前も出して告白することを決めた」と強い決意を語っている。

 この時の記者会見の内容は以下のリンクを参照してください。

、BBジャーナリスト・伊藤詩織さんが会見(全文1)逮捕見送り問題報じた社はなし(THE PAGE) - Yahoo!ニュース

 もし海外メディアが報道せず、日本外国特派員協会の助けがなければ、伊藤さんの事件は表に出なかったかもしれない。日本の主流メディア、主要官庁にニュースソースを依存する「記者クラブメディア」とは、何という情けない存在であることがよくわかる。かつて記者をしていた我が身を恥じるばかりである。
 事件の背景には、TBS記者が安倍首相とのインタビュー本を出版するなど、当時の安倍首相とは親密な関係にあり、官邸中枢にも太いパイプがあったことなど、政権に食い込んだバックグラウンドと無関係ではなかったはず。果たして政治介入はなかったのか。しかしこの点は未だ詳細には解明されておらず、ブラックボックスの謎に包まれたままだ。Y記者は「知名度が高く、業界でも尊敬されている人」だから、告訴をやめるよう様々な圧力をかけられたことも、この時の記者会見で、伊藤さんは明かしている。
 しかし、外国特派員協会の記者会見の後、様々な誹謗中傷が伊藤さんの元に寄せられるようになり、止む無く活動の拠点を海外に移さざるを得ない状況に追い込まれたという。
 上述の朝日記事によれば、「米国ではMetoo運動の後、多くの人が性被害についた語り始めた。でも、被害を訴える女性がトラウマの追体験を強いられる状況はかわらない」との指摘がある(朝日新聞2024年2月6日夕刊一面)。同紙によれば「変化は遅いけど、起きている」と伊藤さんは答え、「問題は、毎回私たちが顔を出してメディアに話をしなければいけないのかということ。私たちが声を上げる必要がなくなるよう、システムが変わることを望んでいる」と話している。

音楽家の坂本龍一さんはジャーナリスト伊藤詩織さんを高く評価していた

 
 あまり知られたいないが、亡くなった音楽家の坂本龍一さんが、伊藤詩織さんのジャーナリストとしての仕事ぶりを高く評価し、その勇気を称え、期待のオマージュを贈っていたことを知りました。

「彼女の勇気ある行動が、ジャーナリズムの希望を世界に知らしめた」と坂本さんは語っています。

  私は若い時代の坂本さんにインタビューしたことがあり、現代音楽の話しを聞きましたが、丁寧なロジックの話し方だったと思います。

 真実を伝える能力をなくした今の日本のジャーナリズムは堕落腐敗し、崩壊の瀬戸際にあります。まさに「歌を忘れたカナリア」状態にあり、やがて裏の小藪に捨てられる運命にあるのではないでしょうか。

 伊藤さんが受けた性被害に目をつむり、BBCなどの世界メディアが報じたり、外国特派員協会主催の記者会見によって、初めて日本国民は事実を知りました。

 長年、この世界で仕事をしてきた小生は、忸怩たる気持ちで唖然とし、日本の新聞やテレビへの不信感を改めて痛感しました。

 ジャニーズや吉本芸人の週刊誌報道などは、まだ継続中です。例の旧統一教会問題も解決していません。所管する肝心な文科大臣が同協会と深い関係にあったことが報道され、まだ問題は隠されたまま。
 自民党の「裏金は還付金と言い換える」ようで、言葉もありません。

 日本の政治やメディアは、G7先進国の国際基準から大きく逸脱し、もはや文明国の報道機関とはいえません。

 戦後、GHQによる新聞、放送の改革が行われ、日本社会の民主化を目指して、国連憲章に基づく「言論の自由」や「人権規範」の勧告がありましたが、あれから、喉元を遠く過ぎた現代の今、すっかり忘却し、「前世へと逆戻り」した観があります。誠に残念なことです。

 坂本さんが、ジャーナリスト伊藤詩織さんへ送ったオマージュを以下に引用紹介します。

 『伊藤さんと初めてお会いしたのは2018年。僕がキュレートしたロンドンの音楽フェスに遊びに来てくださったのがきっかけです。当時はメディアを通してしか彼女を知らなかったのですが、実際にお会いしてみるととてもリラックスした人で驚きました。このアワードでも、伊藤さんをいつか推薦できたらと思っていたので、願いが叶ってうれしいです。

世界的にセクシャルハラスメントに立ち向かう「#MeToo」や、ジェンダーの平等を訴える動きが出ていますが、日本はまだまだ声をあげにくい社会です。そんな閉鎖的な環境で勇気を持って行動を起こすというのは並大抵のことではありません。僕が女性だったとして、彼女と同じように振る舞えるかといったら、そんな勇気はなかなか持てない気がするんです。そういう意味でも伊藤さんを大いに尊敬しています。

でも、僕がこの賞に彼女を推薦したかった一番の理由は、本業であるジャーナリズムの仕事を讃えたかったから。伊藤さんはワールドワイドで人間を捉える視点が非常に優れている人で、北海道の夕張からアフリカのシエラレオネまで、伝えたい物語があれば世界中どこへでも行く。その「真実を伝えよう」という情熱と信念が彼女を美しく輝かせているのだと思います。』
 
 VOICE5 伊藤詩織 - AVRORA AWARDS(ブルガリ アウローラ アワード)|VOGUE JAPAN 参照。






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