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童話の部屋 王様は一人ぽっち 東の王様




 王様は、朝(あさ)から大忙(おおいそ)しです。掃除(そうじ)は、特(とく)にていねいに。洗濯(せんたく)は、きれいに仕上(しあ)がる様(よう)に、念入(ねんい)りにしわ伸(の)ばし。朝(あさ)ご飯(はん)は、栄養(えいよう)のバランスを考(かんが)えて、野菜(やさい)を多(おお)くすることで、一日(いちにち)の活力(かつりょく)を付(つ)ける事(こと)。女王(じょおう)様(さま)のお弁当(べんとう)は、好(す)きなものを多(おお)く、嫌(きら)いなものはちょっとだけにします。最後は、3歳(さい)と5歳の子供(こども)たちを、幼稚園(ようちえん)に送(おく)ります。そして、やっと、庭(にわ)の水(みず)やりです。王様は、この時間(じかん)が一日(にち)で最(もっと)も大切(たいせつ)な時間なのです。

 

 今日は野菜(やさい)から水やりをします。春(はる)はジャガイモにえんどう豆(まめ)、夏(なつ)はキュウリにトマトに、ナス。秋(あき)になると、ほうれん草(そう)やキャベツ、白菜(はくさい)も植(う)えます。

 

花はバラが大好きです。イングリッド・バークマンやクイーンエリザベスが庭(にわ)いっぱいに咲(さ)きます。草取(くさと)りは年(ねん)に五回、でも余(あま)りやりたくはありません。雑草(ざっそう)も同(おな)じ植物(しょくぶつ)だから、目立(めだ)って大(おお)きい雑草だけにしています。

 

さて、今日(きょう)は、一年(ひとねん)で一番(いちばん)大事(だいじ)な、何(なに)をどこに植(う)えるのかを決(き)める日(ひ)です。と、言(い)っても、自分(じぶん)だけが植(う)えて育(そだ)てるのですから、もうほとんど決(き)まっています。

 

トマトときゅうりのそばに「バジル」・トウモロコシのそばにルッコラ・カボチャとズッキーニのそばにネギ・ジャガイモのそばにニラなんて、コンパニオンプランツって言うらしいです。

虫が嫌(いや)がるにおいをだしたり、害虫(がいちゅう)の天敵(てんてき)を誘引(ゆういん)する植物(しょくぶつ)だったり、その植物が作(つく)る物質(ぶっしつ)がほかの植物に影響(えいきょう)を与(あた)えたりするらしいです。

 

肥料(ひりょう)は、残飯(ざんぱん)やもみ殻(から)を発酵(はっこう)させたり、鶏(にわとり)も放(はな)し飼(か)いにしています。

時々(ときどき)、炭(すみ)を作(つく)るときに、木(もく)さく酢(す)の抽(ちゅう)出(しゅつ)もしています。虫(むし)よけに使(つか)います

 

3時になると、子供(こども)たちを幼稚園(ようちえん)に迎(むか)えに行(い)かなければなりません。

 

その後(あと)は、夕食(ゆうしょく)の準備(じゅんび)です。

 今日(きょう)の献立(こんだて)は、フレシュミニトマトのパスタ(ミニの方が味(あじ)が濃(こ)いらしい。ニンニクと赤(あか)唐辛子(とうがらし)で。)とポテトサラダ(リンゴを入れる派(は))に玉(たま)ねぎのス-プ(小(ちい)さい玉(たま)ねぎを、そのままコンソメスープで90分にこみます。)です。もちろん、大好(だいす)きなきゅうりの浅漬(あさづ)けも忘(わす)れません。

 

女王様は、朝(あさ)から、大臣(だいじん)たちを集(あつ)めて、相談(そうだん)の真(まっ)最中(さいちゅう)です。

 

大臣A「わが国(くに)では、男(おとこ)の子(こ)は青い(あおい)服(ふく)と緑(みどり)の服(ふく) 女(おんな)の子(こ)は赤い(あかい)服(ふく)とピンク(ぴんく)の服(ふく)を着(き)なければいけない、と言う(いう)法律(ほうりつ)を作る(つくる)ことにしました。」

大臣(だいじん)B「それは良い(よい)考えです、分(わ)かりやすい。」

大臣C「いや、いや、それでは、国民(こくみん)の反発(はんぱつ)にあうでしょう。」

大臣A「わが国では、昔から、男の子は青い服、女の子は赤い服って決まっているでしょう。」

大臣C「女王様、いかがいたしましょうか。」

 

女王様「私の子供の頃(ころ)は、赤い服やピンクの服が、いやで、いやで、たまらなかったのに、無理(むり)やり赤い服を着せられました。本当は青い服や、緑の服を着たかったのに。だから、女の子だから、男の子だからって、洋服(ようふく)の色(いろ)を決(き)めるのは止(やめ)めましょう。自分が、好きな色の洋服を、着ることにしましょう。」

 

大臣A「はい、女王様、男の子や女の子で、洋服の色を決めるのは止めることにします。」

 

大臣B「次(つぎ)に、男の子はロボットや自動車(じどうしゃ)で、女の子は人形(にんぎょう)やままごとで、遊(あそ)ばなければいけない法律を作ることにしました。」

大臣A「それはよいことです。」

大臣C「そうしましょう、やはり、男の子は自動車やロボットで、女の子は、お人形で遊ぶのは、当然(とうぜん)です。」

「王女様、いかがでしょう。」

 

女王様「私は、子供(こども)の時(とき)には、自動車やロボットで遊びたかったのに、母(はは)が、お人形やおままごとでしか、遊ばせてくれませんでした。遊びは、自由(じゆう)に、女の子や男の子と。決めずに、自分(じぶん)が、やりたい事(こと)を、出来(でき)る様(よう)にしましょう。決(けっ)して、大人(おとな)が、押(お)し付(つ)けないようにしましょう。」

 

大臣B「はい、女王様、遊びは、自由にできることにします。」

 

大臣C「この度(たび)、わが国では、男が外(そと)で働(はたら)き、女は家(うち)で、子(こ)育(そだ)てや料理(りょうり)や掃除(そうじ)をしなければならない。と言う法律を作(つく)ることにします。」

 大臣A「賛成(さんせい)です、私も前から思っていました。」

 大臣B「そうです、男は外で、女は家で、というのは、昔(むかし)から決(きま)まってます。」

 

女王様「皆(みな)さん、我(わ)が家(や)では、王様が、子(こ)育(そだ)てや、料理や、掃除をします。だから、私が、こうやって仕事ができます。大臣の皆さん、これが女の仕事(しごと)、これが男の仕事、と分(わ)けるのは止(や)めましょう、その人が、やりたい仕事や、できる事を、するということにしましょう。」

 

大臣C「はい、女王様、これからは、男の仕事、女の仕事と分ける事は、止めることにします。」

 

大臣D「この度、わが国では、自分の事を、男は僕、女は私、と言うことにします。」 

 大臣C「それは賛成です。最近(さいきん)ことばのみだれが気(き)になっていたのです。男は男らしく、女は女らしい会話(かいわ)をするように、お触(ふ)れを出(だ)すことにします。」

 

女王様「大臣のみなさん、私は、子供の頃(ころ)は、僕(ぼく)と言(い)っていました。でも、父(ちち)が「女の子は、私と言いなさい」と言ったので、しかたなく、私と言っています。何故(なぜ)、女の子が、僕や俺(おれ)を、使(つか)ってはいけないのでしょうか?言葉(ことば)にも、女の言葉、や、男の言葉があるのですか?」

 大臣A「はい、女王様、わが国では、昔から男ことばと、女ことばがあります。それは、男らしさや、女らしさ、を求めることで事(こと)でありまして、これからは、言葉でも、男らしさや、女らしさを求(もと)めることは、止(や)めることにします。」

 

 仕事(しごと)が終(おわ)わって、お城(しろ)に帰(かえ)った女王様は、今日(きょう)あったことを、王様に話(はな)しました。

 「洋服や、おもちゃや、ことばで、男らしくとか、女らしくと決めるのは、やめること。」

 「仕事で、女の仕事、男の仕事と、分(わ)け隔(へだ)てするのも、やめよう、と決めました。」

 

 王様も、今日(きょう)の仕事(しごと)の報告(ほうこく)をしました。

 畑の草取りや、バラの枝(えだ)落(お)としもしました。ニワトリが、8個の卵(たまご)を産(う)んだことも話(はな)しました。

 

 さて、明日(あした)は、王様が、大臣たちと、いろいろと相談をする日になります。

 そして、女王様が、子供たちを幼稚園に送って行き、畑の仕事をして、ニワトリの世話(せわ)をして、夕飯(ゆうはん)を作ります。

 明日は、野菜(やさい)が一杯(いっぱい)の「ポトフ」を作ることにします。

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