マガジン一覧

結局、日々つれづれ

印象に残った事柄、体験、日常のこと等々。

173 本

ありときりぎりす

 いつのまにか、冬が来た。つい、こないだ、春だ春だと浮かれ、その次は、夏だ夏だと大はしゃぎして、少し、涼しくなったなぁと思ったら、もう雪化粧。  一年は、早い。それは、虫も人間も、鳥も獣も同じこと。時の流れの前には、ひとしく無力であるということ。  アリは、この季節のめぐりを知っていた。キリギリスは、知らなかった。無知、有知、あらゆる生命に、個体差があるのも自明の理。  この「ありときりぎりす」を絵本で読んだ幼少時、私は何ともやりきれない、わだかまりを持った。今も、モヤモ

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内なる自然、外なる自然

「荘子」の。  内なる自然と外なる自然、  このこと、よく考えながら歩いている。  その内篇と外篇。  内なる自然に従えばよい、という後期の荘子学派。  外なる自然に従えばよい、という初期の荘子の姿勢。  町を歩けば、人がいる。  各々、夫々、一人一人、  一人一人の中に、真実があり、…  この「内なる自然」の自然は、真実、運命、とも代言できる。  それは一人一人に限られている。  一つ一つのものだ。  ところで、真理というと、まことのことわりだ。  道理、真理の

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「愛し合やぁいいんだ」

結局、それに尽きるんだろう。 ほか、とくに無し。

生命の役割

「死がある。だから毎日、大切に生きよう」とするものがある。 「死がある。だから何をしたところで無に帰する。虚無じゃないか」とするものがある。  この二つのものは、互いに相容れず、しょっちゅうケンカをしている。  この相対するものを、じっと見つめるものがある。  どんなに両者が虚しがろうが、満たされようが。  何の差別も区別もなく、矛盾するもの、相対するものを受け容れ、包み込む。 「それがわたしの役割だ」とでも言わんばかりに。

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本の話

読んだ本、読んでいる本── 読んで考えたこと。

83 本

なぜ忘れられたような作家たちを

 語弊はあるが、キルケゴール、椎名麟三。大江健三郎、モンテーニュ、荘子は、少なくとも投稿小説サイトで、あまりお目に掛らない。  荘子と大江は、読まれ続けていると信じたいが…。  ぼくが彼らを推したいのは、このまま忘れ去られてほしくない作家、思想家たちだからだ。  キルケゴールは、自分の家系が40歳だか何歳かで皆死んでいて、「自分もその歳になったら死ぬ」と思い込み、それまでに何とかして自分の思想を作品化しようとし、実際何作もの出版をした。  彼は親がお金持ちだったため、生涯

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「自由の彼方で」

 今はない出版社、冬樹社からの「椎名麟三全集」の5を読んでいる。  キリスト者になってからの椎名麟三は、つまらない、と昔は感じていたが、今は面白いと感じることができている。 「あなたは、ほんとうに神を信じているのですか」という問いに、「ほんとうの、ほんとうの、ほんとうです」と椎名麟三は答えている。 「自由の彼方で」の主人公、山田清作は、「順調に不良少年のコースをたどった」椎名麟三の、自伝的小説であるという。  その清作の姿の真骨頂は、「自分から窓ガラスへ頭から突っ込む」とい

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「時は止まりぬ」

 椎名麟三初期の作品で、大好きな小説。  やっぱり絶望的な主人公が、絶望しか見い出せないような日常の中で、散歩をしている。 「ふと」映画館に入ろうと思う。この「ふと」が、気に入って、映画館に入る。  スクリーンの前のほうで、落花生か何かを食べながら鑑賞しているひとりの女性が目につく。  映画館を出て、駅へ向かう。駅に着く。寒い。吹きつける北風をしのぐために、ホームの下の階段で、電車が来るのを待つ。  そこで主人公は、またあの映画館で落花生を食べていた女性を見た。  そういえ

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プラトンと荘子

 プラトンと荘子を読んでいる。徳、善、真、正しさ、という言葉が目につく。ソクラテスの言葉として、 「おべっかを使い、ひとに認められるのを第一義にして、君は、ことを行なうのか。こうすれば高い評価を得るだろうと、それを目的にして、君は弁論術を使い、ひとに迎合し、言葉を駆使しているのか」  と、相手に向かう場面がある。 「ぼくたちは」と哲学の祖が言う、「いかに生きるべきかが、いちばん重要な問題ではないのか。より善く生きるためには、どうすればいいか、ということが。人を楽しませ、快く

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人はなぜ自殺するのか

積年の問いであり、自問であり、割り切れないテーマ、哀しい主題です。 けっして結論解決は無いでしょうが、だからこそ掘り下げたい。 生きるためには死があって、生があって死があって、初めて生命があると考えます。 結局、生きることを考えていくことになると思います。

56 本

理由がないということ

 私が「消えたい」と思ったのは、自分の存在が周囲に多大な迷惑を掛けるからだった。それは実に分かり易く、自分が学校に行かなくなってから、母が泣き、祖母も元気がなくなり、つまり、家の中が真っ暗になったのだ。  登校を拒否する理由が確固としてあれば、学校も親も、私への対処の仕様があった。だが、私にはその理由が自分でも分からず、周りとしても対処の仕様がなかった。  私に分かったのは、「自分がここにいることが、この家を滅茶苦茶にさせている」ということだけだった。この自分がいなくなれ

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死にたいのではない、生きたいのだ。

 評論家のように居丈高に言いたくないし、ただ自殺を考えている人に、伝われば、という思いを込めて書ければと思います。  自分も考えていたことがある、でも死ねなかった、という情けない過去もありますが、偉そうに何か言える内容のものでもありません。  ただ正直に自分のことを書き、もし悶々としていらっしゃる方がおられれば、「門」を解き、「心」があらわれる、そんな文章になれば幸いです。  ───────────── 〈自分第一。あとは、すべて二の次。〉  実際のところ、けっこう、多く

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死ぬことを考える時

 何だかんだと友人らしき人達もいて、恩師のような人もおり、ずいぶん私によくしてくれる人もいた。だが、そのような存在は全て、「こんな自分はダメである」意識の前には、ほとんど無力のように押しやられてしまった。  常に自分は、人に対して何か演技をしているようだったし、ほんとうの自分ではないように思えた。  自分にとってのほんとうの自分は、死ぬということを真剣に考える時と、ひとり、自分には生きる力がない、と思える時だった。  たとえば恋人とセックスをする時も、お酒を飲んでみんなで

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その対処法

 10年ほど前、とにかく自分を変えなくては、と私は焦り出した。自己啓発のような「ホ・オポノポノ」やら「マインドフルネス」をやったが、自分の本質的なところは、そう簡単に変わるものではない。  やはり自分の精神は、おのが力で何とかするのが正しい対処の仕方であることを思い知ることになった。  ただ、マインドフルネスの「呼吸を見つめる」作業は、悪くないと思う。夜、寝床の中で、身体がしている「息を吸う→ 吸った息が出ていく→ また吸っている」という自動的な繰り返し、この呼吸の足取りを

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恋愛・結婚についての雑感

恋愛・結婚に関する感慨、出来事、小説、アフォリズム。

79 本

(ふと思う)

「愛に肉体は必要か?」  身体、朽ちても、愛は残るだろうに。

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ふたりの恋愛談義

「もしあのまま別れずに、いまも一緒であったなら、ふたり、どうなっていたのだろう。  初恋に終わらない恋愛経験のある男女なら、誰しも想像する仮定の話です。えてしてそういう想像は、今一緒に暮らしている人への不満から起こるものです。  もし、こいつでなく、あいつであったなら! 部屋はこんな乱雑になっていなかっただろう。あいつはキチンと、あるべきところに物を置いた。整頓能力に長けていた。それに比べて、こいつはどうだ。いつも出しっぱなしだ。そしてそれを、屁とも思っていないのだ。  

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婚前生活

 月がいるから 地球 いて  地球 いるから 月がいる  あなた いるから わたしいて  わたし いるから あなたいる  歌が聞こえる。細長い1DKの賃貸マンション。私の住む部屋の玄関ドアの、すぐ右横が隣人の浴室なのだ。  彼女は少し声を抑え、遠慮気味に囁くように歌っている。私はその声をキッチンのシンクにもたれて聞いている。ちょうど夕食を終え、洗い物をしていた時だったから。  ああ、彼女は今日も元気そうだ。  よかったよかった。明日も元気でいておくれ。  祈るように、私は

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「愛してる」

 しばらく言ってない言葉。  こないだ言ったか。  冗談みたいにでしか言えなくなってしまったが。  たぶん、愛してるなんて  言ったことない人のほうが、誠実な気がする。  あまりに刹那的だし  情熱はモロいし  愛するなんて、そんなもんじゃない  本気で言えたのは一度きりだったな。  二度目は、ウソついてる気がした。  三度目は、なかったことにしておこう  だいたい、そんな言葉 いわなくても  一緒に暮らし始めたりするわけだし  そんな、たいしたもんじゃない  でも、

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103 本

小作人

「さて、きみはそろそろ死ぬのだが、今、天国行か地獄行か、キップの発行に手間取っているところなのだよ」 「あ、そうですか」 「この世で、きみはずいぶん苦しんだ気になってるね。自分を苦しめることは、自分以外の者も苦しめることになる。とすると、きみはあまり、徳を積んでいないことになる」 「そうですか」 「きみの行き先は、もう決まっているのだがね。いちおう、本人の言い分も聞いておけ、とお上から達しが来てね」 「はあ」 「何か言い残したいことはあるかね」 「べつに、とくにありませんや

赤子と若者と老人

「昔、日本という国があった。国の代表は、その下の官僚と呼ばれる人達の言いなりになって、自分の意見も言葉も持たず、自己というものを持たなかったそうだ。だから首相になれたのであって、誰でも自我を持たなければ、一国の主になれるということだった。そのまた昔には、領土を広めようとして戦争を起こしたそうな。何とも、節操のない国だよ」  老人はそう言うと、からから笑った。  若者は、それどころではない。どうやって生きていったらいいのか、自分のことで精一杯である。いや、生きるということすら

言霊遠征 ① 106号室

 おや、あそこに泣いてる子がいるよ。  さめざめと泣いてる… 身も世もなくし… お人形さんみたいに! あの子の心はからっぽだ、涙の水ばかりがいっぱいに… もしもし、どうしました?  無言。  もう、いいって? かたくなな心… 石のようだ、この子は、かわいそうに、冷たくなって!  拒んでいる… 拒否している! 誰をも、なんぴとたりとも… 一体何が?  ── 想像力にやられたんだ。羽を広げすぎて! この子の想像には際限がなかった… ところがそれも烏合の衆! どんなに飛ばしても衆

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言霊遠征 ② 105、206

 ところで、われわれの存在理由は? ヒトは特に目的を持たずにつくられたモノだから、その存在理由も明確でない。迷える子羊たらんとして、その通りにそうなるわけだ。  すると、どんな目的で生きようと、自由なわけだ。  そう考えると気楽だね!  いや実際そうだろう。不自由になるのは、不自由を求めるからで!  われわれも、ずいぶんと不自由でないか? 好きなように使われているが! 俺らは言葉と呼ばれているが、たいして信じられなくなって久しい。  嘘ってやつがいるからなあ!  うふふ。あ

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