弱気な彼

なかなか連絡が着かない彼が心配になり、彼の家まで来た彼女。

インターホンを鳴らす。

ーーーーー出てこない…。

もう一度鳴らしてみる。

ーーーーー…やっぱり出て来ない。

望みを託してドアノブに手を掛ける。

ーー開いた!

(〇〇!〇〇!)

彼の名前を呼ぶ。

彼の部屋前まで来る。

ノックをして返事を待たずに部屋へと入る。

カーテンが引かれ、真っ暗な部屋。

暗くてはっきりと分からないが、かすかに床に座る彼の姿が目に入る。

怯えたような声色で

「え…あ…その…」

「ごめん、ごめんなさい…」

彼が言葉を発した。

優しく歩み寄る彼女。
刺激しないようそっと抱きしめる。

彼は何度も謝罪の言葉を繰り返す。
彼女は彼の気持ちが落ち着くまで寄り添うことにした。

しばらくして呼吸も整い、彼から

「ありがとう」

と落ち着いた声がした。

(心配したよ。)

「うん…。本当にごめん。」

「色々あって…。しんどくて…。」

ここでまた彼の声が涙声になる。

(何があったか話さなくても大丈夫。まずは落ち着こう。)

(何か飲みたい物とかある?あったかいものとか冷たいものとか。買ってこないとだけど。)

「ううん。何もいらない。君がいなくなるのは嫌だ。」

抱きしめる手に力が入る。

(うん。分かった。ここにいるよ。)

しばらくして

「ねぇ…。」

「…一緒に死のう。」

(…………。)

(…………。)

(…………。)

(…………わかった。いいよ。)

「…………本当に?」

(…でも、お互いのやりたいことやってからでも良い?)

「…?やりたいことをやってから?やりたいことなんて…」

間髪入れずに彼女は

(私はあるよ。)

力強く答える。

どんどんやりたいことを答えていく彼女。

勢いよく答えていく彼女に動揺する彼。

「え?そんなに?」

(そう。今度は〇〇が答える番だよ。)

「僕?僕は…」

「………………。」

「今楽しそうに話してくれた君のやりたいこと…一緒にやりたい」

彼の最初とは打って変わった希望に満ちた声がした。

(うん!)

(じゃあ早速ここに行こう!)

彼に携帯の画面を見せる。

「あ。ここって…」

(そう!二人の思い出の場所。覚えててくれて嬉しい。)

「覚えてるよ。忘れるわけない。」

彼の声に少し明るさも戻る。

(それじゃ支度して行こう)

「うん。」

「ありがとう。やっぱり君はすごいよ。」

(ありがとう。…でもちょっと賭けだったんだよ。)

「え?」

(このままだったらどうしよう….って。私も死なないといけないし。)

彼女は少し冗談っぽく笑った。

「そう…だよね。ごめん…」

(だから最終的には本人の気持ちが一番大切なんだよ。)

「うん。」

(少しでも前に進もうと思ってくれて良かった。)

「うん。本当に君には感謝してもしきれない。」

「ありがとう。ありがとう。」




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(後記)
PCの更新日時を見たら2020/11/1 21:02
と、なってました。
2年前の私、ありがとう!

PC見ながら携帯で打ちました。
(PCネット繋がってない為)
なかなかしんどい作業だった。

届けたい人に届きますように…!




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