中小企業における新製品開発のポイント

中小企業において新製品開発が成功するのは約15社に1社

 最近、事業再構築補助金をはじめとする補助金・助成金の後押しもあり、中小企業における新製品開発が増えてきています。しかし、実際に新製品開発が成功する割合は15社に1社程度と言われており、かなり狭き門となっています。
 新製品開発が成功しない案件のうち、製造の重要要素であるQCDが満たされず新製品が完成しない案件が約半数あり、新製品が完成した案件も、そのほとんどは売上が計画通りに伸びていません。売れない理由を分析すると、大きく2つに分けられます。
1.(開発前に)顧客側のニーズを正確に把握していない
2.そもそも開発した後のことを考えていない
 今回は上記のうち、1.の理由について、なぜそうなってしまうのか考えてみたいと思います。

中小企業の新製品開発は「シーズ型」が多い

 新製品開発には、「ニーズ型」と「シーズ型」、2つのパターンがあります。「ニーズ型」は、取引先から依頼されて開発するケースや事前にマーケティング調査等により市場ニーズを把握してから開発するケースが該当します。一方「シーズ型」は、潜在的な顧客ニーズに期待して(事前に顧客にニーズを良く把握せずに)、企業の持っている技術のタネ(シーズ)をもとに開発するケースが該当します。「シーズ型」のほうが、当たれば大きい売上が期待できますが、確実性は劣ります。実は、中小企業の新製品開発は「シーズ型」が多く、これが事前に顧客ニーズを把握していない主な理由と考えられます。
 「シーズ型」の新製品開発であっても、顧客ニーズの把握はとても重要です。開発前には、新製品のベネフィット(便益)を把握しペルソナを設定すること、また競合製品との優位性を調べることは必須です。開発後においては、ターゲットを絞ってセールスすることがポイントです。

まずはイノベーター、アーリーアダプターに売る

 新製品をセールスする際に参考にしたい考え方として、イノベーター理論(キャズム理論)があります。この理論では、市場におけるユーザー層を、①イノベーター、②アーリーアダプター、③アーリーマジョリティ、④レイトマジョリティ、⑤ラガード、の5つに分類します。②のアーリーアダプターと③のアーリーマジョリティの間には「キャズム」といわれる深い谷がありますが、最初からこの谷を越えて③のアーリーマジョリティにセールスしようとするとうまくいきません。まずは、①イノベーター、②アーリーアダプターにターゲットを絞ったセールスをして販売実績を作り、そこで集めた事例(データ)を用いて、場合によっては製品を改良し、③アーリーマジョリティにあったセールスをするのが肝要です。

開発後もサイクルを回し続けよう

 新製品開発は、「完成」がゴールではありません。計画通りに売れて、会社に収益として貢献してはじめてゴール(成功)と言えます。そのためには、
①開発前も開発後も、常に新製品が顧客ニーズに合っているかを確認する
②ターゲットとする業界を絞る
③(ターゲットとする業界の)イノベーター、アーリーアダプターにアプローチする
④集めたデータを活用し、製品性能やサービス、セールス手法等をさらにブラッシュアップする
これら①、②、③、④のサイクルをずっと回し続けることが重要です。



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