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第96回アカデミー賞期待の作品紹介 No. 1 「異人たち」

AWARDS PROFILE Vol. 1

異人たち

Rotten Tomatoes: 94%(現時点)
Metacritic: 98(現時点)
IMDb: 8.2(現時点)

 高層アパートメントに住む脚本家のアダムは、謎めいた隣人ハリーと出会う。二人は恋愛関係となるのだが、その仲が深まるにつれて、アダムは昔の記憶、昔住んでいた家へと引き戻される。そこでアダムは、30年前に亡くなった当時の姿の両親と再会する...。

 1987年に発行された山田太一の「異人たちとの夏」を原作に、アンドリュー・ヘイが監督と脚本を務める。ヘイは、結婚45年目の夫婦の間に小さな亀裂が入る「さざなみ」や、少年と馬がアメリカの荒野を旅し、様々な人々と出会う「荒野にて」のように、じっくりと人間を描くのに長けたフィルムメイカーだ。主演はアンドリュー・スコット、隣人ハリーにポール・メスカル、亡き両親はジェイミー・ベルとクレア・フォイが演じている。監督の実体験とも共鳴するという本作は、テルライド映画祭でプレミア上映されて大絶賛されている。ロマンスあり、ファンタジーあり、スリラーありのジャンル分け出来ない、並外れたバランス感覚で主人公の繊細な心の旅路を描き出す。傷ついた主人公の抱える孤独とふさぎ込んだ気持ちに根差した作風は、理屈よりも感情を優先し、観る者それぞれに異なる不思議な感触を残す。語られることのなかった痛ましい記憶を探ることで、過去と現在をつなぎ、時や死、喪失感を超越する、愛の力をほろ苦くも提示する。ヘイは重そうになりそうなストーリーを軽やかなタッチで展開させ、最後には魂をかきむしることに成功。キャストはスコットとメスカルを中心に一級の輝き。劇中、挿入される80年代のクィア・ポップも作品に彩りを与えている。来年春、日本公開予定。

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