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お寺の掲示板 【No.10/柊原のお寺・真宗寺/2021.11月】

一番は


【掲示板の言葉】

一番はもちろん尊い 
しかし一番よりも尊いビリだってある


▶️先月に続き、東井義雄先生の言葉。東井先生は1912年に兵庫県の本願寺派の寺院に生まれ、小学校教師として奉職。様々な教育機関で講師を務めながら、1991年に亡くなるまで、多くの著作を遺されました。


▶️教育現場には競争の原理がありふれてます。テスト・通知表・運動会などなど。運動会といえば今年はオリンピック。より早くより高くより強く、必死に1番を目指す選手たちの真摯な姿を見ていると、たとえ結果がどうであれ、ビリの人の活躍にだって、メダルより輝く感動を覚えることもあるでしょう。


▶️ところで、花屋の店先に並んだ花を見て、「No.1じゃなくてもonly oneでいいんだ」なんて考える人もいるでしょう。しかし花屋の花は、厳しい出荷規格を通った選良の花であり、またそこからしおれるまでに買ってもらえるかという、強烈な競争の原理に晒されています。人によっては、店の花より道端の草花の方が好きかもしれません。また、「one」になる出荷の過程で処分されてしまった蕾の命にも思いを馳せたいものです。


▶️もっと言うと、我々の社会では、「最上」という価値が、学校でも学校を出た後でも、特に重要視されます。一方、仏教は「無上」という価値を説きます。「最上」が有限の頂であり、相対的価値なのに対し、「無上」は「この上なし」という、比較によらない絶対的な価値であります。どんな人も、在ること自体の尊さを持っています。
 

▶️ ここ何十年かの世間で流行った思想の流れを見てみると、「ナンバーワン( ⇒ 競争主義 ) 」より「オンリーワン( ⇒ 特別意識 ) 」という考えがブームだった時期がありました。

しかしオンリーワン思考の持つ陥穽が指摘され、最近は「オールワン( ⇒ 一如 ) 」や「ワンチーム」といった思考法がブームです。

ただ、或るラグビー関係者が、「今、誰しもが 、ワンチーム 、ワンチーム と言います。〝 来月からこの営業部はワンチームでやっていきましょう 〟とか、〝 クラス目標はワンチーム 〟のように。しかし、ワンチームってそんな簡単な話じゃないんです。ラグビー日本代表は、血の滲む思いでワンチームに成り得たんです。昨日今日でなれるものじゃないんです。」とおっしゃられていました。なるほど、「ワンチーム」も安い言葉じゃないですし、「ワンチーム」の語で、多様な個性を持った集団を、乱暴に一括りにしている例なんてのもあるでしょう。

世の流行り廃りの中で、パラダイムの変遷もめまぐるしいものですが、そんな中、仏教が2600年来説いている、「無(=0)」はとてもクールです。


▶️ あらゆるものが数値化され、「one」の思想を土台にして、数に追われ、数を追って忙しい日々を送っている我々ですが、ここれでちょっと息を抜いて、仏教の教えに耳を傾けてみるのもいいんじゃないでしょうか。


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