5/16競争力CA-CD特典商法の是非

今回の競争力CAでは、「CD特典商法の是非」をテーマに立論者は賛成側、ゼミ生は反対側に立って議論した。

【記事】

推し活の費用は月1万円未満→8割弱、1万~5万円未満→15%、5万円以上→7%
ネットやSNSの普及で「憧れの対象」はぐっと身近な存在になった。応援の声を直接伝えたり、応援へのお礼や返事をもらえたりする機会も増えた。
推しが期待や思いに応えてくれない時の「推し疲れ」といった言葉もある。森教授は「『人は人、自分は自分』という線引きがどこかになければ、傷つくこともある。(阪本輝昭、小原智恵)
推し活として使われる費用には、特典付きCDの購入費も含まれる。そのようなCDを販売することを「CD特典商法」と呼ぶ。今日、推し活へのお金の使いすぎは社会問題にも発展している。CD特典商法は音楽市場でどのような役割を果たしているか考察し、立論側は「CD特典商法に賛成」の立場で議論する。
CDは、特典をつけることでより多く売れるようになる。誰でも気軽にSNSやサブスクを利用できる現代において、CDの売り上げは減少している。とはいえ、CDを販売しなければならない理由があるため、特典をつけて販促し、CDを買ってもらう必要がある。

【意見・論点】

1.アーティスト(制作側)が得られる利益が大きいから。
→サブスクリプションの再生では、1再生あたり1円あれば良い方だとされている。一方で、CDでは、売り上げの1%がアーティスト、3~6%が作成者に支払われる場合が多い。CDを販売して利益を出す方が効率的である。また、CDはアーティストのひとつの大切な「作品」としての面をもつ。曲そのものだけでなく、ジャケットや歌詞カードなど、構成する全てが、時間と労力をかけて用意されたテーマ性を持つ「作品」といえる。経済的な利益だけでなく、自分の芸術がより多く世の中に出回ることで、アーティストの気持ちの面でも利益になる。

Q配信限定のアーティストが増加しており、サブスク配信の方が利益が多いのでは?
Aファンがついているアーティストには、特典付きCDを販売した方が利益が大きくなる。

2.日本の音楽市場においてCDのセールスランキングはまだ重要度が高いから。
→各種ストリーミングサービスを含めたランキングもだいぶ浸透してきているが、単純なCDの売り上げのデータも、現在の日本の音楽市場では重視されている。ストリーミング再生では、約30秒で1回のカウントになると言われている。全部を通して聞いていなくても、曲が「売れた」ということになる。しかし、それでは本来の意味で音楽を消費できていないので、CDの売り上げ枚数も重要とされている。競争市場であれば、そのランキングが指標となり、注目度も上昇する。また、サブスクのサービスはいつ提供終了になるかわからない不安定さがCDを上回る。

Q CDの売上1位はすぐに頭を浮かんでこないため、意味があるのか?
A サブスクとCDの売上は相関関係にあるため、CDの売上も重要な指標になる。コンビニに流れる音楽(CD)はサブスクで聞いてくれるようになる。人の目に触れるということでCDの売上は重要になってくる。
Qサブスク配信が増加していることから将来的には、CDが重要な指標にならない可能性がある。加えて環境配慮の点から特典付きCDよりもグッズを別に売ったらいいのではないか?
ACDを売る必要性は特典付きという所に意味がある。法的拘束力はないがグッズには握手券をつけられてなかったりする。
Q「サブスクのサービスはいつ提供終了になるかわからない不安定さがCDを上回る。」→これはありえないのではないか?
A小中学生が月額を払うサブスクではなく、無料のものを使うケースが多い。その無料のアプリは違法であるので、いつ終了するか分からない。
Q無料のアプリは広告費で利益を得ているのではないか?
A

3.制作したCDの売れ残りをなるべく避けたいから。
→前述のとおり、CDの制作にはアーティスト本人だけでなくさまざまな人や会社が関わる。たくさんのコストをかけて制作したCDが売れ残るのは、最終的にCDになった資源も無駄になる。また、CDが売られなくなれば、制作に関わっていた会社が廃業する可能性もある。何より、「作品」を作り上げた本人たちが悲しい。
Q受注販売にしたらどうか?
A受注販売をするには、ある程度人気があるアーティストじゃないと成り立たない。つまり、有名でないアーティストにとっては逆に損失を生む。

4.CDに付属させて初めて販売・提供できるサービスがある。
→握手会やサイン会など「接触イベント」と呼ばれるものの参加券のみを販売した場合、特に未成年が所属するアイドルグループなどは、不特定多数との接触があるため、風営法で取り締まりされる可能性が高い。そもそも「接触イベント」自体が法律的にグレーだが、AKB48などは本来「CDを購入してくれたお礼」という名目で握手会を行っていた。また、CDを購入した「特典」なので、メンバーのイベント不参加があった場合に責任から逃れられる。
Q.
A.

Q.CDの枚数に制限がないから、特典だけを売る転売ヤーが増えるのではないか?またその対策をするにも運営側の負担が大きくなるのではないか?
A.CDの販売数は増えるから損失は少ない。運営側は売れればいいという目的を達成できている。
Q.運営側の対応は、イメージダウンに繋がり売上が低下してしまう
A.CDが増える→ランキングにのる→新規が増えるから問題ない。

Q.表面的なファンが増えるのではないか?
A.名前が知られていない人は売れるためにCDの売上を重視するべき。一発屋になっても初速が重要。

Q特典をつけるということはCD本体に魅力がないからでは?グッズ別に売るのでいいのでは?
A想いを込めたCDを売れなくなることが問題である。特典をつけるのは、CD自体が売るための打開策である。
Q特典をつけると金額が上がるのではなく販売数が増えるということ?
Aそう。
Q.セールスランキングにのるから販売枚数が重要である。
A.

Q.自分が望まないものが得られずお金をかけてしまうという特典商法の仕組み作りがよくない。
A.どこからお金を捻出しているのか?という点が問題である。

【予想される反論・再反論】

1.CDをたくさん買っても、捨てることになり、資源の無駄遣いになる。
→大量処分でリサイクルしてくれる業者がある。
Q根本的な解決にはなっていない。資源の無駄であることは変わらない。
Aリサイクルできる部分もあるからただの廃棄にはならない。無駄は軽減される。
Q.リサイクルするメリットは何か?お金にもならないから燃やしてしまう人が多いのでは?
A.500枚購入したときは家のスペースを取るから邪魔になる。燃やすのが大変。リサイクルは、業者への送料を払うだけで処分できる。

2.CDを目的とせずに購入したセールスランキングに意味があるのか。
→名前をより多くの人の目に触れさせるため、ランキングに反映されることに意味がある。
Q
A

【上久保先生からのコメント】

コアなファンが貢ぐシステムは経済として健全か?一発屋が売れ残るシステムが問題では?昔から、カセットが売れ売れば人気になるというシステムが残っている。つまり、新規への広がりがない。KPOPとJPOPの違いは外部市場への進出である。日本では、コアなファンがいると売れるからマーケットが成立から海外進出する必要がない。果たして、これでいいのか?

【参考文献】

1.一般社団法人日本レコード協会事務局次長 畑 陽一郎「音楽パッケージメディアの現状と今後」(2011年、JAS Journal 2011 Vol.51 No.3(5 月号))201105_008-011.pdf (jas-audio.or.jp)


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