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2024年度秋学期 研究書評


【要約】今回の文献は、日米のコーポレート・ガバナンス(企業統治)の歴史的な変遷とその比較研究について書かれたものだ。特に、第二次世界大戦後の日米両国のコーポレート・ガバナンスが、どのようにして異なる方向に進展し、1980年代から再び競争が活発になったかを分析している。主なポイントとしては以下の通りだ。
第二次世界大戦前の日米のコーポレート・ガバナンスは市場志向型で、互いに競争関係にあった。戦後、アメリカは株主資本主義に移行し、日本は市場との結びつきが後退した「メインバンク・システム」を発展させた。1990年代後半、IT革命を契機に経済と企業のグローバル化が進み、再び市場中心型コーポレート・ガバナンスを巡る競争が日米間で活発化した。機関投資家(例:アメリカのCalPERS、日本の企業年金連合会など)がコーポレート・ガバナンス改革において重要な役割を果たし、グローバルな企業活動に影響を与えている。

【感想】もう少し詳しく知りたいので、日米のコーポレートガバナンスの遷移を分析してみた。

新保博 「日米のコーポレート・ガバナンス比較研究」ComparativeStudyonUSandJapaneseCorporateGovernancehttps://www.osaka-sandai.ac.jp/research/pdf/result/29/29-20.pdf

【要約】コーポレートガバナンスとは、企業の意思決定や経営のコントロールをどのように行うかに関する合意事項のことである。リスクとリターンの配分、企業の長期的な存続を確保するためにステークホルダーを考慮することが求められる。株主だけでなく、従業員やサプライヤー、銀行など多くのステークホルダーの利益が重要な要素となる。
次にアメリカのコーポレートガバナンスについてまとめる。1930年から1980年にかけて、アメリカはステークホルダーモデルを採用し、企業が従業員や他のステークホルダーと利益を共有する体制を築いた。しかし、1980年代以降は株主価値を最優先する新しいモデルに移行し、CEOにストックオプションを与えるなど、経営陣と株主の利益を一致させる動きが強まった。新しい株主至上主義モデルは、経営効率の向上という議論がある一方で、配分の不平等を招いた。トップ1%の所得が再び増加し、従業員へのリスク移転が見られた。結果的に、株主とCEOへの利益が集中し、労働者の権利や福利厚生が縮小された。

【自分なりのまとめ】1980年代までは日本とアメリカでステークホルダーモデルの維持が違う。日本は株主を重視しない経営をすることでリスクを取れてイノベーションが起こった。しかし、アメリカがそうではないため日本に経済の分野では劣っていた。しかし、IT革命が起こりアメリカは上手く乗れたことで株主を重視しないステークホルダーモデルに変更になった。しかし、GHQによる企業法の改正により株主を重視する経営に変わった。そのため日本の企業はイノベーションを生み出すことができず経済が停滞する一因になったと考える。

サンフォードM.ジャコビィ
(カリフォルニア大学ロスアンゼルス校アンダーソン経営大学院教授)
「コーポレート・ガバナンスと雇用関係の日米比較」
国際フォーラム開催報告:「日米比較:コーポレートガバナンス改革と雇用・労働関係」
https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2007_3/america_02.html


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