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Hollyland MARS 400S PRO 試用レポート(松本琢真/倉敷アヴェニュウ)

Facebookのコミュニティ「ライブ配信部」にて募集されていた「Hollyland MARS 400S PRO試用キャンペーン」に応募してみたところ、なんと当選しました!!

約10日間という短い間ですが、製品をお借りして使ってみたのでレポートしたいと思います。

最初にお断りしておきます。長文です。そして個人的主観で辛口です。
筆者はジャズ喫茶を経営し、ジャズライブを配信しています。
当然、音楽配信の観点からこのレポートを書いています。

全ての機能を使ったわけではないこと、一般的な用途からは少し外れるであろうことを予めご了承ください。


まずは、良い点、不満点から。

良い点

  • 無線なので自由度がめっちゃ上がる

  • ガジェット感があるデザイン

  • めちゃ遠くまで飛ばせる

  • スマホタブレットでプレビュー&配信ができる

悪い点

  • ペアリング確立までに時間がかかる

  • 電力の要求が高い?

  • 出力カラースペースがわからない

  • 遅延(平均でおおよそ0.1秒、これでも速い方なのよ)

  • USB端子と電源ボタン、HDMI端子の位置が悪い

と、ざっくりとした感想は以上となります。
ここからは、各ポイントをじっくりとみていきます。

Hollyland MARS 400S PRO  「Awaken The Power」

というキャッチコピーが目に飛び込んできます。
「力を呼び覚ます」って意味でしょうかね。
その説明の通り、このMARS 400S PROは今まで無理だった撮影を実現化してくれました。

外観

前モデルのMARS 400Sはいかにも無線端末です!という感じの無骨なデザインでしたが、このMARS 400S PROは、仮面ライダーの返信ベルトにでもつけれるんじゃないかっていうぐらいのガジェット感!!!
機能の向上もですが、このデザインの違いは購入意欲をかきたてます。
送信機、受信機でロックダイヤルの色が違うのもオシャレで分かりやすい。
これをデザインした人はスーパー戦隊や仮面ライダーが好きなんだと思います!

入出力

HDMIとSDIの2系統の入出力端子があります。
そして使用可能な解像度は、480P60~1080P60。
ビットレートは8~12Mbps。
4Kに対応していないのは残念ですが、12MBpsはYoutube等でのフルHDの最高画質なので画質的にも困ることはないでしょう。
なんだかんだでまだフルHDが標準な世の中ですからね。
なお、ループアウトはないので、ゲーム配信でのメイン利用には向いていませんね。そもそも利用する人いないか・・・。

HDMI入力→SDI出力、SDI入力→HDMI出力というクロス伝送は時間の関係でテストできませんでした。もし可能であればコンバーターとしても利用できますね。
また公式サイトには音声についての詳細記述が一切なかったのですが、HDMI経由で音声は送れました。(SDIは今回未使用のため未チェックです)

どんな用途で使ってる?

このMARS400S PROを使っている方のブログやYoutubeなどを見てみると、多くの方が、スイッチャーからの映像をモニターやスマホへ飛ばしたり、1台カメラの収録のために使っているようですね。
今回は、有線無線入り混じったマルチカメラ構成においてスイッチャーへ映像を送るために使用してみました。

ビデオカメラ → MARS 400S PRO → ATEM MINI EXTREME → OBS配信
(音声は別系統でOBSに入力)
という流れとなります。

伝送距離

画像モード、バランスモード、速度モードの3種類のモードがありますが、今回はバランスモードを選びました。
距離的には最大で15m程度ということもあり全く途切れることもなくコマ落ちも一切ありませんでした。
間に壁などの障害物を挟みましたが問題ありませんでした。
「どこまで届くのかな~」と、送信機を会場の外まで持って行ったら100mぐらいのところでコマ落ちしはじめました。
壁などの障害物を挟んだ状況ですので、十分な性能と思います。
障害物がなくお互いが見える位置(直線上)であれば250mでもコマ落ちなしでした。これは正直すごいと思いました。
屋外利用でのメリットは絶大だと思います。

スマホでプレビュー&録画

スマホ用アプリ「HollyView」をスマホにインストールするとそちらへプレビューを飛ばしたり録画したりすることが可能です。
面白いのが、無線で最大2台まで接続できる点。
レシーバー2台、もしくはスマホタブレット2台、はたまたレシーバー1台とスマホタブレット1台といった具合に。
そして、スマホタブレット経由での配信、RTSP経由で直接配信することも可能です。
しかし、使い勝手は良いとは思えないのであくまで簡易的、もしくは緊急時の応急処置と割り切る感じでしょうか。
今回は、PCを使いOBSで配信したため、こちらのアプリでのプレビュー、配信機能は使いませんでした。

遅延

音楽配信をしている私が気になるのはやはり、「 遅延 」です。
公証でおおよそ0.08~0.1秒の低遅延とうたっています。

こちらでカメラの映像を直接モニターに表示して遅延を計測してみたところ、公証とほぼ同じ、おおよそ0.1秒程度の遅れを確認できました。
今回はATEM MINI EXTREME ISOを使っていて、MARS 400S PROの他にも有線接続での他のカメラ映像も入力しています。
有線入力のカメラの映像と、このMARS 400S PROの無線入力の映像の差も約0.1秒でした。
この0.1秒が、マルチカメラ配信における鬼門となります。詳しくは後ほど。

パワーサプライ

電源供給はバッテリー、USB-C、ACアダプタの3パターン。
送信機、受信機ともに同じ仕様です。
色々あるのはとてもよいですね!
今回のレンタル品にはバッテリーは付属せず、ACアダプターも1つしか付属していなかったため、

  • 送信機 USB-C給電

  • 受信機 ACアダプタ給電

としました。

送信機側のUSB-C給電なんですが、iPhoneに付属していた充電器を使ったのですが、操作中に電源が落ちてしまいました。
調べたところ、USBの要求アンペアは「5V-2A」とのこと。
iPadの充電器は2.1Aなのでこれで大丈夫かな~!と試してみるも、長年酷使していて劣化しているのか電源ダウン。
おいおい、レビューするもなにも電源おちてちゃ話にならないよ~!
ということで、余裕をみて「5V-3A」のモバイルバッテリーを使用することにしました。これで電源が落ちることはなくなりました。ホッ。

このUSB端子、難点というか残念というか、右側に電源ボタン、下側にHDMI端子、左側にバッテリーがあるため、実質的にL字型のUSBケーブルは使用できません。
せめて電源ボタンが上にあればL字ケーブルが使えるのに・・・ストレートだと折れそうで怖いです。
レンタル品だし、破損するのが怖いので養生テープを貼ってほんの気持ち対策。

冷却ファン

冷却ファンが内蔵されています。設定で動作具合を設定できるのですが、今回はオートで。耳を近づけるとファンの音が聞こえますが、静かです。
冬場だからファンの回転が上がっていないのか、そもそも静かなのか。
静かな場面でもなんら問題がありません。

カメラに装着

今回MARS 400S PROで使用したカメラはPanasonic HC-VX985M です。
会場が狭いため三脚は使わずカメラマンが手持ちで撮影します。
カメラのコールドシューにMARS400SPROを装着しました。

カメラにMARS 400S PROを装着するとそれなりに重量も増し、持ちづらくなるため一脚を利用します。
HDMIケーブルも破損を防ぐ意味でカールケーブルにしました。(レンタル品なので神経質になっています。)
カメラマンからの要望で重量バランスを考え、モバイルバッテリーはやや下方に設置しました。養生テープでグルグル巻きです。(やっつけですみません)
悪役の魔法使いの杖のようないでたちに・・・・手作り感満載(^^;)

いざ本番

私が行っている配信は「ジャズライブの配信」です。
要するに楽器の演奏を配信しているわけです。
0.1秒という時間は音楽の世界では非常に需要な意味をもってきます。
0.1秒ズレるだけで音と絵がシンクロしなくなります。
ATEM側には個別の入力タイミングを調整する機能がありません。
(ある程度は自動でやってくれるらしいけど)
モニターを見る限り、MARS 400S PROの映像は遅れています。
これが許容できるのかどうか。配信なので生放送。
あとから修正するということはできません。

本番前に、0.1秒の差を残したままテスト配信してみました。
有線接続カメラに音声を同期します。
そのうえで、ピアノ、ベース、ドラムのピアノトリオ構成の演奏を撮影したのですが、ピアノ、ベースは、「言われたら、あぁ・・・遅れてるかも」という感じ。

ドラムは言われなくても絵と音があっていません。
早い曲だとスティックが上がっている時に音が出てしまっています。
※写真の状態でクラッシュシンバルが鳴ってます

参考映像です。ピアノに注目してください。音と全く合っていません。

音ズレをどうするか

音楽配信のように速度が要求されない利用ならおそらく気にならないと思います。もちろん、収録やモニターバック利用であれば全く問題にならないでしょう。この遅延を嫌って配信で使っている人が少ないのかもしれませんね。

この音ズレ問題を解決するためには少し工夫をしなければなりません。
配信ではなく、収録だったり、ワンカメラ配信であれあば単純に音声にディレイをかけてしまえば解決します。
問題はマルチカメラ環境。特に有線・無線が入り混じった状態ですとタイミング合わせがある環境では、難しい問題となります。

今回の環境ではOBSへ入ってきている音声にディレイをかけてMARS 400S PROとその他の有線カメラのタイミングの中間値を入れることでごまかしました。
まず、有線カメラと音声を同期させます。
同期がとれたら、音声にディレイをかけて0.05秒遅くします。
こうすることで、MARS 400S PROの映像は音声に対して0.05秒遅く、その他の有線接続の映像は音声に対して0.05秒早くという状態です。
さらにFPSを60から30へ下げてみました。
この状態ならドラムの映像を見ても「遅れている」と言われるまで分からないでしょう。厳密に見れば合っていないのですが、気になりません。
複数のキャプチャーユニットを使って個別にディレイをかけてやると音ズレは完全に解消できると思います。
今回配信したMARS 400S PROのカメラ映像がこちらです。

実際には0.05秒遅れているのですがほとんど気にならないと思います。

その他の困ったこと

20000mAhのモバイルバッテリーで駆動させていたのですが、3時間程で力尽きました。
配信したライブは4時間だったので、休憩時間にバッテリー交換をすることに。
MARS 400S PROの電源を落として・・・再ペアリングでつまづきました。
なんと、再ペアリングがすんなりできないんです。
待てども待てどもつながりません。
業を煮やしてペアリングを操作を最初からやり直しても繋がらない。。。
送受信ともに電源を切ってみたり、チャンネルスキャンしてみたり・・・
それでも繋がらない。

休憩時間も終わろうかとしていたので、もう無線はあきらめて有線接続に切り替えよう!!とHDMIケーブルの用意をしていたらいつのまにかポンと繋がりました。電源を切って再リンク確立までの間約15分。

ライブの休憩時間内に事なきをえたとはいえ、個人的には事故レベル。
お客様がたくさん入って、WiFiが飛び交っている環境下だったことも影響しているんでしょうかね・・・。

リハーサル時での再ペアリングは10秒ぐらいですんなりできていたので、まさかこんなにも時間がかかるとは想定していませんでした。
ビデオカメラも別の同型バッテリーで駆動させていたのですが、4時間動作させても50%以上の残量が残っていたので、MARS 400S PROの消費電力はそこそこ高いのかもしれません。
一定の場所に固定するやり方ではなく移動しまくったので消費電力が高くなっちゃうんでしょうかね。

ちょっと違和感があるメニュー

外国製品にあるあるなのかもしれませんが、日本語メニューに違和感があります。

「PAIR」が「接合」て・・・直訳しすぎです。
「ファン」ではなく「フアン」だったり「ツ」とも「シ」とも読めるフォントだったり・・・と、細かいところで違和感。
使う上で、日本語メニューより英語メニューの方が分かりやすかったです。
このあたりは次期ファームウエアで改善した方がいいんじゃないかと思います。
日本語ができるスタッフがいればすんなりできると思うんですけどね~

カラースペースが分からない

カラースペースによる色バケが発生しました。
ATEMでよくあるやつなのですが・・・。
GoPro HERO 8とATEM MINI EXTREME ISOのINPUT 1&2の組み合わせだと色化けしてしまいました。MARS 400S PROを介さない直結状態では色化けは発生しないのでMARS 400S PROのカラースペースによる影響だと思われます。
今回は、どうやってもINPUT1&2では解決できず、INPUT 3~8へ接続することで回避できました。
MARS 400S PRO側のカラースペースの情報がなかったため根本解決には至っていません。

無線であることの素晴らしさ

ちょっと難はあるけれども、無線化することのメリットは比較になりません!
ケーブルの長さに縛られず、好きなところへカメラを持っていけます。ケーブルがないのでケーブルさばき係も不要です。
変なところにケーブルが垂れ下がることもありません。

なんてすばらしいんでしょう!
鎖で繋がれたペットのような状態から本当の自由を手に入れた、そんな気持ちになります。
もっと自由に撮っていいんだ!と。

カメラマンからも
「鎖に繋がれてないのだから、どこからでも撮ること出来た!それもこれもこの大きな蟻んこ機械のおかげ!無線!こいつをいきなり本番で使うってマスターはほんとにどうかしてるよ!」
とお褒めのお言葉をいただきました。(褒められてると思いたい)

実際に、この日のカメラマンから送られてくる映像はいつもの画とは全く違うものでした。水を得た魚とでもいうんでしょうか。
スイッチングしているこちらとしても非常に新鮮かつ驚きの連続でした。
いつもは撮れないバックステージ側からの撮影することもできました。
無線化の恩恵はものすごく大きかったです。
カメラマンからも「いつ本格導入するの?」と購入を迫られています。

「ライブ配信部」管理人の木村怜氏にも配信をご覧いただきました。
「MARS 400S PROのことなどすっかり忘れて、ピアノトリオのしらべをしっぽり楽しませていただきました。」とのコメントをいただきました!!
(遅延は気にならなかったんだと勝手に解釈しています)

まとめ これは買いか?

無線化のメリットは計り知れません。
カメラマンにとっては翼のように感じられるかもしれません。
遅延や電源問題などありますが、ほんと自由になれます。

ただペアで7万円以上もする高額商品。
おいそれとポンとは買えませんよね。
どうしようか、悩んでる人は多いと思います。

このMARS 400S PROのよくある使い方であろうモニターバック。
これを目的として買うとすると個人的には割高感を感じます。

しかし、無線であることを「積極的」に使っていくことが思いた人は、「買い」です。
たとえば、「人を嫌う野性動物の撮影」、「ケーブルが取り回しできない変わった場所へのカメラ設置」など、無線化によるのメリットをどう生かせるかで、お得かどうかが決まると思います。

私も1セット買ったので、もっともっと使いこんでみようと思います。
ご購入は正規代理店のシステムファイブさんがいいですよ♪

2021年1月6日
松本琢真/倉敷アヴェニュウ


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