ライブシネマ:ネオノワール1.5『Predawn』

アクトトレーラー

金烏(ジンウー)。
黒江がクーデターと政権交代により現在の状況になるより前、裏社会を実効支配していた犯罪組織である。現在は力を大きく減じて三大組織の影に隠れているものの、ルーツを他国に持たない地元組織であるため地の利や地元住民の信頼の面では今も他組織に長じている。

その金烏の幹部のひとり、李浩然(リー・ハオラン)が殺された。
殺害したのはロレンツィーノファミリーの下部組織構成員、エミリオ・デル・コルヴォ。すぐに犯人は特定され拘束された。
現在黒江の裏社会では二年前の三勢力抗争終結会談の結果により和平条約が締結されており、組織間での武力による揉め事は御法度。
特に殺しなど、明るみに出れば即座に組織ごと裏切り者として黒江の裏社会全体から敵と看做されてしまうだろう。
そうなる前にエミリオの所属する下部組織自らが自組織の反逆者として彼を処分するのが通常であれば妥当な落とし所だろうが――そうしてさっくり殺してしまうには、エミリオは些か厄介すぎた。

エミリオ・デル・コルヴォという男は、普通にそのまま殺してしまうには少々問題のありすぎる男だったのだ。彼を殺してしまえば、組織内だけでなく黒江のあちこちに小さからぬトラブルが勃発することが目に見えているのだ。
処分しないわけにはいかない、だがしかしただ殺すわけにもいかない……この特大の爆弾を、果たしてどう処理すべきか。
時刻は現在午前1:00。夜が明けこの街が目を覚ます前に、一刻も早くこの事件にけりをつけなければならない。

ライブシネマ:ネオノワール1.5
『Predawn』

ロレンツィーノの未来は、この会議に託された。


PCのハンドアウト

コンシリエーレ(1名)

君はロレンツィーノファミリーのコンシリエーレ、すなわち顧問を務めている。
ドン・レオルカの右腕がアンダーボスなら、君は左腕だ。ドンと組織の相談役であり、レオルカの『信頼のおける親密な友人』と認められた者にのみ与えられる名誉な役職である。
君の役目はドン・レオルカのアドバイザーにしてファミリーの者たちに対するメッセンジャーであり、そしてネゴシエーターでもある。組織の秩序と品格を保つための監視役、言わば組織の理性とも呼ぶべき存在なのだ。
何か揉め事が起きたのなら、その調整役として君が駆り出されるのは当然のことである。本国でなく、この黒江においての話であっても同様だ。事態を正確に把握し、適切な判断を下して、相応しい処理を行わなければならない。
今回のように『問題が起きたこと』そのものが問題であるときには、それを『起きたこととして扱うかどうか』即ちドン・レオルカの耳に入れるかどうかを判じるのも君の仕事である。
エミリオ・デル・コルヴォ。彼と彼のしでかした『問題』をどのように扱うかは、黒江でのロレンツィーノファミリーの今後の進退に直結するだろう。今回の君の判断は、いつも以上に慎重に行わねばなるまい。

カポ・レジーム(3~4名)

君はロレンツィーノファミリー内で下部組織を所有することが許される幹部、カポ・レジームのひとりである。
そんな君が今回、この会議の場に呼ばれた理由はただひとつ。今回の渦中の人物、エミリオ・デル・コルヴォが君の率いる下部組織と関わりがあったのではないかと目されているからだ。
そのことが事実であるか虚構であるかはこの際問題にはならない。重要なのは、『この会議の場でどのような証拠が出てくるか』そして『最終的にエミリオと関係者にどのような処断が下されることになるのか』この二点に尽きる。
エミリオが殺したとされる李浩然(リー・ハオラン)は、現在の状況になるより前に黒江の裏社会を実効支配していた『金烏』の中でも、今現在もなお一定以上の影響力を持つ数少ない幹部のひとりだ。彼を失ったことによる波及効果も決して小さくは済まないだろう。
休戦協定の結ばれたこの黒江において李を殺したとなれば、『彼を使っていた者』や『事件に関与した者』の責任も問われざるを得ない。
君と同様に呼び出されているカポ・レジームは君の他にもう三人。果たして、どんな落とし所を目指すべきか。誰に泥を被せるべきか、あるいはどう泥を避けるべきか……

ソルジャー(5~6名)

君はこの黒江の裏社会において、ロレンツィーノファミリーの末席に名を連ねるソルジャーである。つまりは一般構成員、平たく言えば下っ端というやつだ。本来であれば、ファミリー全体の行く末に影響が出るような重要な会議に参加が許されるような立場では決してない。
それが何故ここに呼び出され、この会議の卓につかされているのかと言えば――理由はふたつあった。君を含め呼び出されているソルジャー五人全員が、証言者にして被告人なのである。
君たちは、今回の事件を起こした張本人エミリオ・デル・コルヴォと関わりの深い人物として呼び出されている。取引のある者、借りのある者、古くからの付き合いの者、恨みのある者と関わり方は様々であるが。
エミリオも君たちと変わらぬただのソルジャーだが、彼がこの組織に与える影響は下手な幹部よりも大きいと言わざるを得ない。それは組織内部に留まらず、他組織に対しても様々な角度で関与しているらしいのだ。
コンシリエーレは君たちそれぞれの証言と事情を聞き、エミリオに対する処分を決めるための判断材料にしようという。
君たちがなにを語るか、なにを選ぶかで、この会議の結末は大きく変わるだろう。

※上記ハンドアウトの立場以外にも「こんな立場のキャラがやりたい」というのがありましたらお気軽にご相談ください

用語

黒江(ヘイジャン)

現代によく似た時代、アジア風のとある架空の小国。首都は回港(フェイガン)。
複数の人種・国籍が雑多に混交して生活するこの国は、10数年前に起きたクーデターと政権交代に伴い某国の支配下から外れ、同時に治安が劇的に悪化。あらゆる裏稼業や闇商売が蔓延り、あらゆる犯罪組織が国内での覇権を争い、あらゆる思惑と陰謀と利権の入り交じる混沌の坩堝となった。
その中でも大きな影響力を持つ三勢力、煌星・ロレンツィーノ・蛟龍会が激しい抗争を繰り広げていたが、通称『三勢力抗争終結会談』を経て今は休戦状態となっている。

ロレンツィーノ・ファミリー

主なシノギは密輸。歴史の長いファミリーであるため、本国や黒江に限らず様々な国や組織の大物とのコネクションを持つ。
それらを後ろ盾に、派手な動きはないが磐石の体制を築いている。
ドンはレオルカ・ロレンツィーノ。

煌星(ファンシン)

主なシノギは人身売買。杜成鳳(ドゥ・チャンファン)の商才が功を奏し、その他にも幅広く多様な裏ビジネスで成功している。
これまでも、どこよりも潤沢な資金を元手に強気に動いてきた。
ボスは杜 成鳳(ドゥ・チャンファン)

蛟龍会(こうりゅうかい)

主なシノギは殺しと麻薬取引。黒江に侵攻してきたのは最も遅いが、会長である巳澤の指揮の元、大量の人員を投入し怒濤の勢いで制圧していっている。
恐らく現状の勢力図ではシマの規模などにおいてトップに躍り出ている。
会長は巳澤 征十郎。

NPC

レオルカ・ロレンツィーノ

祖父の代から世襲でファミリーを継いできた由緒正しきイタリアンマフィア。
生き馬の目を抜く現代裏社会においては些か時代遅れにも思われるほどの、正真正銘の伝統的な『名誉ある男』。
『家族』に対しては常に厳格にして愛情深い『父』であるが、敵に対しては非情で残酷な『悪魔』として恐れられる。
振る舞いは典雅にして風格に溢れ、寡黙だが一言一言に重みを感じさせる。
大多数の構成員から尊敬と敬愛を受けるが、先鋭的で革新的な若い世代の中には古臭く保守的なやり方に反発を持つ者も少なくないという噂。

エミリオ・デル・コルヴォ

黒江で活動するロレンツィーノファミリーの下部組織に所属するソルジャー。
あまり野心を見せず、彼自身の功績や実力には特段目覚しいものがあるわけではないが、不思議に顔が広く組織内外どころかカタギも含めた様々な人物と繋がりがあるらしい。その割にあまり深い付き合いのある者は多くなく、彼の出自やプライベートなどはあまり知られていない。
人当たりがよく軽妙な雰囲気と話術の巧みさ、地頭の良さを感じさせる話題の豊富さで相手がわのテリトリーに踏み込むのを得意としているというが、同時に決して一定以上に踏み込まず踏み込ませないため、一部で重宝されていたらしい。
今回、李浩然を殺した犯人であるとされている。

李浩然(リー・ハオラン)

『金烏(ジンウー)』の幹部。
黒江で生まれ黒江で育ち黒江の裏社会を渡り歩いてきた叩き上げの地元マフィア。10数年前の独立に伴う情勢悪化の際に活躍したことがきっかけで名が知られるようになった。
金烏がその力を大きく減じ煌星・ロレンツィーノ・蛟龍会の三組織が台頭してきたあともなお、金烏が消滅することなく黒江で一定の影響力を保っているのは、李の功績によるところが大きいといわれる。
現在は金烏の中でも重役と呼ぶべき立場にあり、ストリートの住人たちとも積極的に関わりを持っていたという。
6/28の夜、遺体で発見された。

ジナイーダ・セルゲーヴナ

北方に位置する某国から来た技術者の女性。
『ヴァスホート社』という重工企業に勤めており、黒江進出を目論む社の意向で地盤作りのために派遣されてきた渉外員、アドリアン・オレーゴヴィチ・ヴォロトニコフに随行してやってきた。
基本的に荒事などには関わることのない堅気であるうえ、裏方専門であるため表に出てくることは滅多にない。
しかし、黒江の首都・回港に到着したその夜にヴォロトニコフが行方不明になってしまったため、彼の動向を探っているうちに今回の事件に辿りついた。ヴォロトニコフが最後に目撃されたのが李の殺された現場付近であったとの情報を頼りに、決死の覚悟でこの会議の席に飛び込んだ。

”アビシニアン”

スリルジャンキーの若き天才ハッカー。
実力試しや愉快犯的な発想で騒ぎを起こしたり、好奇心であちこちの機密を覗いては、副産物的に集めた情報を売り捌いて生計を立てている。
比較的最近になって黒江にやってきたばかりで、特段どこの組織に肩入れするということもないスタンスであるはずだが、何故か今回の騒動には自分から進んでロレンツィーノファミリーに協力を申し出、情報屋としてこの会議に臨席することになった。

凛夏(リンシア)

『金烏』と協力関係にあるフィクサーの女性。年齢不詳。蘭玉楼という名の娼館を営んでおり、クーデター前からずっと回港の裏社会における中心人物のひとりとして知られている。
普段は妖艶で温厚で鷹揚とした女主人であり、母性と女性性の塊のような人物だが、こと裏社会の者たちと接するときにはたとえ屈強な歴戦のマフィアたちを相手取るときにも微塵も怖じることなく一歩も引かない胆力を見せる。
事件が起きたのが彼女の持つ土地だったことから今回のことを知るところとなり、金烏がわの裁定役として名乗り出た。

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