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華人社会・チャイナタウン 書籍紹介

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華人社会・チャイナタウンを理解するうえでのおすすめの書籍を紹介。
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#南洋華人

読書:東南アジアのチャイナタウン 山下清海 著

東南アジアのチャイナタウンを構成する福建人、潮州人などの華人方言集団、華人の活動を支えてきた会館と廟、東南アジア各国のチャイナタウンについて。東南アジアのチャイナタウンを巡る際のバイブルのような本。著者がこれを出版したのが35~36歳と見受けられ、ただただ感心してしまう。 シンガポールでは、福建人が最も多く、潮州、広東、客家、海南と続き、同国での5大華人方言集団を構成している。1978年に実施されたある調査によれば、華人のうち、福建語を理解できると答えた者は全体の97%

読書:東南アジア華人社会と中国僑郷 山下清海 著

東南アジアの華人社会に加え、その華人社会とそれを構成する方言集団の故郷(=僑郷)との関係を描写している。華人社会及び僑郷は互いに影響し合いながら発展してきた。 Changは世界の華人の分布をtropical, coastal, urbanという3つの形容詞で端的に表した。熱帯におけるヨーロッパ人による植民地開発、とりわプランテーショ経営において勤勉で安価な労働力として多量の華人労働者が必要とされた。また、多くのチャイナタウンは港湾都市に形成されている。マレーシアやインド

読書:海域アジアの華人街 泉田 英雄 著

[2008年に書いた記事を転載] 題名に惹かれ購入した本。以前台湾とシンガポールに旅行してから、チャイナタウンといえば建物の一階部分が連続したアーケードであり、それは中国南部を旅行した際にもアモイで見かけたこともあり、南方華人が大陸から持ち込んだ亜熱帯の南方出身の華人ならではの生きる知恵として形成されたものだと思っていた。そしてスコールの中、アーケードを歩きながら通り過ぎていく店舗をひとつひとつ覗き込むのがとても好きだった。 南洋の華人街において、もともと街路に面した

読書:海の十字路の交流誌 矢延洋泰

[2008年に書いた記事を転載] 第二次大戦後、東南アジア植民地が相次いで独立するなか、出稼ぎにきていた華僑はその地にとどまりながら中国籍を捨てなかった「華僑」および公民権を得た「華人」となった。華僑の華は中国を示すが、華人の華は中国人の血統を表す。中国国籍を捨て、新生国家の公民となった者が多かったが、中国籍を捨てながらも、現地の公民権をとらず無国籍となった者、第三国に出た者、これを機に帰国した者などさまざまな人生を選択した。 現地生まれの「僑生(Local Born

読書:潮州人―華人移民のエスニシティと文化をめぐる歴史人類学 志賀 市子 編著

1. アイデンティティとは複層的なもの"マレーシアの潮州人であるA氏と香港の潮州人であるB氏が、ビジネスパートナーであるからといって、「同じ潮州人だから」と短絡的に決めつけることはできない。彼らの行動原理をすべて華人や潮州人のt特製と結び付けて論じようとするのは、「観察される全ての現象を専ら『華人(学)』へと回収させようとする」悪しき「循環論」として批判されるのが落ちである。"とあるが、確かにその通りと思う。こと日本人は華人間の裏のネットワークのようなものへの脅威と期待を

読書:インドネシア国家と西カリマンタン華人 松村智雄 著

「辺境」からのナショナリズム形成、とあるようにどのように辺境地域である西カリマンタンに住む華人達がインドネシアという国家の一部になっていったか、中国の僑郷、東マレーシア、シンガポール、台湾、インドネシアとの関係性のなかでそれが形作られる過程、またそのなかで西カリマンタン側もただ中央政府の政策を受け入れるのみでなく華人文化を残そうと積極的に中央の文脈を取り込みながら対応していった点、がとても興味深く描写されている。膨大な量の資料とインタビューからなっており、これが修士論文を