でもそれはマラソンの最後の一歩

「この先の普通の日を一緒に過ごしたいです。結婚してください。」

 これは僕が好きで尊敬している人の、プロポーズでの一文です。


 数日前にバイト先の先輩と会話する中で「人見知りするタイプですか?」と聞かれて「めっちゃくちゃします」と答えたのですが、その後頭に浮かんだけど言わずに押し殺したことがあります。"会話はした方がいいですよね"という話をしていたところだったので言ってもしょうがなかったのですが、本音は「避けられるなら会話という会話は全て避けたい」です。ただ、「愛想が悪い奴だとは思われたくない」「冗談が通じる人だと思われたい」という考えに基づいて、せざるを得ない場合・した方が望ましい場合には頑張るようにしています。
 相手に投げかける質問を考えるのに僕は時間がかかりまくるのですが、その理由の1つは話題運びに脈絡が欲しくなってしまうからです。noteに何度か書いたことがありますが、「相手が一人暮らしか実家暮らしかどうか」を仮に聞きたい場合は初めに「地元どこなんですか?」と聞いて、解答から推理して「ってことは今一人暮らしなんですね」につなげます。「一人暮らしですか」→「はい・いいえ」というやりとりをするよりも無理やり広げられる会話のとっかかりが多くなるので、0から話題を考える手間が少し減って得です。
 というようなことを内容によらず考えてしまうので、自分でもめんどくさいです。もう少し器用な人でありたかったです。
 あと、こういうことを考えてしまうのは「コミュ力が高い人」って思われたい願望からきてるかもしれません。話題の数珠繋ぎをしているように見せたいのかもしれません。
 会話のイニシアチブを握ってしまっている場面、握らざるを得ない場面、握っていない場面、色々ありますけど、どれも苦手でできた試しがないですが、身につくなら欲しいですよね。


 話を戻します。ここまでの話は、本音としては「避けられる会話は極力避けたい」けどそうもいかないから一生懸命足掻いてます、ということです。

 先日、武道館で行われたCreepy Nutsのライブに行ってきたのですが、ライブ会場周辺のベンチに座って肩を寄せ合いながら一つのスマホを見ていたカップルを見て「良いなぁ」と思いました。何を見てたのかは知りませんが、なんか「良いなぁ」と。会話をしなくても良い関係って「良いなぁ」と。そのカップルを見て「あんな恋人が俺にもいたら良いなぁ」とか思ってしまったのですが、そこから遠く離れた場所のベンチに一人で座って冷静に考えると、あれは「交換するような情報も知りたいと思える情報もなくなった先の沈黙」であるだけなんですよね。
 冒頭に載せたプロポーズの中の一文もそうです。人によって程度や内容の差はありますが、”普通の日常”を普通に送れるのはコミュニケーションを取り切った後のポジティブ方向の話です。(ですが、僕はあの一文がすごく好きです。本音では、なんでもない一日をなんでもないまま一緒にいてくれる小説の主人公の恋人みたいな人がいたら良いなぁと思ってます。ただ、それ以前の"人としての節々のクオリティ"がゴミなので結局は思ってるだけです。心のそこから、素敵な文言だなと思っています。)
 本当のことを言えば僕には他人への興味なんて微塵もないので、「知りたいこと」「聞いてみたいこと」なんてありません。人への興味を持つのは無理そうだから、僕は付け焼き刃の紛い物のコミュ力でどうにかしようとしています。


 今日のアルバイトで、僕がパートさんと話すときにどんな話題を振られているかを意識してみました。そんな中での1つの質問が「高校生の時、服とかってどこで買ってた?」でした。話を聞くと「息子が同じ服しか着なくてさぁ」ということでした。結局15分間くらいパートさんと「息子さんと服」についての話をしていたのですが、この話で気がついたことがありました。
 それは「自分(及び周辺の人間たち)はこうなんだけど、あなたはどう?」という趣旨の質問もなかなかに有効である、ということでした。よくよく考えたら僕が付け焼き刃のコミュ力で最後に辿り着く本題がこれなことが多い気がしました。

 仮に自分がいるレジにCreepyNutsのグッズを着たお客さんが来たとしたら、その時に一瞬「声かけようかな」という考えがよぎります。これまでにこのような状況に3回くらい遭遇したことがあるんですが一回も声はかけていません。だから「僕はこうなんですけど、あなたは声かけたことありますか?」を聞きてみても良いかもしれません。ただ、1つ目がこれだと違和感があるので「好きなアーティストの人とかいますか?」→「その人のグッズを身につけた人がレジに来た時に声かけたりできる人ですか?」みたいに話をつなげられたら僕的には万々歳です。ただ最後はただのYES/NOの質問で一瞬で終わってしまうので、相手が挙げたアーティストで話を広げるか誰のグッズを見たかという体験談を喋っても良いような気がします。
 純粋な相手への興味ではなくても、「自分はこうなんですけど、」から発生するタイプの興味なら「純粋な相手への興味」よりは得意かもしれません。


 ただ、僕にはまだマラソンを走る勇気はないです。


#318  でもそれはマラソンの最後の一歩

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