点と点が線になって

 僕がアルバイトを始めて1ヶ月くらい経ったある日のこと。
僕は男の先輩・佐藤さん(仮名)と一緒に帰ることになった。
「初めてのバイトですか?」「バイト慣れました?」というようなおざなりの質問をされながら一緒に帰っていた。
話をしている中で、佐藤さんが自分より一歳年下であることと、今は学生ではないことが分かった。
先輩とちゃんと話す機会がなかったので、「こういうお客さんとかどうしてます?」「レジ作業のコツとかってあります?」なんておざなりの質問をしながら帰った。
途中、佐藤さんに家の場所を聞かれた。

佐藤「家どの辺なんですか?」
僕「あそこのコンビニの裏入ったところです」
佐藤「そうなんですね」
僕「アルバイトの人ってどの辺に住んでる人が多いんですか?」
佐藤「でもみんなこの周辺だと思いますよ。僕はあっちの方に住んでるんですけど、それでいうと鈴木Aさん(仮名)(女性の先輩)も近所に住んでます。」

佐藤さんに「鈴木Aさんも近所に」と言われた時、背筋が凍りました。
もし自分の選んだバイト先が「バイト同士で互いの家の場所がわかるくらい仲がいいアットホーム感のあるバイト先」なのだとしたらちょっと自分には厳しいかも….と思ったからです。
個人的にはこうの関係性だけのバイト先がよかったです。
まで関係性がおよんでいるとするならばすでに仲間感が出来上がっているわけで、そこに新入りとして入っていくことは苦痛でしかありません。


 僕がバイトを始めて3ヶ月が立つ頃、僕は普段はレジにいるのですが品出しの応援に回されました。
カレー類の商品の品出しを僕がしていると、同じ列に品出し部門の先輩・武田さん(仮名)がやってきました。
僕は特に気にせず品出しをしていたのですが、武田さんが話しかけてくださいました。
ちょっとした雑談をする中で、武田さんが僕の3つ上であること、同じ大学に通っていることがわかりました。
ある程度会話をしたところで「そう言えば名前は?」という話になりました。

武田「そう言えば名前まだ言ってなかったね」
僕「確かにそうですね」
武田「ぼく、武田っていいます」
僕「釜飯です、よろしくお願いします」

すると、武田さんが「君が釜飯さんか〜」と言いました。
そのまま話を聞いていると、パートさんの中で僕の評判がいいらしいという話をしてくれました。それに加えて、レジ打ち担当の先輩・「鈴木さん」が僕のこと「すごく礼儀正しくていい子」と言っていたという話をしてくれました。

実はレジ部門のアルバイトには同じ苗字の方がいて、ここでは仮に「鈴木さん」としてさらにABで区別することとします。

鈴木Aさん鈴木Bさん(女性の先輩)のどちらなんだろう?」という純粋な疑問が浮かんだのですが、「どっちの鈴木さんですか?」と聞いてる自分を想像して俯瞰すると超絶キモかったので聞けませんでした。
今思うと、「鈴木何さんでしたっけ?」と聞けばよかったような気もします。

結局、鈴木Aさん鈴木Bさんのどちらだったのかはこの時点ではわかりませんでした。

 この時、武田さんに「バイト先の人と仲良くなるもんなんですか?」と質問しました。
部門が違うのに、武田さんと「鈴木さん」が話すタイミングがあるのが不思議に思えたからです。
それに対して武田さんは「そんなにならないけど、今みたいに品出しの時に一緒になって喋ると仲良くなったりする」と言っていました。


ちなみに、下に貼った記事がこの会話をした直後に書いたnoteです。


とある日のバイト終わり、MステにCreepy Nutsが出るということで僕はダッシュで帰っていました。その時追い抜かした二人組がいたのですが、僕にはそれが佐藤さん鈴木Aさんに見えました。


とある日、僕がレジに立っていると、そこに1時間バイトを早く上がった佐藤さん鈴木Aさんが一緒に来て一緒に会計をしました。
僕が佐藤さんと一緒に歩いて帰った時に感じた違和感がようやく解けました。
「お互いの家の場所がわかるくらいに仲が良くてアットホームな職場」なんて話じゃなくて、ただただ佐藤さん鈴木Aさんがカップルだったってだけの話だったんだと思います。

実際8ヶ月アルバイトをしてみて、「お互いの家がわかるくらいの関係性」というのはそこまで強く感じないので、確定でいいと思います。

1週間前のバイト終わり、鈴木Aさんに話しかけられました。

鈴木A「釜飯さんって、社員さんに何て呼ばれてるんですか?」
僕「社員さんには苗字に”さん”付けですかね」
鈴木A「そうなんですね」
僕「いや、そういえば最近は苗字に”ちゃん”付けされてる気がしますね」
鈴木A「釜飯さんのこと、裏で佐藤さんが●●って呼んでるの知ってますか?」
僕「懐かしいっすね。歴史上の人物じゃないですか」(←返事完全にミスってる)
鈴木A「….」
僕「更衣室で佐藤さんに会った時はいつも苗字に”さん”付けなんで知らなかったです」
鈴木A「釜飯さんがバイトで入ってきてすぐぐらいから佐藤さんは●●って呼んでましたよ」
僕「マジすか、そんな前からなんすね」

これも証拠の一つで良いですよね。
レジ打ちは基本レジに一人で立っているので、バイト同士で雑談をする時間はほとんどと言っていいほどありません。
話すタイミングがあるのは「社員さん」か「その代打を任される歴の長いバイトの先輩」くらいしかないです。
あだ名で人を呼べるような会話ができるのはバイト外の話と推測できるので、これも僕の予想を確信に近づけてくれます。


 スーパーにはおおよそ「紙パック・トレー・缶・ペットボトル」あたりを回収するリサイクルボックスが設置されています。
僕のバイト先では、一時間間隔でレジ担当がそれを回収することになっています。

 時刻は19時過ぎ。僕がリサイクルボックスの回収当番でした。
明るい店内と比べて外は暗く極寒。
外からは店内がよく見えますが、店内からは外は反射も相まってよく見えません。
リサイクルボックスの回収をしながらふと店内を見ると、サービスカウンター付近で武田さん鈴木Bさんが喋っているのが見えました。
回収をしながらチラチラ店内を見ていたのですが、武田さん鈴木Bさんのお尻をめちゃんこサワサワしていました。
まあ、この二人がカップルという推測でいいんだと思います。
「品出し担当がレジ付近にいる状況ってなんだよ!」とは思いましたがこの際どうでもいいです。
とにかく、武田さんと初めて話した時に武田さんが言っていた「鈴木さん」は、鈴木Bさんのことで確定でいいと思います。

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 趣味と言っていいほどではないですが、バイト中はお客さんのことをずっと観察しています。


 レジに対して横方向の通路からお客さんが来る時、縦方向の通路側の方を一瞬見てレジに向かってきてる他のお客さんがいないか確認するお客さんを見かけると「優しい方なんだろうな〜」という気がする。
そして、接客をするとちゃんと優しい。
それとは逆に、通路の確認はするけど全然優しくない態度のお客さんもいて、そういうお客さんのことは顔もポイントカードを持っているかどうかも覚えている。

「この前までベビーカーで座ってた気がするけど、もう立てるようになってる?」と赤ちゃんに対して思うこともある。

「あれ、今日はストロングゼロ買わないんだ」と思う人もいる。

「あれ、今日はチョコあ〜んぱん2箱なんですね」と思う人もいる。

「あれ、なんで今日はポイントカード持ていないんだろう」という人もいる。

「ついにお子さん生まれたんですね。おめでとうございます!」と思う人もいる。

「あれ、この前知育玩具取ってあげた子が今日は一人でお使いに来てる」と思うこともある。

もちろん、「今日は一人でお使いなんだ」と思うこともある。

「この前話しかけてくれたお客さんだ」と思うこともある。


とりあえず、それくらいにはお客さんのことを観察しているし覚えています。


今日のバイトで社員さんとある先輩とこんな会話をしました。

先輩「釜飯さん、ポイントカードの有無って毎回確認してますか?」
僕「明らかに持ってなさそうな若者とかはもう聞いてないですね」
先輩「ほら、やっぱり。毎回は聞かないですって」
社員「うそ〜」
僕「でも僕、ポイントカードを持ってない人をだんだん覚えてきてるのでそれもあると思います」
社員「いや、それは普通に釜飯くんが記憶力いいんだと思うよ」

僕的には、「記憶力が良い」というよりは「一般よりもただただ人を見ている時間が長い」と言うほうが適していると思います。

 日頃、僕が抱く違和感の点を線で結べるような確信に迫る質問はチキンなのでできません。
ですが、僕が”人間”をよく見ているおかげで、「自分から聞く」というリスクを犯さずとも多くの点を集めて線にすることができています。

#225  点と点が線になって


「僕が先輩方とバイトで一緒になった時に聞く言動からの想像」と「直接聞いた事実」に基づく年齢関係はこんな感じです。
興味ないと思いますが、参考までに。

バイトを始めて以降、僕はバイト先の話を書きすぎています。
毎回仮名を決めたり決めなかったり、決めてもバラバラだったりで個人的にややこしくなってくるので、時間があったら過去のnoteを遡って全部統一します。

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