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貰ってばかり

 成人式に参加するため、先日少しだけ実家に帰省しました。
僕が実家を出た後の僕の部屋には、ベッドと勉強机と本棚が置いてあります。
必要なものは一人暮らしの方へ持ってきているので、机の引き出しは基本どれも空っぽです。
部屋が使われているような雰囲気はもちろんなく、大量の洗剤、大量のトイレットペーパー、大量のボックスティッシュの備蓄庫と化していました。

 小学校に入学した時に買ってもらった勉強机に大学で使っているパソコンを置き、前日にサボったオンデマンド授業を受けていました。
途中で飽きてきて、サイドテーブルの鍵のかけられる引き出しをなんとなく開けたら、中にめちゃくちゃ手紙が入っていました。

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 実家の近所には、同じくらいの年齢の子供がたくさんいました。
同じくらいの年齢の子供のうち、僕以外の男子は小2くらいからみんな野球クラブに所属し始めました。
僕以外の男子は、昔から外で鬼ごっこをしまくっていたような人たちでこぞってスポーツに堪能でした。
僕は足がすごく遅かったので、そこのメンツに混ざって遊んでも楽しいとはあまり思えませんでした。

 近所の子供の中に、僕より2つ,6つ年下の姉妹がいて、僕の妹がその姉妹と仲良くしていました。
僕が小学校から帰ると、既に家に遊びに来ていたりしていました。
僕と、妹と、その姉妹で遊んでいることが多く、お互いの母親も同伴でイルミネーションを見に行くくらいの仲になっていました。

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 僕の机の引き出しに入っていた手紙の差し出し人のほとんどが、この姉妹からのものでした。
妹とその姉妹がバレンタインデーによくチョコを作っていて、僕はその失敗作を大量にもらったりしていたのですが、そこにわざわざつけてくれていた手紙。
僕の誕生日の時に書いてくれていた手紙。
 僕はお年玉のポチ袋も全然捨てられないような人間なので、わざわざいただいた手書きの手紙なんかもちろん捨てられるわけもなく、少しずつ溜まっていきました。
 先日、僭越ながら二十歳になりました。
彼女はいないですし、絶賛一人暮らしですし、大学に友達もいないのでネットに逃げ込みました。
一昨年くらいまでは律儀にLINEのプロフィールに誕生日を設定していたのですが、もうめんどくさくなったので設定を消しました。
それでも尚僕におめでとうLINEを送ってくれた人が一人だけいて、それがその姉妹の姉の方でした。
そのLINEを見て気が付いたんですが、その前のLINEのやりとりが去年の僕の誕生日でした。
どういうことかというと、僕は「相手の誕生日を祝ってない」ってことです。
 そこで、数年越しにハッとしました。
「俺、手紙を送り返したこと一回もないな…」って。
いつも僕に手紙を届けてくるメッセンジャーは妹がしていました。
当時を思い返すと、自分で手紙を携えて相手の家に押しかけるのは恥ずかしいし、妹に届けてもらうのも恥ずかしかったような気がします。
ホワイトデーのお返しをちゃんとしていたのかどうかも正直危ういです。
 今はLINEを一応知っているので、メッセンジャーとして”妹”を噛ませる必要は特にないわけです。

 そういった自分の性根の腐り具合がリアルタイムであることを「引き出しの手紙」と「LINEとトーク履歴」から思い知らされました。

 ガキの頃から自分の性根の部分は何も変わっていなくて、しかもそれが変な風に尾を引いていて、僕自身はこれっぽっちも成長することもなく、それでいて屁理屈みたいなことだけが上達していて、今の今まで後ろめたさなんてものを全く感じてこないで、今更になってようやく気が付いても、もうなんの意味もないですよね。

#221  貰ってばかり

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