2016年4月3日 GUIROが東京でライブをしたその日

8年待った。GUIROが東京でライブをする、その日がやってきた。

8年前の2008年2月7日。吉祥寺のスターパインズカフェでGUIROのAlbumリリースライブがあった日。まだGUIROのライブを観たことがなかった僕はどうしてもそのライブに行きたかったのだが、当時、職を変えた直後だったため、時間の都合を付けることが出来ず、観ることを泣く泣く諦めた。

それから東京でのライブを心待ちにしながら、何人かの方にGUIROのCDを貸したり、大勢の集まる試聴会で音源を流してみたりした。元々知っている方、対バンをしたことのある方なんかとは「またライブやってほしいねー」と、会う度に話していたような気がする。

その後、名古屋で2回と神戸で1回ライブを観る機会に恵まれたが、東京でのライブは8年前の後悔をずっと引きずっていた僕にとってとても特別なことだった。


場所は新代田のライブハウス、FEVER。300人も入れば一杯の箱。

開場の18時より少し前に着き、予約番号をチケットに引き換えるが、なつやすみバンドのリハがなかなか終わらず、開場したのは20分ほど遅れてだったと思う。何となくだが、なつやすみバンドも緊張してるんだろうなぁという風な印象をリハの音漏れから感じた。

予約番号が早かったおかげで、ステージに向かって右側の最前列で観ることができた。

なつやすみバンドは6曲ほど演奏。ほとんど初見で、詳しいことは知らないのだけど、ドラム(村野さん)の力強さが印象的だった。MC.sirafuさんはGUIROと2度対バンしたことがあることや、今日のライブの経緯などについて話していた。MC.sirafuさんは片想いでの演奏を何度も観ているが、やはり緊張しているようで、演奏や表情に少し強張りを感じた。おそらく、それは彼だけでなく、なつやすみバンド、引いては、会場全体が緊張の空気に包まれていたのだと思う。GUIROの出す音への期待が緊張へと成り代わっていたのだ。

この日のGUIROのメンバーは、髙倉一修(vo.g)、厚海義朗(b)、松石ゲル(ds)、西本さゆり(cho.xyl)、牧野容也(g)、長瀬敬(cl.cho)に、神戸から引き続きのあだち麗三郎(cho.perc.sax)と、東京公演のみ参加の西尾賢(pf)。それに、神戸でのライブで見事なPAを務めた得能直也。

緊張感はサウンドチェックでも続いていた。高倉さんのギターのチェック時、何度かハウリングを起こしながら微調整が繰り返し行われた。少しピリピリしたものを感じていたが、突如始まったTHE BEATLES/BIRTHDAYのイントロコピーで会場に笑いが起き、「ビートルズのコピーバンド、GUIROです」と楽しそうな苦笑いを浮かべた高倉さんの一言でライブが始まった。

1曲目「波のアバウ」はAlbum未収録ながら、昨年12月の名古屋でのライブでも披露された曲。冒頭の「オゥオゥオゥ・・・」という無国籍感のあるコーラスと滑らかなアコースティックギターの重なりが印象的で、中盤から加わってくるクラリネットのフレーズもやけに頭に残っている。

2、3曲目は「新世界より」、「あれかしの歌」。ここまではわりとゆったりとして心地よい曲が並ぶが、「あれかしの歌」のYMO/PURE JAMのリズムパターンを引用したドラムが入ってくるところから演奏が徐々に熱を帯びていく。Albumでは亀田さんのフリーっぽいピアノが特に聴きどころなのだが、この日のライブでは牧野さんのギターが主役だった。手首を固定して直線的なフレーズを小刻みに繰り返すことで会場の興奮を煽り、観客は歓声でそれに応えた。

4曲目の「目覚めた鳥」は、Albumでは高倉さん歌唱のところ、CDシングルヴァージョンの西本さん歌唱で。その後、5曲目は厚海さん作曲の「風邪をひいたら」。ピアノとシロフォンの音色がそのリリカルな世界に洗練と不思議な印象を与える。ゴホン⇒ https://twitter.com/eight_label/status/704054636781531136

6曲目「エチカ」はこの日のハイライトの1つ。高倉さんのツイート( https://twitter.com/eight_label/status/717377234164551684 )にもあったが、牧野さんのギター周りにトラブルがあり、音が出なくなったのだった。演奏を聴きながら、牧野さんがエフェクターの切り分けをしているのをハラハラしながら見ていたのだが、間奏を西尾さんのピアノが見事な演奏でギターの不在をカバーした時は一際大きな歓声があがった。

7曲目「マリア礼賛」は厚海さんのブリブリ動くベースプレイが見ものだった。Album収録曲でないので聴くことができないが、あれがクラーベというリズムなのだろうか。 https://twitter.com/eight_label/status/711974891923222529

8曲目は「いそしぎ」。地味だが、とても好きな曲。優しく寄り添うような西尾さんのピアノが活きる。9曲目「ファソラティ」ではヴォーカルに竹内さんが登場。顎にマスクのような物をつけていた。できものができたか何かだったらしいが、大入りの観客を前にして堂々と歌い上げたし、かわいくてグッド。

10曲目の「山猫」。この日の最大のハイライトだった。強く弾みのある厚海さんのベースは目を光らせて襲い来る豹のようだったし、西尾さんのピアノは大鳥がその気高い翼を大きく広げて、大地に激しい風を巻き起こしたかのよう。そして、それを迎え撃つあだちさんの伸びのあるサックスには、何かを強く決意した男の眼差しを感じた。鬼気迫るその演奏に鳴り止まない拍手と奇声が交わる。あんな演奏はそうそう観れるもんじゃない。

11曲目「しあげをごろうじろ」では、ゲルさんのドラムと、あだちさんのパーカッションによるバトルがあり、ゲルさんにはその逞しいドラムプレイのすごさを感じさせられたし、あだちさんには音の出るブタを使ったプレイに神戸同様笑わされた。

12曲目「旅をするために」。Lambert, Hendricks & Rossの曲に日本語の歌詞をつけたという、とても美しい曲。名古屋でも神戸でも泣いたが、今回も泣いてしまった。Lambert, Hendricks & Rossは何枚かアルバムを聴いたことがあるが、スキャットが派手な曲や早い曲ばかりのイメージで、原曲を聴いた覚えがない。レコード屋に行ったらLambert, Hendricks & Rossのコーナーは引き続きチェックする。

「最後の曲だね」と、少し照れ隠しをしたような高倉さんの一言で本編の最後が告げられ、始まった「銀河」。へんてこなリフで始まる、リズムに特徴のある曲。後半にサンバのリズムに変調する際、一気に演奏が熱を帯び、爆発する。※デモが聴ける⇒ https://twitter.com/eight_label/status/702499496152858625

アンコールでは、GUIROの代名詞「ハッシャバイ」を。その後、1曲目に演奏した「波のアバウ」のアップテンポなヴァージョン。

さらにアンコール2回目で「日曜日のチポラ」を演奏し、終演となった。

得能さんのツイート( https://twitter.com/naoyatokunou/status/716939028793131008 )にもあったが、会場全体の緊張が徐々に薄れていき、そこらじゅうに笑顔が浮かぶ良いライブだった。「GUIROはやっぱりすごかった!!」この日のライブを観た人の多くはそう感じたんじゃないだろうか。GUIROのライブをまだ体験していない人は、次の機会にぜひ体験してほしい。僕も次のライブを心待ちにしている。


以下、2016/5/9追記

名古屋での2daysをもって、GUIRO 2016 東名神ライブは終わった。そのうち、3/27の神戸と4/3の東京でのライブを観れたが、どちらもとても素晴らしい内容だった。名古屋もツイッターなどでたくさんの方が様々な感想を書かれていて、こちらも素晴らしいライブだったのだろうと思う。心底、行けた人が羨ましい。しかし、即日ソールドアウトの名古屋公演、初めて観る人もたくさんいただろうし、これで良かったのだと思う。

体調不良や、やむを得ない事情で観ることが出来なかった知人たちはもちろん、もっともっとたくさんの人に知られ、観てもらいたいと思う。

フィッシュマンズに間に合わなかったことや、ゆらゆら帝国のライブを観ることが出来なかったことを悔やむように、GUIROにも間に合わなかったことになるのかな...と思っていたのが、この1年半のうちにまさかこんなことになるとは。

CDと違って、ライブはものとして残らないかもしれないけれど、ずっと心に残るなぁ。

音楽の歓びを体現し続ける運動体こと、GUIROに出会えて本当に良かった。

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セットリスト

0.サウンドチェック

1.波のアバウ(テンポゆったり) ★

2.新世界より

3.あれかしの歌

4.目覚めた鳥

5.風邪をひいたら

6.エチカ

7.マリア礼賛 ★

8.いそしぎ

9.ファソラティ

10.山猫

11.しあげをごろうじろ

12.旅をするために ★

13.銀河 ★

アンコール

1.ハッシャバイ

2.波のアバウ(テンポ早め) ★

アンコール2

1.日曜日のチポラ

※★はAlbum未収録

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