【オンライン講座】「すぐに出来る!世界につながる!環境調査「トランセクト調査」〜日本チョウ類保全協会 中村 康弘氏
2023年4月5日は日本チョウ類保全協会 中村 康弘氏を講師にお招きしてオンライン講演会「すぐに出来る!世界につながる!環境調査「トランセクト調査」 が開催されました。
世界的な昆虫の減少
昆虫の減少・・思う以上に深刻です。
1枚目の画像・・コスタリカの森で実施されたライトトラップの状況です。
左が1985年
右下が1995年
右上が2015年
の結果です。
コスタリカといえば、エコツーリズムを一つの観光資源としている国。ライトトラップをしている場所は熱帯雨林の森がしっかりと残されている国。
だけど。。こんなに減ってしまう?
まるで都会でやったライトトラップのように見えます。
今、世界の各地で「森が残されているのに虫が激減している」という現象がおこっているのだそうです。
原因としては気候変動、農薬、窒素肥料の過剰投下による土壌の変化、森林伐採、開発などが考えられますが・・
守られている森にもその影響は確実に出ているのだそうです。
このままの減少率で進めばシミュレーションによっては数十年後には昆虫は全部いなくなるのでは?というぐらいの勢いです。
もし虫がいなくなると何が起きるか
一方で虫は農業にとって邪魔・・なので農薬の開発が続いているわけですが、もし虫がいなくなればどんなことが起きるのでしょうか?
ー多くの植物は受粉ができなくなり消滅します→森林が減衰し、森から受けていた水や資源、大気、環境など恩恵がなくなります。
ー鳥や哺乳類など多くの生き物が虫を食べて生きている生き物が消滅します。
ー多くの果実の作物の受粉が虫に頼っているため、収穫できなくなります。
・・・・私(中田)は怖くなってしまいました。
それは脅しでもなんでもなくて、少し考えればわかる当然の予想なのです。
日本の里山環境・・・という範囲だけではなく、もう今すぐ全人類で、昆虫の激減、生物多様性の減衰という問題に向き合わなければいけない、放置しておけば自然が自滅していくところまで来ているのだということを、このお話を聞いて知りました。
虫の減少の本当の理由はわかっていないけれど時間がない
ドイツでの例のように、どうしてこんなに大規模に昆虫が減少してしまったのか、その理由は詳細にはわかってません。
ですが「もう、個別の原因を詳しく研究している時間はないです。温暖化や農薬投下、窒素肥料過剰投下、森林伐採、山火事などのそれぞれの要因が複合して作用していることは間違いありません。今は世界で減少しているという事実をきちんと数字として捉え、早急に発信し対応を訴えていく必要があります。」
と中村氏。
そのアクションの一つとしてチョウ類のトランセクト調査を日本での実施を提案されているのです。
どんどん拡大しているヨーロッパの自然保護活動
このような生物多様性の危機にあたって、ヨーロッパでの自然保護活動は拡大を続けているのだそうです。
イギリスでの蝶の保全団体の会員の推移。なんとどんどん増え、20年間で4倍になったのだそうです。人口が半分なのにも関わらず規模は日本の団体の数十倍から数百倍になります。
日本では、自然環境の保全に関わる方はどんどん減少しているのですが、ヨーロッパでは同じように高齢化社会で人口が減少しているにもかかわらず増えているのだそうです。
その規模の大きさゆえに、多くの緑地を環境保全団体が管理しているという状況もあるようです。またシニアと若年層の二つを区別して発信し、若者への発信・啓蒙に非常に力を入れているとのこと。
日本と状況と全然違うことが理解できるとともに、それゆえに自然保護活動の活発なヨーロッパの活動に学ぶところは多いと思いました。
なぜ今チョウ類のトランセクト調査なのか
今回の主題となったチョウ類の「トランセクト調査」は、このように自然保護活動が活発なヨーロッパで提案され広く実施されているものになります。
簡潔にいえば、チョウの個体数について簡単な調査を長期的に多数の場所で継続して行い、その数量の変化を捉えていくというものです。
イギリスでは1970年代から続けられ、多くの科学論文の根拠となったとのこと。ヨーロッパでのネオニコチノイドの使用停止の一つの根拠にもなったそうです。
なぜチョウかというと環境の変化に敏感で環境の推移を早くとらえるのに最適であることが大きな理由になります。
鳥や植物は、環境の変化が目に見えてくるのにタイムラグが大きいというのです。
またチョウは目立つために多くの一般の方でも見分けることができ誰でも調査に参加できるという良さがあるのだそうです。
今までの調査とどう違うのか
日本でも環境調査が多く行われていました。
それらのトランセクト調査の違いは
ー簡単な調査方法でありながら方法が世界基準に統一されている
→結果は世界の調査と統合される
ーどこでもできる
ー頻度が週一回と高い(お散歩コースなどで実施される)
ー長期的に同じ規準で実施される(ヨーロッパでは30年以上の歴史がある)
ーチョウに絞るということで、一般の方でも参加しやすい
という点です。
週一回と頻度が高いというのが大変そうに感じますが、身近なところでできるのでそれを可能にしています。
今日本で実施されているモニタリング1000の調査では、
・頻度が少ない
・調査地が少ない
ゆえに、十分なデータが得られていないという弱さがあります。
そこで、もっと敷居低くし(身近な場所で一般種対象にできる)、大勢の方に様々な場所で頻度高く参加してもらう調査がトランセクト調査なのです。
身近な場所で世界の方々とともに急激に変わりゆく自然をとらえる調査ができるというのは大きなモチベーションになると思いました。
今後私たちになにができるのか
今後ぜひ身近な場所でトランセクト調査に参加するとともに実施をよびかけていきたいと思いました。
またNPOリトカルは、ICTツールという強みがあります。
日本チョウ類保全協会に協力し、トランセクト調査の結果入力ツールの開発、学校教育の推進などで協力としていくことも考えたいと思いました。
NPOリトカル 代表 中田
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