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オンライン講演会報告 井出祐史先生「コロナ禍で小学生1万名以上が参加した小さな郷土資料館の出前授業」

今回お呼びしたのは川口市の郷土資料館の井出祐史先生。

先生の実践から得た小学校との連携方法やオンライン授業での工夫についてお話頂きました。

ビックリするような内容、笑いが止まらないパワーあふれるお話ぶり、あっという間の楽しい2時間半でした。

ここではとても全部が書ききれませんが、私(リトカル代表 中田)が特に感動し、学びになった部分を書かせて頂きます。

小学校の先生が突然郷土資料館の先生に!

井出先生は17年間川口市の小学校教員を務められました。

が・・突然昨年4月から教育委員会の管轄する川口市立郷土資料館に着任されましたそうです。

突然の着任でしたがコロナ緊急事態宣言で資料館は、しばしば休館。そんな中「来訪者増やすように。」という指令がおり・・頭をかかえた井出先生は
試行錯誤の末、ICTを活用した小学校への出前授業を考案されました。

結果として2021年度はなんと1万名以上の川口市の小学生を対象に出前授業を実施されました。郷土資料館の小中学生の来館者数が3.7倍に(12月現在)なりました!

そこまで至った工夫やご苦労を語っていただきました。

学校とつながるにはタイミングが大事

出前授業をするには、まずは学校とつながるにはタイミングが大事というお話を頂きました。
学校は大変忙しい4月から年度末まで、色々な事情があります。

その状況を踏まえないでチラシなど配っても、大量のチラシに紛れて殆ど見られないということもあり得るといいます。

また先生方が忙しい時期は、
 ・どんな時間に
 ・何ができるのか
より明確にして話を持ち掛けることが大事というお話を頂きました。

井出先生は学校とつながるカレンダーを今回作って下さり、参加者の方々に共有くださいました。

井出先生が作って下さった学校とつながるカレンダー一部抜粋

出前授業がなぜ郷土資料館の来館者数を増やすか?

次にそもそもなぜ出前授業なのか?というお話を頂きました。

出前授業から郷土資料館の来訪者を増やす流れは以下の通り。

小学校で出前授業をする

子供達に郷土資料館に関心をもってもらう

子供達に裏がポイントカードになった名刺(←子供達はリアルの名刺が大好き。効果絶大!)を配る

出前授業直後、関心が高まったところで先生方にチラシを配り郷土資料館の案内をして、先生から子供達に案内してもらう

沢山の子供とその家族や友人が郷土資料館にやってくる

こんな構図が出来ると、出前事業をきっかけに博物館にばっちり人が呼べるというのです!!

そして、コロナ禍の中リアルの出前授業から、オンライン出前授業の実施にいたり、その効果は格段にあがったというのです。

井出先生の実感だと、なんとチラシのヒット率は1割ぐらいとのこと。これは驚くべきヒット率だというのです。

そして名刺を配った子供達の24%が郷土資料館に来場しているとのこと!

この数字は一般の広告の効果から考えると驚くべき数字だそうです。

井出先生が子供達に配っている名刺
※実物は連絡先(メールアドレス、電話番号)が掲載されています。
出前授業が郷土資料館の来訪者を増やす仕組み
出前授業のコツは機を逃さないとのこと

オンライン出前授業

そしていよいよオンライン授業を活用するお話を頂きました。

井出先生は、相手の先生方のニーズに合わせて様々な出前授業をされてきました。リアルの授業もされましたが、コロナ禍の中オンライン授業も実施をされていくようになりました。

オンラインの活用の初期にされたのが、「オンライン社会科見学~日光御成道と江戸幕府~」

コロナ禍で日光に修学旅行に行けなくなった6年生のために実施されました。

「オンライン社会科見学~日光御成道と江戸幕府~」の様子。一昨年11月には、コロナ禍で修学旅行が中止になると聞いて井出先生が考案され、川口市内37校3466人の6年生が同時に参加しました。

先生が案内されている様子。堂々と案内されているように見えますが・・実際は初めての試みで、心臓が飛び出しそうなほどバクバクしていたとか(^^;)


オンライン授業で重要なこと

子供の目線で見せる

たくさんのオンライン授業を実施され、試行錯誤を繰り返された井出先生によるとオンライン授業で重要なのは子供の目線で見るように撮影すると言われます。

子供達に見てほしいところをばっちり見せることができる点とリアル以上にインパクトがある可能性があると言います。

オンラインでは、子供に見てほしいところをZOOMしてみてもらうことができる
鋳物工場から中継されている様子

間を大切にする、オーバーアクションで実施する

次にオンライン授業のコツについても少しお話いただきました。

オンライン授業は、アニメ「トムとジェリー」のようにオーバーアクションで行うことが大事とのこと。

またリアル、オンラインに関わらず、話に程よい間(ま)をあけることはとても重要なのだそうです。

リアルとデジタルの組あわせが、子供達の中に知識が定着する可能性が高い

オンラインとリアルの体験や授業には、もちろんそれぞれのメリット、デメリットがあります。
井出先生はそれも分かりやすくまとめて下さいました。


上の図の最下段、「活用」のところが注目です。
オンライン授業は事前、事後の学習や説明
に活用できるというとことです。

例えば子供達に博物館など現地に行く前に動画見てもらうと
期待があるので子供達は集中して動画をみる

リアルの現地での体験の意欲が高まる
というのです。

同じように
現地での体験

体験後、デジタルの動画を集中してみる
というのです。

しかもデジタルでは「これは全員に教えたい!」というポイントを伝えやすいといいうのです。

結果としてリアルとデジタルの組あわせが、子供達の中に知識が定着する可能性が高いということです。

リアルとデジタルの組あわせは「はなもく散歩」の目指すところでもあり、その効果が裏付けられた気がして嬉しかったです。

SNSはとにかく効率がよい

さいごに郷土資料館の来訪者増加へのもう一つの決め手がSNSの活用。

井出先生は、郷土資料館のアカウントで毎日Twitter、Facebook、Instagramを上げられているということ。

またYoutubeに動画も多数上げられています。。

大変そうに見えますが、ネタを小出しすることにより、継続ができるとのこと。またYouTubeは3分以内の動画を投稿とするということにより負担少なくできるというコツも教えてくださいました。

投稿は、質の高い内容というよりスピード重視で簡単な内容でさっと投稿するというのもコツなのだそうです。

こちらは井出先生の配信されているYouTube動画。
先生のオンライン授業の様子がリアルに体験できます。

井出先生の生き方に勇気をいただいた

今回の講演会の内容は、まだまだ沢山ありました。とても全部お伝えしきれません。

でも何よりも井出先生に学ばせて頂いたのは、その生き方だと思います。

様々な情報を活用しつつチャレンジを続けるバイタリティあふれる生き方は、井出先生の出前授業を受けた沢山の子供達にきっと何らかの形で受け継がれることでしょう。

その子供達が社会人になったとき、また大きなパワーになっていくのではないでしょうか?

なんだか日本の未来が楽しみになってきました。

木と人との出会いをつくるWEBアプリ

NPO法人リトカルは、もっと多くの方が木と出会い、木をもっと深く知り、癒されながら、生命のつながりの深さ、森の尊さを知っていただきたいと考えています。 木と人の出会いをつくるWEBアプリ「はなもく散歩」は、そのために開発されたアプリです。 ぜひ「はなもく散歩」を通して、木と友だちになってください。 「はなもく散歩道」はこれから全国に拡大する予定です。




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