【疑問4】寺院か聖堂か 日本語表記のゆれ
戴冠式の情報を収集していた折、大変驚いた記述があります。
「今回の戴冠式には、カトリックの枢機卿が参列されます」
ローマから枢機卿が戴冠式にやってくるの? と吃驚しましたが、これは私の早とちり。【英国カトリック教会】の枢機卿でした。
英国には国教会以外の、カトリック教会、プロテスタント教会が別に存在します。
★ウェストミンスター寺院
英語表記はWestminster Abbey.
正式名称はCollegiate Church of St. Peter in Westminsterです。
こちらは【英国国教会】の建物です。
★ウェストミンスター大聖堂
英語表記はWestminster Cathedral.
こちらは【英国カトリック教会】の建物です。
同地域に、二つの聖堂が存在しているのです。
さてここで疑問が生まれます。
日本語訳で「寺院と聖堂」に分けた定義とは? と。
ウェストミンスター以外の教会建造物の名前はどうなっているのでしょう?
★カンタベリー大聖堂
・英国国教会
・英名はCanterbury Cathedral
・カンタベリー寺院という日本語訳はあまり聞きません。
★セントポール大聖堂 もしくは セントポール寺院
・英国国教会
・英名はSt Paul's Cathedral
・大聖堂、寺院、どちらの表記も同じ建物を示します。
★ノートルダム大聖堂 もしくは ノートルダム寺院
・フランスのカトリック教会
・仏名は Cathédrale Notre-Dame de Paris
・大聖堂、寺院、どちらの表記も同じ建物を示します。
基本は聖堂と寺院に明確な使い分けの定義はないようですが、同地域に異なる宗派の聖堂が二つ存在する場合には、日本語訳の揺れに注意しなければなりません。
今回チャールズ国王の戴冠式では「多様性の容認」が大きく取り上げられていました。様々な宗教者を招き、排他の姿勢を取らない礼拝は新時代的である、と。宗教の垣根を越えるというのは非常に難しい問題ですが、正道と正道を衝突させて傷付け合っても何も生まれない。歩み寄り、理解しあう姿勢を、創作においても重んじようと思います。
ここに記したものに関して、宗派ごとによる解釈の差異につきましては、何卒ご理解とご容赦をお願い致します。
■参考文献
■キャライラスト:CHARAT様
https://charat.me/
■背景素材:イラストAC様より
https://www.ac-illust.com
『今さら聞けない!? キリスト教:聖公会の歴史と教理編:ウィリアムス神学館叢書Ⅴ』
岩城聰著/教文館/二〇二二年五月
『今さら聞けない!? キリスト教:聖書・聖書朗読・説教編 :ウイリアムス神学館叢書 Ⅱ』
黒田裕著/教文館/二〇一八年七月
『ふしぎなイギリス』
笠原敏彦著/講談社/二〇一五年五月
『神学の技法:キリスト教は役に立つ』
佐藤優著/平凡社/二〇一八年五月
『神学の思考:キリスト教とは何か』
佐藤優著/平凡社/二〇一五年一月
『聖公会が大切にしてきたもの』
西原廉太著/教文館/二〇一六年十二月
『芸術の都:ロンドン大図鑑:英国文化遺産と建築・インテリア・デザイン』
フィリップ・デイヴィース著/デレク・ケンダル写真/加藤耕一監訳/二〇一七年六月
『聖公会物語――英国国教会から世界へ――』
マーク・チャップマン著・岩城聰監訳/かんよう出版/二〇一三年十月
『現代世界の陛下たち――デモクラシーと王室・皇室――』
水島治郎・君塚直隆著/ミネルヴァ書房/二〇一八年九月
■WEB参考記事
ビジュアル・ジャーナリズム・チーム/BBCニュース/2023年5月1日
【図解】 イギリス国王チャールズ3世の戴冠式 どこでどのように
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-65382456
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