因果応報
なんだか急に春めいてきた。
自転車に乗って走っていると頬を撫でる風が心地よく、新緑が色鮮やかに目に映る。
つい数日前までホットコーヒーの温もりを求めていたというのに、今日は思わずコンビニでアイスコーヒーを買ってしまった。
ワークマンジャケットにリュックを背負ってパンパンになりながら通勤していたが、最近はユニクロのウルトラライトダウンだけで外出できる。
リュックを背負うのもキツくないし、身軽って最高。
昨日は久しぶりに友人たちと飲み会だった。
年齢こそバラバラだが、もう20年以上の付き合いでみんな子持ち。
数年前にした離婚のことをやっと長女にだけ伝えられた彼女(弟にはまだ言わない方針らしい)。
お喋りすぎる旦那に日々うんざりしている、静かに暮らしたい彼女。
親の介護と、マンションの管理費修繕費の値上がりに苦労して、今後の住まいに悩む彼女。
子供4人産んでおきながらまだまだ旦那とレスには縁遠い彼女。
そして私。
家庭の数だけ悩みはある。
どれもリアリティすぎてドラマなんかよりもヘビー。
凍てつくような冷たい風から、優しくて暖かい風になり、窓を開けて部屋の換気をしていた1人の夜。
珍しく早く帰ってきた旦那が、帰ってくるなり早々私が開けていた窓を閉めた。
「換気してたんだけど」と伝えると「夜だからうるさいかと思って」と。
そうならないようにテレビの音量は下げてたし、旦那と2人で馬鹿騒ぎするわけでもない。
そもそも旦那が夜勤になってから、朝起きて部屋中のカーテンを開けて朝日を浴びることもできない、窓を開けて換気もできない、掃除機もかけられない、自由に洗濯も出来ない生活が12月から続いている。
休みの日だって旦那が起きるのを待つしかないし、しっかりと部屋をリフレッシュ出来る日は週に1度あるかないか。
そんな淀みまくった部屋の空気を変える為に換気をしていたのに、そのことを知ってか知らずか問答無用で締める旦那。
せっかく心地のいい夜風が通る部屋で開放的になっていた私の心の窓が、その時一緒に閉まって鍵まで掛かったのを感じた。
いつもは怒りの要素が強いのだが、その時は悲しさの方が珍しく勝った。
それ以上何もいう気にならなかったし、分かり合えないってこういうことなんだ、と思った。
他人だもん、しょうがないよね、と。
悲しい気持ちのまま旦那の夜ご飯の支度をした。
憎しみを込めて豚肉を切り、いつもは幅を揃えて切っているキャベツもわざとバラバラに切ってやった!
夜だからうるさくしちゃダメだからね、もう喋りませんよ、話しかけませんよ、と自棄になって部屋に閉じこもってカフェラテを一口飲んだ時にLINEが鳴った。
セフレからだった。
デートの日までちょうど1ヶ月後で待ち遠しいね、という話の流れで「1日10時間になればいいのにね」「でも当日は40時間くらい欲しいね」「体感だといつも一瞬だもん」という内容。
こんなの高校生がする会話じゃん、と思いながらも一気に心が満たされるのを感じた。
砂漠のようにぱっさぱさに乾いた私の心が一気に潤っていく。
このLINEのお陰で、その日旦那を拒絶しまくっていた私が、お気に入りのかまいたちのyoutubeの動画を、「この動画面白いよ」と旦那に教えてあげる、という会話をしてあげた(笑)
セフレからのLINEが夫婦の危機を一つ救った。
酔っ払って飲み会から帰った後も、旦那の夜ご飯を作るためにキッチンに立つ。
私って頑張ってるよな…なんて自己肯定感を高めながら。
ただ最近非常に悲しい出来事があった。
10年ほど前、まだ薄給なのに頑張って購入したネックレスを先日無くしてしまった。
大好きなSEX AND THE CITYの主人公キャリーが付けていたネックレスを真似てオーダーメイドで作ったもの。
いつかこのネックレスが似合うかっこいい女になるぞ、と少し背伸びして購入したものだ。
久しぶりに会うセフレとのデートの日に付けて、セックス前に外して下着の替えを入れていたポーチに入れておいたのが間違いだった…
帰宅して、下着と一緒にポーチも一緒に洗濯機に入れてしまったからそのまま排水されてしまったのか!?
それとも一緒に洗濯して、干してしまったときに風に飛ばされた!?(最近強風が続いていたから…)
もう、どこを探してもない…
これはかなりショックだ。
これは私の乱れた性生活の罰なんだ、と因果応報として受け入れた。
それでも改める気はないから、私はまた新しく同じネックレスを買う。
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