ウマ娘新シナリオ「プロジェクトL'Arc」を通して見る凱旋門賞の個人的解説
この記事は個人の感情しか含みません。
ネタバレも存分に含みますので個人の判断でお読みください。
その昔、とあるレジェンドが"それ"を夢や目標だと熱意を持って語った、今から20年も前の話だ。
当時の人々には"それ"はあまり聞きなじみもなく、まさに夢のような話だったんだろうな。
だがその熱は多くの人を動かし、今もなお"それ"に挑戦し続けている。
"それ"こそが今回触れていく"凱旋門賞"である。
競馬はウマ娘の知識ぐらいしかない。
凱旋門賞についてもっと知りたい。
って人向けの解説になるので、特に必要のない方はブラウザバックかALT+F4で。
初めにぱかチューブっ!で新シナリオの情報を見たとき(大丈夫かこのシナリオを組んで…)と思った。
というのも凱旋門賞はこれまで一度も、日本人騎手、日本生産馬、日本調教馬が優勝したことがないレースであり、日本はいまだチャレンジャーの立場であるのだ。
これまで多くの名馬が挑み、2着を4回経験するも掴めていない栄光である。
IFHAという競馬の国際機関があるのだが、世界のGIレーストップ100で何度も一位を獲得しているレースであり、各国から名馬が集まるレースでもある。
そのシナリオを作るということはこのウマ娘のシナリオの終着点は「凱旋門賞で優勝すること」であるのは明白な訳だが、ゲームとは言えパッと勝てていいレースでは無いと考えていた。
ところがやはりそこはサイゲである、今まで通りシナリオの落としどころはとても上手く、やはり熱中してしまうのだ。
そんな凱旋門賞には限らず競馬のレースには多くの障壁が付きまとう。
「適正」と呼ばれるものだ。
競馬を少しでも追ったことがあれば聞いたことがある人もいるだろうし、ウマ娘をプレイしていれば嫌でも目にするワードである。
凱旋門賞が日本にとって困難にさせているのはこの「適正」であると俺も考える。
日本の競馬場とパリロンシャン競馬場は全くの別物なのだ。
俺が敬愛してやまない福永祐一さんが「人で例えるなら、日本が100m走ならフランスは100mハードル走。求められる要素も違う。」と答えているほど。
「ではパリロンシャン競馬場で走れるように特訓をしよう!!」
というのがプロジェクトL'Arcなのだ。
俺の独断と偏見でプロジェクトL'Arcから見た凱旋門賞を解説していく。
そもそも凱旋門賞とはどういうレースなのか?という解説で、ウマ娘で知ったがそこまでリアルの競馬を知らない人に向けて俺が俺自身の時点で解説するので、再度の警告だが必要の無い方はブラウザバックだ!!またな!!!
凱旋門が行われるのはフランスのパリにある「パリロンシャン競馬場」
パリ郊外のシャルルドゴール空港からパリの中心地へ向かう電車に乗り1時間ちょっとした場所に位置する。
時間で言えばセントレアから中京に行くぐらい、関空から阪神行くより遠い。
他の競馬場は中山ぐらいしか行ったことが無いんだ、土地勘無くてすまない。
パリの中心地からエトワール凱旋門へ向かった先、ブローニュの森という森林公園の中にあり、園内には美術館やテニス場も有する。
広大な土地の一部が競馬場になっている形だ。
レース映像を見ると分かるが、トラックの内側に駐車場がある光景は今でも違和感を覚える。
市街地の中にはあるが公園の中は自然そのものであり、競馬場も言ってしまえば”草原に柵を置いただけ”みたいなもの、もちろん芝生などの手入れは行われているが。
イギリスやフランスのように歴史の長い競馬場は、日本やサウジ、UAEのような競馬場と違い、土地を開いて競馬場を作っていないのである。
そのため水はけも日本のように良くなく、芝も水を含みやすいため荒れやすい。
芝ももちろん洋芝で、日本で洋芝が敷かれているのは札幌と函館の2つのみ。
そんな凱旋門賞のコース形態だが、芝2,400m右回りワンターンのコース。
競馬場の形からして日本には無い複雑な形状をしているが、欧州の競馬場はだいたいこんな感じでしっかりと楕円の形になっていることのほうが少ない。
むしろロンシャンは日本のコースに近い方とさえ言えるかもしれない。
スタートは2コーナー近くの引き込み線のような所、そこから本線を超えるまでで400mほど。
外周コースに入っても直線は続き、コーナーまで実に1,000mもある。
日本の競馬場で直線が1,000mもあるのは新潟だけだからこの時点で異質だが、それに加えて外周コースからコーナーまで高さ10mの上り坂があるのだ。
日本の競馬場で一番高低差があるのは中山だがそれでも5.3m、これの2倍はあるのだから日本の馬からしてみたら未知の代物だ。
調べてみたが、高さ10mはビルの3階から4階に相当するらしい。
中京の芝には入ったことがあるが、ゴール前の坂の始めから見たゴール板前が目の高さにあったのだから10mは見上げるような高さだ。
そして坂を上ったのなら、当然下ることになる。
コーナーを回っている間は下り坂になり、この500mの間に10mを下る。
外周が丸々山になっているようなコースだ、京都も外回りはそんな感じだがそれでも4m、とても比じゃない。
コーナーを回り坂を下ると、本線に合流するところで一度直線に入る。
「フォルスストレート」と呼ばれる部分だ。
騎手はもちろんコースが頭に入っているが馬はそうはいかない。
ほとんどの競走馬は「コーナーを曲がって直線を向いたらゴール」という勝負をして、そう教えられているわけで、ここで力んでしまう馬も多いことから「偽りの直線」なんて風に呼ばれている。
現に日本のコースでも直線を2周するようなコースだと直線で掛かってしまう馬がいるのだとか。
個人的に印象に残っているのは2005年菊花賞のディープインパクトだ。
向正面からスタートする京都の3,000mではスタンド前を2周するわけだが、1周目スタンド前で武豊が目に見えて体重を後ろにかけている。
強い馬であっても、特に幼い頃は、直線を向くと掛かってしまうわけだ。
少し話がそれた。
ここを超えてついに最後の直線、距離にして約530m。
おおよそ東京の直線525mと同じ距離だ。
冒頭を含めてここまでで2000文字を超えてやっと最後の直線だ、なんてこったい。
そしてこの最後の直線だが凱旋門賞が行われる日にはオープンストレッチが採用されており、直線の途中で内ラチ側が広くなるようになっている。
これにより直線で前が詰まることが少なくなる一方、内枠有利が強くなる。
この直線は平坦なため最後に地力が問われる勝負になる。
ペースは日本のレースと比べれば超スローになる。
前述したとおり、求められる要素が違うのだから比較すること自体あまり意味がないのだが。
日本ダービーのレコードがドウデュース2:21.9、ジャパンカップがアーモンドアイの2:20.6に対し、凱旋門賞のレコードはデインドリームの2:24.49と2秒も差がある上に、そもそも季節柄道悪になりやすいため2:30を超えることがざらにある。
直近10年の凱旋門賞で一番遅いタイムが2:39.30だ。
道中に坂があり、フォルスストレートで掛かってしまえば最後直線で保たないのだから騎手もみんな慎重そのものだろう。
実際、凱旋門賞は過去10年で見ると"先行"と"差し"で決まっていて、"逃げ"、"追込"の極端なレース運びは難しいことが伺える。
とまあここまでつらつらと書いてきたが要約すると
・スタート直線1,000mに10mの上り坂
・コーナーで10mの下り坂
・2段階に曲がる最終直線
・道悪になりやすい馬場
と困難しか無いわけだ。
文字通り「適正」を問われるレースになる。
ここからはProject L'Arcで実際に克服していく課題に照らし合わせて書いていきたい。
凱旋門賞に向けて克服していく課題は全部で9つ
「海外の食事」、「言葉の壁」、「アウェー感」、「極度の緊張」
「慣れない芝」、「未知のコース」、「時差ボケ」、「長距離移動」
そして「ジンクス」の9つだ、あえて順番は並び替えた。
というのもウマ娘には「騎手」という概念が存在しないからだ。
前4つは騎手が強く感じるであろうもの、後ろ4つはより馬が感じるであろうものとしてみた。
馬は繊細な生き物だから、もしかしたら普段とは異なる雰囲気から緊張をするのかもしれない。
いかんせん馬を育てる立場ではないため、俺では判断ができない。
食事なんかは普段口にする飼葉とは変わるのかもしれないな。
牝馬なんかは特にそうだと聞くが、馬もなかなか好き嫌いの多い生き物らしい。
食べさせるものも調教師が考えて用意しているのに、思うように食べてくれなくて苦労するなんてのはよくある話。
「慣れない芝」、「未知のコース」に関しては言うまでもないだろう。
洋芝のコースは日本において主流ではなく、1ターンで2,400mなんてのは日本には無い。
あっても新潟の外回りだが、それでも2,000mだ。
それに高低差10mの坂ときた。
日本には無い要素が組み合わさったレースであるということは、これまでに解説したとおり。
道中で負荷が掛かるにも関わらず最後の直線でよーいどんをするわけだから、相当タフなレースだ。
コース相性というのは実に奥が深いもので、同じ距離でもコーナーや起伏が異なると得手不得手が生まれるもの。
「この競馬場が得意だ」、という〇〇巧者が出てくるほどにはレースを左右する。
ウマ娘に出てるキャラだとライスシャワーは淀でG1を3勝しているし、ウオッカも2歳の頃に阪神でG1を1つ勝っているが本格化してからの6勝は府中での勝利だ。
次に「時差ボケ」と「長距離移動」に関してだが、どちらにしても「輸送」という話になってくる。
馬が繊細な生き物だという話はしたが、馬によっては輸送トラックまでの移動ですら苦にし、輸送後の食事もままならないということがある。
中には移動に関しては図太く、輸送後も飼葉をモリモリ食べるキーファーズの馬もいるらしいが、特殊な部類だろう。
そしてこの輸送の問題は特に海外に限った話ではない。
日本でも各レース場までは短くとも輸送をするわけであり。
関東関西の移動ならまだしも、美浦でも栗東でも関わりなく札幌函館へは長距離の輸送になる。
直近であった話だと今年2023年6月25日の宝塚記念に出走する3週間も前にイクイノックスが美浦から栗東に入り調教を始めたということがあった。
この時期、美浦の坂路が工事期間に入ったからというのもあるだろうが、もともと繊細な馬でかつ今まで関東の競馬場しか走っていないということで早めの移動になったのだとか。
人間でさえ長距離の移動は慣れない人もいるのだから、馬にとってはレースどころじゃない深刻なものよな。
日本のウマが勝つためには凱旋門に向けたトレーニング、もとい改造が必要なわけだ。
なかなか振り切ったシナリオだよな、Make a newtrackに似て史実に寄らないストーリー展開をしている。
ストーリーをプレイした方もいるとは思うが、このシナリオにおいてはダービーすら通過点なんだから。
なんてこったい。
世代の頂点を目指して、世界の頂点を目指す。
去年のダービーを思い出させるよな。
それでもやっぱり届かなかったんだから果ての栄光だよ。
そんなシナリオで相対するのはヴェニュスパークというフランスのウマ娘。
おそらくというかほぼ確実にモチーフはトレヴだろうな。
トレヴという馬は凱旋門賞を2013年と2014年に連覇をした牝馬だ。
凱旋門賞連覇ってやべぇなって感じるが既に7頭が連覇、1頭が2勝をしているし、騎手も10人が連覇している。
そしてなにより親子で制覇することも多く、6頭の親から生まれた7頭の子が制覇している。
これだけ特化した適性が必要なためか、日本ダービーのように「ダービー馬はダービー馬から」じゃないが
「凱旋門賞馬は凱旋門賞馬から」なのかもしれないな。
そしてそんなトレブだが、親はモンジュー、ウマ娘のアニメ1期にも出てきているので知っている方も多いのではないだろうか。
このモンジューだが実はクラシックの凱旋門賞を勝つことができるとシニアの連覇をかけた凱旋門賞で相手として立ちふさがる。
正直かなり強い。
初見の時も油断せずスキルもしっかり取っていたので、負けはしなかったがかなり焦った。
実はこのモンジューという馬、日本にもジャパンカップで来日したこと以外にもほんとちょっとした縁がある。
モンジューの産駒にエプソムダービーを制したMotivatorという馬がいるのだが、これの娘のメーヴェとスキアがそれぞれタイトルホルダーとソールオリエンスの母である。
血統というのは難しくも面白いものだ。
さて、ここまでつらつらと書いてきたが5000文字超えてしまった。
そんな凱旋門賞だが2023年は10月1日に行われる。
俺個人としては日本馬の凱旋門賞の出走はしっかり応援したいと思っている。
適正の話をした通り、難しい挑戦なのは馬主が百も承知だろう。
挑戦無くして勝利無し、だ。
俺は競馬は「夢が走る」ものだと思っているよ。
日本が栄光を掴むその瞬間、ゴール板の先頭を走った馬とその鞍上は誰なんだろうな。
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