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【#にじ甲2023 振り返り】最多奪三振 アンジュ・カトリーナ (静岡県代表王立ヘルエスタ高校)

あの男の復帰とともに突如として開催が発表された #にじ甲2024 。新作発売前日にはドラフトが行われ、すでに育成期間は始まっています(監督経験者たちが栄冠攻略について話し合っているのなんか良い)。
各監督の育成配信が待ちきれないので去年の大会の振り返りとして、活躍した選手をデータともに振り返りたいと思います。初回は大会最多となる33個の三振を奪い、最多奪三振のタイトルを獲得した王立ヘルエスタ高校のアンジュ・カトリーナ投手です。

23年大会は投手が豊作で各校の先発を見るとにじさんじ高校の葛葉投手、まめねこ工科の笹木投手など奪三振の特能を持つ投手が多い中、奪三振を持っていないアンジュ投手がタイトルを獲ったことはポジティブな驚きをもたらしました。 #春のVtuber甲子園 で同じく奪三振がないにも拘わらず三振を量産したしぐれうい投手と何か共通点があるのではないかと思いデータをまとめてみました。

予想と実際

【事前予想】
シンカー、ドロップカーブとの緩急によりストレートを速く見せることで、速球で空振りを奪うことができた

【実際には】
速球(通常ストレート+全力ストレート)を結果球として16個の三振(うち見逃し8個)を奪った。
投球全体の空振り率(Whiff%*)は43.0%と高いが、球種別では速球のWhiff%は34.2%で高いとは言えない。

【ではなぜここまで三振を奪えたのか?】
決め球としてシンカーが優秀だった」と言うことができると思います(質問の答えになっていませんが)。
投球割合は36.2%と最も投げているのがシンカーで被打率は.229、44.8%と高いWhiff%を記録しています。

【ストレートで三振を奪えた理由は?】
アンジュ投手のデータだけからはわかりませんでした。見逃し三振を8個も取れたのはコントロールの良さもあったと思います。今後他の選手のデータもまとめて見たいと思います。

 - 【確認できたこと】

  • 2s以降ドロップカーブの割合が減る、速球は増える
     - > 決め球に選ばれやすい球種や変化方向があるのではないか

  • シンカーは右バッターには投げにくい


ステータス

バッテリーと二塁手が強いという王ヘル(静岡県代表)の伝統
変化球中心

投球成績

指標について

(セイバーメトリクスの指標はこちらのサイトを参考に)

  • 失点率 = 失点 ÷ 投球回 × 9 
    -> 自責点で計算するのが防御率、自責点の判断が難しいため失点率を採用

  • BABIP = (被安打 - 被本塁打) ÷ (打者 - 与四死球 - 奪三振 - 被本塁打)
    -> 本塁打を除くインプレーになった打球が安打になった割合。投手からするとHR以外の打球がヒットになるかどうかは運という考えに基づく。運の上振れ下振れそして守備に助けられたかを見るために採用。

  • ゴロ : フライ = ゴロによるアウト : (ライナー + フライアウト)

  • WHIFF% = 空振り ÷ スイング
    -> 打者がバットを振ったけど空振りしてしまった割合、極論バットに当てさせなければ運要素を減らせるので重要な指標。

  • SWSTR% = 空振り ÷ 投球 
    -> Whiff%と似ているがこちらは分母に投球数が来る

  • K% = 奪三振 ÷ 打者 
    -> 対戦打席のうち三振を奪った割合。投手が自分の力でアウトを取る能力を測る。

  • BB% = 与死球 ÷ 打者

  • K-BB% = K% - BB%
    -> 1打席あたり四球に比べて奪三振が何パーセントポイント多いか。奪三振と与四球は投手の能力・責任という考えによる。

  • K/9 = 奪三振 ÷ 投球回 × 9
    -> 9イニングあたりの奪った三振の数。BB/9、HR/9も同様の求め方。

投球割合と空振り率、被打率

全体ではシンカーを多投(36.2%)、速球の割合は35.0%

[グラフ1] 球種別の投球割合

棒グラフ左から投球全体、初球のみ、2s以降のみ
色の薄い方から通常スト、全力スト、ドロップカーブ、Hシュート、シンカー

シンカーはカウント球にも決め球にも使っているが、ドロップカーブは初球の入りとして選ばれることが多い。速球(通常ストと全力ストレート)の割合が2s以降多いことも注目したい。

考察】 カウント別に選択されやすい球種が存在するのではないか
春のVtuber甲子園2024のしぐれうい投手は全投球の32.8%が変化量7のカーブだったが、2s以降は1割にも満たない。
アンジュ投手の場合は変化量6のシンカーも決め球に多く投げているが、カーブは少なく速球の割合が半分を占めていて少し似たものを感じさせます。

球種別指標

[表1] 球種別指標

投球の軸となる変化球はどれも空振り率が驚くほど高いです。なかでも投球割合の高いシンカーのWhiff% (空振り ÷ スイング) そして被打率が優秀。ドロップカーブのWhiff%はより高いので決め球として使えていたらどうなっていたのか気になります。

速球は通常・全力ストレート合わせて16個の三振を奪えていますが、被打率が高いのが少し気になります。通常ストレートは長打を一本しか許していないので、「重い球」の効果と言えるかもしれません。三振は奪えているのに空振り率はそこまで高くないという不思議なストレートです。

右バッターを苦手にしている理由

打席の左右で見ると対右打者の被打率が高くなっています。これは右バッターにはシンカーを投げないことが原因だと考えます。

[グラフ2] 球種別投球数と打席の左右

被打率の低いシンカーを右バッターには33球しか投げていませんが、左打者には120球投じています。理由まではわかりませんが、シンカーで1つも三振を奪えていないことと .428 (7-3) という被打率から、右打者には生命線のシンカーが有効ではないため、ピッチングの幅が狭まり被打率が高くなったのではと考えます。

(まとめ)

データを集計する前は「緩急でストレートを速く見せて三振を奪える投手」という見立てで、Vtuber高校のしぐれうい投手とスタイルが似ているのではと考えていました。実際には速球の空振り率はそれほど高くなく、ストレートの被打率もやや高めですが、決め球はストレート一択だったしぐれうい投手とは異なりシンカーでも多くの三振を奪えていました。
本戦で下振れたBABIP次第で成績も改善すると思われますし、三振を奪える投手の雛形としてとても参考になる投手だと思いました。

次回はまめねこ工科の笹木咲投手、変化量7のシュートについてまとめて見たいと思います。

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