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電柱の景色に愛を見る

※以前書いていたブログから、残したい記事を順次移動していきます。

2006.03.01

どうしてこんな世界に生まれてきちゃったんだろう、とたまに思う。
街を歩けばみんな我先に人を蹴散らし、怒鳴り散らし、
不機嫌を振りまいているばっかりだ。

鬱を経験してから、あんまり人と関わりたくなくなった。
家族と、ほんのひとにぎりの親しい友達。
その小さな世界を、幸せで、仲良くできれるよう、
それだけで私はもう精一杯だ。

今度生まれてきたら、チベットの僧になりたいなどと思ったことがある。
祈りに人生を捧げ、自分がそうすることを他人が応援し、認めてくれる。
そして真摯に祈りの人生を全うできるなら、どんなにいいだろうと。
けれど次の瞬間、私はこの混沌とした世界の中でも、
祈り続けられる強さが欲しくて、
こんな状況に生まれてきたのではないかと気がついて、愕然とする。
そうだった。
静かに、俗世間と離れた僧院で、祈ることだけが祈りではなかったのだ。

家族においしいご飯をつくること。
住んでいる場所をこぎれいに保つこと。
限られた金額でやりくりしながら生活していくこと。
いやなことや辛いこと、うまくいかないことがつづいても、
あきらめないで生きていくこと。

そういうことのすべてが祈りになる。
だれかのせいにしたり、依存したり、悪口をいったり、こびたり、
言葉の裏を読んだり、自分をよく見せようと画策したり、
そんなことをしないですむように。

笑おう。
歌おう。
それが私の祈りだから。

娘が描いた電柱の絵を、部屋に飾った。
乱立する電柱の絵なのに、見ていると涙が出てくる。
こんな不調和の景色の中にさえ、彼女は陽の光のあたたかさを感じ取る。
ああ、そうだね。
この世は美しいことばかりではないかもしれないけれど、
だからといって愛を失ってしまったわけでもないのだよね。 

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娘の絵🖼は音楽と出会って星の音になりました🌟

『HoShiTABi recollections』
nanakusabue

▼trailer
https://youtu.be/UcYNPa7T_xM

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