ヴァーチャルで作品に触れられるか?

前述
ヴァーチャルとは現実空間にある事物などを表面的にのみ書き出したもので、それは知能を用いた三次元への儚いレジスタンスに過ぎない。
ヴァーチャルは実存的な点で二次元的虚構空間から抜け出すことはない。


ヴァーチャルで作品に触れられるのか?

ヤンマーアグリジャパンのヴァーチャル展示会、福岡県立ヴァーチャル美術館などが最近の技術革新により生まれ話題となった。
これらはパンデミック対策、会場規模やデータ取得の容易さなどでは圧倒的にヴァーチャルにメリットがあり、ヴァーチャルという空間で新たな顧客層も開拓できることだろう。
しかし大きなデメリットとしてまとめるなら、そこに存在するもの全てが虚構に過ぎないのである。

作品に触れるとは本質的にどういった意味を持つのか?
作品とは空間であり、五感が五感を刺激し合うことで自分を人間と再認識させる。その空間こそが作品本来の価値なのである。
作品との対峙とは人間との対峙と同じ意味を持つのだ。
つまり作品とは私たちが生きている空間、人間が存在する空間にのみ存在するものであり、現実の虚構形態であるヴァーチャルという空間では作品は単なる二次元的事物として処理されるのである。
海外の写真を見て旅行気分になれる人間などいるだろうか?
ヴァーチャル展示会・美術館とはGoogle検索のUIを平面的から立体的へとガワを交換したものに過ぎず、本質的に作品に触れることはできない。

しかし最近の現実はあまりにもヴァーチャル的だ。
娯楽の効率化、会話の簡略化、人間の思考や性概念を記号化などのムーブメントなどが病的に蔓延している。
そのような記号的社会構造が進行していくのであれば、作品は全て一つのヴァーチャル美術館に過去のモニュメントとして展示されていることだろう。

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