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#エレ彼 『幸せの味』

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微睡みの朝。

甘い匂いで目が覚めた。

これはなんだろう。

お砂糖みたいに甘いけど、ケーキやお菓子とは多分違う。

寝ぼけ眼をこすり、その香りにつられるようにして、寝室から出た。

もうすっかり日がのぼって、リビングは外からの日の光で眩しい。

時計の針はブランチの時間を指していて、ぎょっとした。

ああ、やってしまった。


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「ぐっすり寝ていたね」

キッチンでにこにこ笑みを浮かべた彼は起きてきた寝癖の私を笑う。

「ごめん、寝坊した」

週末。

残業明けの土曜日。

完全に油断した。

共働きの二人の日々の食事は当番制。

今朝の朝食当番は私だった。


「はい、ここ座ってて。今日は俺に任せて」

「でも……」

ダイニングテーブルまで連れていかれ、椅子を引かれる。

まるで子供のように有無を言わさず座らされた。

「僕の可愛くて優しい君に、たまには甘えてもらわないと」

待っていればテーブルにコーヒーと、

そして、フレンチトーストが並べられる。

甘い匂いの正体がわかって、ぐぅとお腹が鳴った。

「ありがとう」

「うん。さぁ、一緒に食べよっか」

一口サイズに切ったフレンチトーストを口に運ぶ。

何気ない休日の朝の幸せの味がした。


『幸せの味』 文@Puchan31031 SS@Linefys

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