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実家で開発した百人一首を使ったゲーム「ネオ坊主めくり」を紹介したい。

実家って不思議だ。

幼いころは何とも思わなかった実家という世界(ワールド)に奇妙な面白さがあることに、おそらく大人になって気づく人も多いだろう。

例えば、実家でしか使われない用語などがその代表である。
私の実家、鳩村家では「車のカギ」を「キー」とわざわざ英語で言い、「食べ物でむせる」ことを「横道(よこみち)に入る」と表現する。なお、この「横道(よこみち)に入る」という表現を10人程の知人に確認したところ、「聞いたこともない」「おかしい」「速水もこみちみたい」というコメントをもらったので、きっと特殊な実家用語なのだろうと結論付けた。

こうした実家の面白み、他にもあるのではないか?
そこで思いだしたのが、実家で開発された「実家ゲーム」である。

突然だが、私には3つ違いの姉がいる。
姉とは昔からよくトランプなどを使って「実家ゲーム」を開発してきた。
近年、百人一首かるたを使った新しいゲームを開発し、かなり盛り上がったので紹介したい。

ゲーム開発の経緯~坊主めくりじゃ物足りない~

そもそも、百人一首かるたとは、鎌倉時代初期に選ばれた和歌をかるたにしたものである。詳しくはウィキペディアを見てほしいが、読み札(絵札)と取り札(文字札)にわかれ、歌の上の句が詠まれたら、それに続く下の句を探して札を取る。当たり前だが、歌を覚えていないとお話にならないゲームであり、小さい子どもにはちょっと難しい。

そこで、「坊主めくり」という遊び方がある。ルールは至極シンプルで、絵札を積んだ山札から一人ひとり札をめくっていき、手元に札を集める。札数が多い人が勝ちだ。

絵札に描かれた歌人には姫や殿、天皇、坊主(僧侶)がいて、天皇や殿だとそのまま引いた札を手札にできるが、坊主が出たら手札を全部場に捨てなければならない。姫をひけば、捨てられた札をもらうことが出来る。坊主への恨みが募る遊びだ。

坊主

実家で和歌を覚えている人など当然のごとく1人もいなかったので、正月にはこの坊主めくり大会がよく実行されていた。しかし、年齢を重ねるにつれ、物足りなさを感じてきた。完全運任せかつシンプルなゲームなので、「ダレる」のである。そこで、この坊主めくりに新しいルールを加えたのが事の始まりだった。ネオ坊主めくり、誕生である。

加えたルールは以下の6つ。

①お気に入りの殿、「推し殿」を探せ!

②崇徳院(すとくいん)の呪い

③革命!紫式部と清少納言、そして赤染衛門(あかぞめえもん)

④後鳥羽上皇の島流し

⑤小野小町~絶世の美女の誘惑~

⑥坊主が7人、レインボーズ

果たして、何を言っているんだ?と思われると思うが、1つ1つ説明したい。

ルール①お気に入りの殿、「推し殿」を探せ!

数ある歌人の殿の中から、「推し殿」をあらかじめ決めておく。もし、山札からその「推し殿」が出た場合、続けて札を引くことができる嬉しいルールである。

ちなみに、私の推し殿は紀貫之。理由は歴史の授業で名前を知っていたから。

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山札の中から「自分だけのお気に入りの殿」が出てくる瞬間は、少しドキッとする。好きな芸能人をテレビで見かけた時と似ているかもしれない。

ルール②崇徳院の呪い

歴史上の人物なのだから、歴史的なエッセンスをいれたらいいのではないか?!という思い付きから追加されたルール。

崇徳院は、死後怨霊になったといわれる。1123年に第75代天皇になったにもかかわらず、腹違いの弟に天皇の座を奪われ、人生の後半は都から追われ、現在の香川県である讃岐国に配流され、無念のまま最期を迎えた可哀そうな人物である。

崇徳院

効果としては、崇徳院を山札から引いてしまった場合、手札の一番上に天皇がある場合、一回お休みになってしまうのだ・・・。

はっきり言って、シリアスな人生展開の割には効果がしょぼい気もするが、山札から崇徳院が出てきた時の緊迫感はかなりのものである。

ルール③革命!紫式部と清少納言、そして赤染衛門

紫式部と清少納言はご存じだろう。源氏物語の著者と、「春はあけぼの~」を書いた人だ。しかし、同じ平安時代中期、同じく才女と呼ばれた赤染衛門という女性がいたのはあまり知られていないのではないか。私も調べるまでは知らなかった。

三人

3人は宮仕えをする中でお互いライバル意識があったようだ。赤染衛門はとても上品な女性で紫式部からも一目置かれていたとか何とか。

しかし、紫式部と清少納言は現在でもよく知られているが、赤染衛門はややマイナー。彼女の心象も穏やかではないだろう。

効果としては、紫式部と清少納言が手札に二人揃うと、その時に手札が一番多い人と少ない人同士で手札を交換するのである!つまり革命が起きる。二人が揃うとなぜ革命が起きるのかは置いておいて、もし、手札に赤染衛門がいた場合、その革命をはねかえす革命返しが出来るのである!!!

時を超えた才女たちの闘いである。

この辺で、「何の話?グリードアイランドに影響されたのかな?」と思われたかもしれませんが、そうではありません。
もう少しお付き合いください。
ルール④と⑤はシンプルなので、ぐっと読み進められるはず。

ルール④後鳥羽上皇の島流し

これも、歴史上のエッセンスシリーズである。これはとてもシンプル。
1221年、承久の乱で敗戦した後鳥羽上皇は今の島根県隠岐の島に流刑されてしまう。それになぞらえて、効果としては後鳥羽上皇をひいた人の手札が、後鳥羽上皇の恨みのパワーで全て流れて行ってしまう。せっかく集めた手札が後鳥羽だけで台無しである。

後鳥羽院

しかし、もし手札に「坊主」がいた場合、その効果は無効となる。
坊主が仏の教えを説いて、後鳥羽上皇の恨みのパワーを浄化させるからだ。この辺りは、史実とは全く関係のない、完全なる創作だが何となく人生を考えさせられるくだりではないだろうか。

ルール⑤小野小町~絶世の美女の誘惑~

これも、タイトル通りですね。絶世の美女と呼ばれた小野小町を山札からひくと、みんなの手札の一番上に殿がいた場合、すべてかっさらうことが出来る。他の姫たちの目線が気になるところではあるが、小野小町をひく快感はなかなかのものである。

色々なルールがある中、たまにはこうした覚えやすいルールを仕込んでおくのもゲームバランスを保つ上で大事なポイントだろう。

さて、いよいよ次で最後のルールである。

ルール⑥坊主が7人、レインボーズ

ここにきて、いきなりキャッチーさを狙うなと思われているだろうが、どうか聞いてもらいたい。そういうわけではない。

坊主がでたら、手札をすべて捨て場に捨てるのだが、その時、札束の一番上は坊主である。

だから、3人連続で坊主が出た場合、捨て場には坊主が3人並ぶことになる。坊主が連続で7人出た場合、捨て場には坊主が7人並ぶのだが、これが、「レインボーズ」発動条件である。

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効果として、7人目の坊主をめくった人は、捨てられていた札束から好きな札束を取ることが出来るのでウハウハである。

よく考えてもらいたいのだが、この坊主めくりにおいて、坊主は悪役である。しかし、その悪役が7人揃ったときに奇跡を起こすのだ。坊主が一気に主役に転じる瞬間をつくることができる、ネオ坊主めくりの山場をつくるルールなのだ。だから、決して「坊主7人いたら、レインボー、レインボーズ」と言いたいだけではないのだ。

ちなみに、百人一首に坊主は13人いる。そのうちの7人が一気に揃う可能性など、ないに等しいと思われるだろう。捨て場の山札は、姫をめくった人がどんどんもらっていくので、そもそも捨て場に札が滞留することはあまりない。

しかし、我が家では過去に一度だけ、場に坊主が7人揃ったことがある。

その瞬間、鳩村家は沸いた。

坊主が7人揃う奇跡への感動だけでなく、自分たちが勝手に作ったルールが機能した、という喜びも混ざっていた。ゲーム開発者は自分のつくったゲームでみんなが一喜一憂しているのを見てこんな気持ちでいるのだろうか。


これでネオ坊主めくりのルール説明は完了である。本当はもっとルールがあるのだが、混み入っているのでこの6つを基本としてもらいたい。

あなたの実家で、ぜひ独自ルールを追加してもらいたいと思う。

最後に、鳩村家の2016年度版のネオ坊主めくりの結果と、お気に入りの殿のメモを添えておく。これは、現実世界で開催されたゲームの話である。

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