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ヴィクトリアマイル・レース展望

このレースで問われる能力・要素・傾向
道中の速いペースに対応する追走力(展開次第)
直線でのトップスピード
やや内枠有利
やや差し有利

このレースはその年によってレースの傾向が変わる特殊なレースです。ラップ面からは大まかに3パターンに分類することができます。

・高速馬場×緩みのないペース
→道中のペースが速くなるため追走力が求められる。中盤でペースが緩まないと差し追込馬が前との差を縮めにくく、逃げ先行有利になりやすい。追走力が求められることから1600m以下での実績を持つ子が走りやすい。

・高速馬場×前半が速いor中盤で緩むペース
→中盤でペースが緩むことで、差し追込馬は脚を溜めることができ前との差も縮めやすくなるため中距離実績馬が好走しやすくなる。直線で一気に加速する瞬発力やトップスピードが強く求められ、差し有利になりやすい。また、前半が速すぎても逃げ先行馬は余力がなくなるため差し有利になる。

雨が降り時計のかかる馬場
→雨の影響で時計がかかると、スピードが出にくくなるため追走力が求められなくなる。高速馬場と比べてタフなレースになることから、1600mよりも長い距離をこなせるタイプや差し有利になる。


ヴィクトリアマイルはBコース替わりの週に行われるため馬場が高速化しやすいのも特徴です。
それでは過去5年のレースラップを確認してみましょう。

-2022年-(カッコ内はコーナー通過順位)
12.5-10.8-11.4-11.6-11.7-11.1-11.3-11.8
前半3F34.7-後半3F34.2(後傾0.5秒)
前半4F46.3-後半4F45.9(後傾0.4秒)
勝ちタイム:1.32.2(良) ややスローペース
1着ソダシ(4-4)
2着ファインルージュ(6-6)
3着レシステンシア(2-2)
4着ローザノワール(1-1)
5着ソングライン(9-8)

→中盤でペースが緩みスローペースになったため、レースラップ自体は差し追込が届くレースでした。しかし、スローペースにも関わらず馬群が縦長になったことで、後方勢は上がり3F32秒台を出した子が複数いるにも関わらず物理的に差すことが困難となり、逃げ先行勢が恵まれた展開となったレースでした。
特に4着のローザノワールは18人気と最低人気での好走であり、差し馬のソングラインは2人気5着、デアリングタクトは5人気6着と人気を裏切る結果となっています。しかし、ソングラインは次走安田記念を勝利、デアリングタクトは次走宝塚記念3着と好走しており、差し馬がいかに展開に恵まれていなかったかがわかるレースでした。


-2021年-
11.9-10.8-11.6-11.7-11.6-11.2-10.9-11.3
前半3F34.3-後半3F33.4(後傾0.9秒)
前半4F46.0-後半4F45.0(後傾1.0秒)
勝ちタイム1.31.0:(良) スローペース
1着グランアレグリア(9-10)
2着ランブリングアレー(11-10)
3着マジックキャッスル(9-7)
4着ディアンドル(5-4)
5着シゲルピンクダイヤ(5-4)

→中盤でペースが緩みスローペースとなったため、末脚が発揮しやすく差し有利な展開となったレースでした。
勝利したグランアレグリアは2着に4馬身差をつけており、ここでは能力が違いを見せての勝利でしたが、2〜5着馬はいずれも中距離レースで実績があった子でした。
2人気6着と人気を背負って敗れたレシステンシアはマイル以下の実績しかなく、マイルで好走した阪神JFや桜花賞、NHKマイルCはどれもペースが速く上がりのかかったレースでした。中盤でペースが緩んで速い末脚が求められたチューリップ賞では今回同様人気を裏切る結果となっており、直線での速い末脚を求められてキレ負けしてしまう典型的なパターンでした。


-2020年-
12.0-10.9-11.3-11.4-11.1-11.2-11.1-11.6
前半3F34.2-後半3F33.9(後傾0.3秒)
前半4F45.6-後半4F45.0(後傾0.6秒)
勝ちタイム:1.30.6(良) ややスロー〜平均ペース
1着アーモンドアイ(4-4)
2着サウンドキアラ(3-3)
3着ノームコア(7-6)
4着トロワゼトワル(1-1)
5着ダノンファンタジー(6-6)

→前半から後半までラップの緩急が少ない流れとなり、中盤の緩みがなかったことで追走力が求められる先行有利な展開となりました。
勝利したアーモンドアイは2着に4馬身差をつけており能力の違いを見せて圧勝していますが、2着のサウンドキアラと5着のダノンファンタジーは1400mの重賞レースを勝利した実績持ち。4着のトロワゼトワルも1400mでの実績があり、上位馬は1600mより短い距離で活躍していました。3着のノームコアは1400m実績がありませんが、前年のヴィクトリアマイルをレコード勝ちするスピードに加え、後に香港Cを制するなど牡馬混合GIでも勝ち負けできる能力を持っていました。
3人気7着と人気を背負って敗れたラヴズオンリーユーも牡馬混合GIで勝ち負けできる能力を持っていましたが、こちらはオークスを制するなどアーモンドアイやノームコアと比較するとマイル戦でのスピードに欠けた中距離向きの子。中盤でペースの緩みがなかったことにより苦しいレースを強いられてしまいました。


-2019年-
12.3-10.6-10.8-11.1-11.3-11.2-11.5-11.7
前半3F33.7-後半3F34.4(前傾0.7秒)
前半4F44.8-後半4F45.7(前傾0.9秒)
勝ちタイム:1.30.5(良) ややハイペース
1着ノームコア(7-7)
2着プリモシーン(10-10)
3着クロコスミア(5-5)
4着ラッキーライラック(5-5)
5着アエロリット(1-1)

→前半で10.6-10.8と連続で10秒台を刻んでおり、前半が速くなりすぎて差し有利となったレース。
また、このレースは逃げたアエロリットが後続を離して逃げていたため、2番手以下は実質中盤で緩んだペースを刻んでおり、これも差し有利な展開となった要因です。
勝利したノームコアはここまで中距離路線を歩んで来た子で、11人気3着と人気薄で好走したクロコスミアも中距離路線で実績を残してきた子でした。
また、5着のアエロリットは厳しいペースの逃げで敗れてしまいましたが、次走の安田記念では前半3F34.5と楽な入りで逃げることができ、牡馬相手に2着と好走しています。このことからも、ヴィクトリアマイルでは前半の負荷が大きかったことがわかります。
(余談ですが、ノームコアは2020年のヴィクトリアマイルでも好走。異なる流れのレースに対応しており、能力の高さが伺えます)


-2018年-
12.4-11.3-11.5-11.6-11.5-11.1-11.2-11.7
前半3F35.2-後半3F34.0(後傾1.2秒)
前半4F46.8-後半4F45.5(後傾1.3秒)
勝ちタイム:1.32.3(稍重) スローペース
1着ジュールポレール(8-8)
2着リスグラシュー(13-13)
3着レッドアヴァンセ(4-4)
4着アエロリット(2-2)
5着ミスパンテール(9-8)

→この年は雨のなかレースが行われ稍重馬場での開催。
ペースが緩んでスローペースとなり、雨の影響で近年より時計がかかったため差し有利な展開中距離寄りの適性が求められたレースとなりました。
1着のジュールポレール、2着のリスグラシューは差しての好走で、1〜3着馬はいずれも1600mより長い距離での勝利経験がありました。


過去5年のレースを振り返ると、展開や馬場状態によって求められる適性が変化していることがわかります。
当日の天気予報や馬場コンディション、メンバーを見てどんな展開になるのかをイメージして予想したいレースです。



ほか、このレースのポイントとして挙げられるのが内枠有利・差し有利である点です。
(データは2018〜2022年の過去5年)

1〜4枠
【4-1-4-30/39】
勝率10.3% 連対率12.8% 複勝率23.1%
単勝回収率91 複勝回収率88

5〜8枠
【1-4-1-43/49】
勝率2.0% 連対率10.2% 複勝率12.2%
単勝回収率2 複勝回収率25


4角5番手以内
【2-1-3-21/27】
勝率7.4% 連対率11.1% 複勝率22.2%
単勝回収率26 複勝回収率71

4角6番手以下
【3-4-2-52/61】
勝率4.9% 連対率11.5% 複勝率14.8%
単勝回収率49 複勝回収率45

4角6番手以下〜12番手以内
【3-3-2-29/37】
勝率8.1% 連対率16.2% 複勝率21.6%
単勝回収率81 複勝回収率70


東京芝はヴィクトリアマイルが開催される週にBコース替わりとなります。その影響で馬場が高速化しやすく、内有利になることが多いため内枠の好走が目立つレースとなっています。
また、後ろすぎない差し馬の好走が目立つのも特徴です。東京コースは最後の直線が長く、直線でのトップスピードが求められます。そのため末脚に秀でた子は能力を発揮しやすく、差しも決まるレースです。とはいえ後ろすぎるポジションから差すのは難しく、4角13番手以下のポジションから好走したのは2018年1人気2着のリスグラシューのみとなっています。ある程度ポジションが取れて速い上がりを使える子、を意識しましょう。

ただし、繰り返しになりますがこのレースは展開や馬場状態によって求められる適性が変化するのが特徴です。
当日の馬場コンディションやメンバー、枠順も見てどのポジションにいる子が恵まれるのかを考えたいレースです。



-ヴィクトリアマイル・注目データ-

データはなぜそうなるのか?と根拠を考え、理論的に捉えることが大切となります。根拠のないデータは偶然偏っただけかもしれない数字となり、根拠に基づいたデータは再現性の高いものとなるからです。
今回ヴィクトリアマイルで注目したいデータはこちらです。
(データは2018〜2022年の過去5年)

前走国内GIで5番人気以内+1600mのGIで3着以内の実績あり
【3-0-1-3/7】
勝率42.9% 連対率42.9% 複勝率57.1%
単勝回収率120 複勝回収率115

上記に加え前走が1600m以上のレース
【3-0-0-0/3】
勝率100.0% 連対率100.0% 複勝率100.0%
単勝回収率280 複勝回収率150


東京芝1600mは最後の直線が長く、直線の末脚が求められることから実力馬が力を発揮しやすい舞台でもあります。そのため、前走GIで上位人気に推されていた実力馬は信頼度の高いレースとなっています。

また、中距離GIレースはレベルの高いものが多く、マイル実績がありながら中距離路線で上位人気に推されていた子はより信頼性が高まります。2021年は前走大阪杯で2人気に推されていたグランアレグリアが勝利、2020年は前走有馬記念で1人気に推されていたアーモンドアイが勝利しています。
中距離路線、特に牡馬相手に戦ってきた子は能力で抜けていることも多く要注目です。

しかし、いくらGIで上位争いに加われる実力があっても1600mに対応する力は必要不可欠です。前走GIで5人気以内に推されながらも、過去に1600mのGIで好走経験がなかった子は、2022年にアカイイトが12人気8着、レイパパレが1人気12着、2020年にラヴズオンリーユーが3人気7着と、牡馬相手にGIを勝利している子でも好走できていません。

今年1人気が予想されるスターズオンアースは桜花賞を勝利しており、前走は大阪杯で1人気と両方の条件に該当。
不利を受けなければ馬券内に好走する可能性は高いとみており、人気でも逆らわず評価したいと考えている一頭です。



いつもボクの記事を読んでくださりありがとうございます! これからも根拠のある記事、面白い記事を作成していけるよう努力します!