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【LAD】山本由伸を獲得!


皆さんご存じの通り、ドジャースが山本由伸を12年$325Mの大型契約で獲得しました。今回はこの動きが与える影響について書いていこうと思います。

契約概要

ドジャースとの契約内容は以下の通りです。

12年(2024~35) $325M 平均年俸$27.1M
契約金$50M
オリックスへのポスティング料金 $50.625M
6年目, 8年目終了後の2回オプトアウト権あり
年俸は契約年数経過と共に上昇
Defferal(後払い)なし

契約総額ではNYYのジャンカルロ・スタントン、TEXのコーリー・シーガーと同額で、史上9位
"純粋な"投手としての契約総額ではNYYのゲリット・コールを抑えて1位となっています。
ポスティング料金を含めたドジャースの合計負担額は$375.625Mで、ムーキー・ベッツの$365Mを抑えて、チーム内2位です。
(というかチームの契約1位,2位を日本人が独占しているという。。。)

大谷翔平の契約で名物になった"後払い"はないようですが、契約の後半における年俸が高くなっているようです。オプトアウトが6,8年目後にあるようですが、これを行使する場合、高い年俸を捨てることになるため、普通のオプトアウト条項よりは行使しずらいかもしれません。
(その点フリードマンは抜かりない)

また、契約のうち$50Mを契約金として受け取ることで、高いとされるカリフォルニア州の税と連邦税を一部回避し、山本は$7.2M程度節税することができるようです。


ところで…
山本由伸の獲得候補として最後まで残っていたのがドジャース、ヤンキース、メッツですが、どうやらドジャースは他2球団に比べて
1年あたりの年俸や、オプトアウトの時期、年俸の各年配分などの面で劣っていたようです。
山本がドジャースを気に入ってくれたみたいですね。
詳しくは以下の記事を参照ください。


課題の先発補強

大谷翔平の獲得という最大の目標を達成したドジャースに残っていたオフの宿題は先発投手陣の補強でした。
シーズン終了後の2024ドジャース予想先発ローテーションと成績予測が以下の通りです。比較対象として2023年のフィリーズのローテーションを置いてあります。

ドジャースの育成力を考慮しても、この5人でコンテンダーとして戦っていくのは難しい、と言うより無理です。
また、近年勝てていないプレーオフを想定すると、手術明けのビューラーにGame 1, 2年目のミラーにGame 2を投げさせることになり、2023NLDSの二の舞になりかねない状況でした。

タンパベイレイズからトレードでタイラー・グラスナウの獲得に成功しましたが、同時にローテーション4番目候補であったライアン・ペピオを出してしまったことで、投手の最大出力のアップグレードには成功したものの、先発の頭数は依然不足していました。
ドジャースとしてはローテーションの1,2番手を強力にしたいという目論見がありました。
そういう意味でも山本由伸は獲得候補No.1でした。
獲得後のドジャース予想ローテーションが以下の通りです。
コンテンダーか!?というローテーションがプレーオフでも十分戦っていける形になりました。

MLB未経験に$300M?

山本がポスティングされた直後から契約総額の予想が膨れ上がっていきましたが、目立ったのが、
「MLBで1球も投げたことのない人に実績十分のコールを上回る契約を渡すのはどうなのか?」
という意見です。もちろん当然の心配事だと思います。自分も思いました。
確かにMLB未経験に総額$375Mは明らかなリスクです。最悪、全く通用しない可能性だってあるわけです。日本人投手はアマチュア時代のワークロードがアメリカより遥かに多いことから、怪我の心配もあります。
しかし、各球団のスカウト部門や編成部門はリスクをとってでも山本由伸は十分なリターンを望めると踏んだうえで、大型契約をオファーしているわけです。それはなぜか?
The Athleticのケン・ローゼンタールがYoutube/PodcastのFoul Territoryで興味深い発言をしています。
「近年の技術を用いれば、球がどのような働きをするのを知ることができる。これがチームに自信を与えている。」

FanGraphsの山本由伸個人ページには各球種の評価が掲載されています。

スライダー、カッター以外はどれも満点ですね。
山本由伸の球種にはどのような特徴があるのか。
FanGraphsが満点評価を与えるフォーシーム、カーブ、スプリットはMLBレベルで考えると、どんなものなのか。

フォーシーム

山本由伸のフォーシーム
・平均95mph
・リリース高 5.4 ft
・垂直方向(IVB) 17 inch
・水平方向 11 inch 
・エクステンション 6.2 ft 
・stuff+ 121
山本のフォーシームはグローブ側に動きながらも、優秀なノビ(重力に逆らい落ちない)を持っています。MLBの分析家の中ではブルージェイズのケビン・ゴーズマンのフォーシームに比べる声が多いようです。
stuff+121というのもブレーク・スネルに匹敵する値です。

スプリット

日本人投手の球種で最も注目されるのがスプリットですね。昨年も千賀滉大が"お化けフォーク"を駆使して多くの空振りを奪っていました。
平均球速 89mph
落差(inches of drop) 35 inch
stuff+ 155
落差という点では千賀のフォークには劣りますが、山本のスプリットの強みはその球速にあります。平均球速89mphという球速帯でこれほどの落差を持つスプリットはMLBに存在しません
つまりそれほどユニークな球種であるわけです。
stuff+155もきわめて優秀です。2023シーズンの先発投手でスプリットでこの値を記録した投手は存在しません。

同じような球種としては大谷翔平のスプリットが挙げられます。

カーブ

山本由伸の決め球として有名なのはこちらでしょうか。

平均球速 77mph
平均落差 65 inch
stuff+ 122
山本のカーブはスプリットと同様に、球速と落差を両立させているところにあるようです。山本のカーブのような球速で落差を持つカーブはMLBに存在しません。
現役選手ではブレーブスのマックス・フリードのカーブに似ています。

以上のことをまとめれば山本由伸は
・ゴーズマンのフォーシーム
・大谷翔平のスプリット
・フリードのカーブ
・カッター、スライダー、シンカー

を持った投手であるわけです。
また、コマンドも高く評価されています。

このエースポテンシャルを持った投手が25歳という若さでFA市場に出てくることはまずありません。
メジャーのFA取得の最低年数は6年ですから単純計算で19歳からフル稼働する必要があるわけです。NPBではさほど珍しい事ではありませんが、マイナーの階層が厚いMLBでは非常に起こりにくい事です。
ゆえにMLB未経験という不安材料はあれど、データは山本の持つもの(stuff)が良いことを証明している。そして25歳という若さから今後の成長が見込める。この点から山本には$300Mという高額契約が提示されたわけです。

山本由伸に求めること

12年$325Mという契約は単純計算で年俸$27.08Mとなるわけですが、
FanGraphsによると、1.0WARを稼ぐのにチームは平均で約$8.5Mを使っているようです。この計算に則れば、山本由伸はWAR3.1以上を稼げれば平均だ
ということになります。
参考までに今季同様のWARを稼いだ選手を挙げておきます。
マイルズ・マイコラス WAR 3.1
W-L: 9-13, ERA: 4.78, IP: 201.1, FIP:4.27
ローガン・ギルバート WAR3.2
W-L: 13-7, ERA: 3.73, IP: 190.2, FIP:3.85
フレディー・ペラルタ WAR 3.0
W-L: 12-10, ERA:3.86 , IP: 165.2, FIP:3.85

メジャー1年目の山本がマイコラスのように200イニング以上投げることは不可能なので、ペラルタが参考になると思います。これを踏まえて、山本には
イニング数140~170,防御率3点台 
を最低限として頑張ってほしいです。
ちなみに千賀滉大は166イニングを防御率2.98でメジャー1年目を終えました。(もっと上でもいいんやで)

ちょっとした不安

ちなみにドジャースは山本由伸と契約したことで、チームのペイロールに$300M以上の契約をベッツ、大谷、山本と3人抱えたことになります。
また、その3人とも今後少なくとも9年は契約を保証しています。
また$100M以上の契約は上記3人とグラスナウ、フリーマンを含めた5人です。Cots Baseball Contractの算出によればドジャースの今季の贅沢税対象ペイロールは$288Mですが、そのうちこの5人で54%を占めています。

これまで大型契約を極力回避し、ペイロールの柔軟性を強みにロースターの競争力を確保してきた編成本部長のフリードマンが、逆にここまで凝り固まったペイロールをこの先コントロールできるのか。この5人のうち誰かが不良債権となってしまったときに効果的な手を打てるのか。この点が少し心配です。
(不良債権とならずにみんな一生全盛期やってください。)

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山本由伸分析参考記事

データ参照元

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