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クリスタ3Dデッサン人形の弊害

 近年のデジタル作画では3Dデッサン人形を使うのがもはや当たり前の手段になっています。
 
 少し自分語りをすると、私は絵を描き始めて5年そこそこ、かつ一貫してCLIP STUDIOを利用したデジタル派です。つまり、絵師として生まれたときから、3Dデッサン人形を使い倒して育ってきました。
 実際、3Dデッサン人形は非常に強力だし、様々な場面でとても有用だと思います。
 しかしながら、少なくともクリスタ内蔵のものでは、3Dデッサン人形は頼りすぎない方がいいという事も強く感じます。「頼りすぎない」というのは、具体的には、以下の通りです。

(1) 3Dデッサン人形のトレス(線抽出)をそのまま、あるいは変形加工して素体に使わない方がいい
(2) そもそもトレスに頼らずにキャラを描けない段階で、3Dデッサン人形を参考にしない方がいい


(1)3Dデッサン人形のトレス(線抽出)をそのまま、あるいは変形加工して素体に使わない方がいい

 3Dモデルとキャラクターの素体は、あらゆる点で異なっています。一番わかりやすいのは、ひじ関節でしょう。

 このようなポーズでは、だいたいのキャラクター作画では骨と肉のふくらみを意識して肘をとがらせるのが定石です。(実際の人体はずっと複雑です)
 しかし、3Dでは再現できません。

 もう一つわかりやすいのは、二次元キャラに向けて体型調整したとき、肩の接続が不自然になることです。

 上の画像では萌え系の二次キャラを想定して、肩幅を狭くしています。また、腕も細く調整しています。しかしながら、どうしても肩と胴の接続にスキマが生じますし、胴に対して腕が太すぎます。

 これ以外にも、手の指、手首、顔の造形などが、キャラクター表現とかけ離れたものになりがちです。

 以上より、3Dデッサン人形のトレス(線抽出)をそのまま、あるいは変形加工して素体に使うと、不自然になるのでやめた方がいいです。

(2) そもそもトレスに頼らずにキャラを描けない段階で、3Dデッサン人形を参考にしない方がいい

 これまで述べたように、3Dデッサン人形はキャラクターとかけ離れた部分が多々あります。なので、そういった部分を矯正したり、大まかなアタリとして使ったりするのが有効です。

 しかしながら、それが可能なのは、トレスに頼らず、資料を見ながらキャラクターを描ける能力が前提だと思います。

 やや飛躍しているように聞こえるかもしれませんが、ちゃんと理由があります。
 そもそも、キャラと比べて、不自然な場所をどうして気付くことができるのでしょうか?
 それは結局、キャラを描いているからだと思います。
 描く過程でキャラ特有の描き方を学び、ひいてはキャラクターと3Dの違いを見分ける観察力を得るからです。

 「観察力」というのは、目の力のように思えますが、実際は資料を視て描くことによって養われます。単純化して言うと、見たものをそのままキャンバスに描き写すことです。視覚情報と描くものを同期させる力が、観察眼に繋がるのです。じっと目で見つめるだけでは身に付きません。

 トレスでは駄目です。トレスは正解をなぞっているだけで、正解に辿り着く力は養われません。勉強に例えて言うと、問題集の答えをそのままノートに書いているようなものです。

 つまり、そもそもトレスなしでキャラを描ける段階にないと、

 3D人形を参考にする
⇒どう参考にすればいいのかわからないのでとりあえずトレス
⇒観察力が育たない
⇒3Dとキャラの違いがわからない
⇒不自然さに気付かない
⇒よし次もトレスでいいか
⇒最初に戻る

のループから抜け出せないのです。

 よって、そもそもトレスに頼らずにキャラを描けない段階で、3Dデッサン人形を参考にしない方が良いです。


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