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「映画大好きポンポさん」をこれから観るひとへ

現在絶賛上映中の映画「映画大好きポンポさん」を観てきました。
来場者特典の書下ろしコミック欲しさで二回観てきました。何気に人生初。

ポンポさん自体は、一番最初にピクシブで公開されたマンガ作品の頃から知っていて、コミックスも最新の三巻まで読んでいた。
(スピンオフのフランちゃんとカーナちゃんとオムニバスをまだ読めてないので、近々読みたい)
ポンポさんを初めて読んだのは、前に勤めていた会社の食堂で、お昼休みにご飯食べながらツイッター見てたら流れてきたのがきっかけでした。タイトルと、扉絵でポンポさんが子供特有の明るく元気に「ポンポさんが映画を撮るよー」とはしゃいでるのがかわいくて「午後の労働のテンション維持にいいかもな」などという軽い気持ちで読んだ結果、大勢の人がいる前でボロボロ泣いて気が付いたら昼休憩とっくに過ぎてて社員にめっちゃ怒られた←
それほどに、ポンポさんは発表当時から素晴らしい完成度と面白さを両立させた傑作マンガとして高く評価していた。

……なので、正直この劇場版「映画大好きポンポさん」は期待値も高かった分、同じかそれ以上に、かなり心配もしていた。

ピクシブやツイッターなどのSNSで話題に上がり人気になって「書籍化します!」と発表されると、ファンとしては喜ばしい反面、なんだか寂しい気もする。近い感情としては「インディーズの頃から聴いてたバンドのメジャーデビューが決まった」「深夜に放送してて面白かった番組がゴールデン枠に移っちゃった」などが挙げられるだろうか。それが如何に自分勝手なモノであるかは百も承知として。

実を言うと、コミックスの方で「ポンポさんの続編がある」と知った時が一番不安だった。
というのも、ポンポさんは元々ピクシブで最初に公開された分(=コミックス1巻分)で「きれいに終わっている作品」なので、その続編には多大なる不安を感じざるを得なかった。

すべてがそうとは言わないが、売れた作品の次回作は「前作を越えられない」傾向にある。

その理由は様々であるが、個人的には「続編は、前作の功績を見て『ある程度売れる確証が有る』と判断されたうえでゴーサインが出る」という面が強いからではないかと考えている。
乱暴な言い方をすれば、どんなに雑に作っても初動は約束されている、という意識が、無自覚にどこかで発生していることが原因だと思っている。そしては古参のファンは前作こそ至高として崇め、拗らせると老害な懐古厨と化してしまう……まぁ、実際のポンポさん2は自分のそんな不安を真正面から叩き潰してくれたのだけど(笑)

そういうわけで、劇場版ポンポさんについても多大なる期待と不安を胸に映画館まで足を運んでみました。
結果、「期待をはるかに超えて大満足」した一方で、「一抹の新たな不安」も覚えました。
一周目に見た際のこの感情を自分の中である程度精査して結論付けたうえで二周目を観て、いろいろと確信したのでこの記事を書くに至りました。そうです、ここまでが前置きです←
というわけで、以下は劇場版ポンポさんこれから見た人をタイプ別に、そして映画から原作に入る人への注意喚起も兼ねた「心構え」について書いたものです。極力ネタバレがないように書いたつもりですが、心配な方は自身の該当する項目以外は読まないことをオススメします。

「原作を知らずに劇場版を見る人へ」

おめでとうございます、あなたは「一番幸福な観客」です。
「何も前情報のない真っ新な状態」という、作品を鑑賞するうえで最高のコンディションのまま、どうぞ是非ともエンドロールまでポンポさんをお楽しみください。



「劇場版を見て、原作に興味が出た人へ」

いらっしゃいませ、貴方は「ある意味で一番不幸な観客」です。
原作を読む前に、一ファンである(しかない)私から、畏れながらも注意事項を述べさせていただきます。

いますぐ劇場版の内容をすべて忘れてください。

……おそらくですが、今の貴方は劇場版を観て感動し、その興奮冷めやらぬうちに原作コミックを楽しもうとしているかと思います。
しかし、そこに大きな落とし穴があります。

貴方が劇場版で感動したところの大部分は「劇場版追加要素」なのです。

これ以上はネタバレになり多くは言えませんので、各々で察してもらうか、それでも構わない方は次の項目に理由の一端を書いてますので、ご一読ください。



「原作を知ったうえで劇場版を見る人へ」


いますぐ原作の内容をすべて忘れてください。

……というのも、結論から言うと、劇場版は「原作1巻をベースにしたリメイク作品」なんです。
原作至上主義で「原作をほぼそのまま映像化したもの」を求めている方は、いますぐその想いを捨ててください。
そんなフィルターをかけて観たが最後、原作を知ってしまっているが故の強烈な違和感に心が支配され、「映画としてはめちゃくちゃ良かったのに、なんか知らんけどモヤモヤする」という感想に行き着きがちになってしまいます。
自分も最初に観たときは、モヤモヤまではいかずとも、妙に無視できない違和感を覚えていました。帰宅後すぐに原作コミックを読み返し、その正体に気付きました。

原作に比べて、ジーン君がものすごくマイルドに描かれている。

なんというか、劇場版ポンポさんに出てくるジーン君には、狂気が足りないような気がする。
原作での、映画に対する狂信的とも思える、ナニかに取り憑かれたような表情の描写は抑えられ、ただただモノづくりの高揚感に酔っている陰キャな映画オタク少年の顔に納められている。たぶん劇場版のジーン君は、最初にポンポさんに見せたマックスストーム2をそのまま公開出来るタイプだと思うし、もはや原作と劇場版は「並行世界のよく似た別人」と考えた方がしっくりくる気さえしてくる。

これに気付いた時にピンときたのだが、劇場版ポンポさんは「自信の無い少年の成長物語」なのではないだろうか。

物語作りにおいて、ポンポさんは2巻で「最初に決めるのは『舞台と感情』」だと話す。
この詳細については是非とも読んでほしいので省略するが、劇場版ポンポさんは「制作現場×選ぶ勇気」というテーマを軸にしつつ、「ペーターゼンフィルムが『映画大好きポンポさん』を撮ったらどうなるか」というスタンスで改めて作った映画であると考えたことで、私の違和感はすべて払拭された。そういう意味での「リメイク作品」なのだと思う。

つまり、劇場版ポンポさんは「劇場版用に改めて作った作品」なのだ。だから大衆向けに尖った部分をわかりやすく少しマイルドに、そして原作ファンにも新しい体験を提供するために要素を追加している。
リメイク作品が出る時の常として、原作至上主義な者は追加要素について「余計なことをするな!」と反発したくなるものだが、冷静になって考えてみてほしい。

ポンポさんが、つまんない映画を世に出すはずがないではないか。

自分は1周目を観たあとに上記の考え全てに至ってから2周目に臨んだのだが、最初から最後まで、その一切の非の打ちどころの無さに、改めて感動してしまったくらいだった。
なので、同じこと繰り返して申し訳ないが、劇場版ポンポさんを鑑賞する際は、是非とも原作の内容をすべて忘れてください。
そうすることで、この作品の真の面白さに気付けると思います故。

以上が、劇場版「映画大好きポンポさん」を2回観たファンが思う、この作品を鑑賞するうえでの「心構え」です。
本文が少しでも、これからポンポさんに触れる方たちの参考に、そしてお役に立てれば幸いです。
ポンポさんはイイゾー!

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