『映画秘宝』1月26日発表「ご説明」文書の投稿経緯について

秋山直斗

 『映画秘宝』元・編集部員の秋山直斗と申します。
 2021年2月19日をもって『映画秘宝』編集部から、業務委託の契約を打ち切られましたので、現状は一切関わりを持っていません。

 私は2021年1月26日朝8時00分発表の<「映画秘宝」編集長・岩田によるダイレクトメッセージによる恫喝に関するご説明>(以下、「ご説明」と表記)の作成に深く関わりました。その事実関係をここに説明させていただきます。
 その理由は、まず第一に、被害者様が「ご説明」文書発表の過程に関して感じておられる不透明さを晴らすためです。
 また、本件に関して事実に基づかない様々な憶測が飛び交っていることです。
 以上2点を鑑みて、その解決を願い、すでに部外者の身ではありますが、「ご説明」文書を公開にいたった理由、その経緯に関しまして、私のみが知りうる事実が多くあることから、本文書を公開することにいたしました。

 本件の内容に関しまして、「雑誌『映画秘宝』編集部」、「合同会社オフィス秘宝」、「株式会社双葉社」は一切関知しておりません。

1.岩田前編集長への聞き取り

 「ご説明」文書作成経緯を詳述する前段として、2021年1月25日に私が『映画秘宝』の事件を知ってからの状況をまとめます。

 まず私自身は、1月25日の午前に「映画秘宝公式ツイッター」から恫喝的ダイレクトメッセージが送信されていることを、ツイッターのリツイートにて知りました。その時点で、これがほぼ間違いなく当時の編集長・岩田和明氏によって送付されたものだと推定しておりました。

 25日12時ごろに「オフィス秘宝」共同代表社員である田野辺尚人氏から、岩田氏へ聞き取りを行ったとの連絡を受けました。岩田氏は第三者による不正アクセスで送付されたものであると説明していて、田野辺氏自身もその説明に納得しており、その旨で謝罪報告を行う、とのことでした。

 田野辺氏は、岩田氏との信頼関係もあり、上記説明を信用していました。しかし私としては依然聞き取りの内容に納得できませんでした。私だけでなく、多くの方が疑念を抱くであろう上記「謝罪報告」を行えば、『映画秘宝』に重大な打撃を与えるという危機感を持ち、岩田・田野辺両人に、事実をしっかり追求してほしい旨を伝えました。しかし、業務委託とはいえ立場上彼らは上司であり、年齢もかなり離れていることもあって、強く岩田氏の関与を問いただすことができませんでした。
 
 午後1時ごろ、私の意見は受け入れられないまま、以下の「謝罪文」をツイッターで発表すると連絡を受けます。

①【お詫び】このたびの件で大変お騒がせいたしましたことを、お詫び申し上げます。本誌公式アカウントより、フォロワーの方に問題のあるDMが送信されたという事実を本日把握し、編集部内にて事実関係の確認を取りました。編集部員、及び外部投稿委託者が当該DMを送信した事実は、確認できませんでした。
②DM履歴も当アカウント側に残っておらず、不正アクセスにより第三者がDMを送信、スレッドごとDMを削除したことが考えられます。改めてセキュリティを見直し、再発防止に努めます。公式管理人として、DMが送信された皆様にご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。 映画秘宝編集長・岩田和明」

 編集部メンバー3名(岡本氏・奈良氏・ギンティ小林氏)へも、早急な事実究明を行うよう岩田氏を説得してほしいと連絡をしましたが、当時のやり取りからは強く協力してくれる方がいなかったように感じました。とはいえ、彼らにとっても、岩田氏は上司であるため、私と同じように強く聞き出すことは難しかったことは想像できます。

 本来であれば編集部の不始末は内部でかたをつけるべきであるものの、以上のような事情から、虚偽の含まれる事情説明を食い止め、岩田氏から真実を引き出すために、岩田氏とも対等な立場で意見できる執筆者の柳下毅一郎氏、高橋ヨシキ氏に、私は聞き取りを依頼しました。

 15時すぎより電話にて柳下氏、高橋氏による岩田氏への聞き取りが始まりました(私はスピーカーフォン越しに、内容を聞いていました)。
 当初岩田氏は、同氏以外にも「映画秘宝公式ツイッター」にログイン可能だったことを理由に、自身が送ったものではないと釈明を続けていました。しかし、ログインパスワードを知っていたのは岩田氏以外に2名しかおらず、両人とも当該DMのきっかけとなったラジオ出演とは無関係で送付する動機がないことを示したところ、岩田氏は18時ごろ、本人がDMを送ったことを認めました。

 その後18時20分、柳下氏・高橋氏による聞き取りの末、岩田氏自身がDM送付を認めたと、私は編集部の方にメールで知らせました。

2.岩田氏が被害者様と直接の連絡を取っていた事実を知った経緯

 18時ごろに岩田氏がDM送付を認めた段階で、本人名義による謝罪文を公開することを約束し、ついては草稿を書き次第、柳下氏または高橋氏に送付する段取りとなっていました。

 しばらく岩田氏からの連絡は途絶えますが、まず20時26分に「DMを受け取ったご本人と連絡が取れたため、同意いただいたうえでUPする話になり、時間がかかっております」との連絡が高橋氏宛に送られてきます。本来は、すぐさま「連絡が取れた」とはどういう事なのかを、問うべきでしたが当時は勝手な想像で、第三者が間に入っていると解釈しており、よもや被害者様に直接の電話・DMで連絡を取り、度重なる校正が行われているとは考えておりませんでした。

 岩田氏からの連絡は再び途切れ、21時23分に高橋氏宛に、岩田氏による「謝罪文」の初稿が送られてきます。こちらは「映画秘宝公式ツイッター」から、21時21分に被害者様にダイレクトメッセージで送付されたものと同文面となっておりました。21時23分に送られてきた初稿へは、21時27分に高橋氏が修正要望をまとめ、岩田氏宛に送信しています。

 その後、修正がなかなか送られて来ず、催促すると「当事者様と、お話中です。」との返信が22時17分に岩田氏より送られてきました。ここで、岩田氏が被害者様へ直接連絡を行っている事実を把握しました。高橋氏は直後22時17分に、被害者様への直接連絡はやめるべき、という旨を岩田氏へ送信し忠告を行いました。

 被害者様が「岩田から直接連絡が来ていた」とツイートされているのを認知したのも、当時のメッセージのやりとりを振り返ると、同じく22時17分ごろでした。以降、岩田氏からの連絡はないまま、22時43分に、岩田氏による「謝罪文」が公開されるに至りました。

 いま振り返って考えると、20時26分の岩田氏から高橋氏への返信の内容を、より深く検討すれば、被害者様への直接連絡という被害を最小限に食い止めることが可能だったかもしれません。その立場にありながら、できなかったことを反省しております。同時に、このような事態になっても岩田氏を管理下に置くことができなかったことに、当時の編集部員として痛切に責任を感じております。

3.「ご説明」文書、起案の経緯

 上記の経緯で、22時43分に岩田氏名義の謝罪文が公開されました。しかし、岩田氏本人が被害者様に直接連絡を取るなどの不適切な行為によって、これが謝罪文としての意味をなさないものとなったと私は考えました。また、岩田氏から被害者様へ直接連絡が行った責任の一端は、彼の動向を管理できなかった『映画秘宝』編集部および「オフィス秘宝」にも所在すると思っております。それゆえに、編集部名義あるいは「オフィス秘宝」の名義で、あらためて謝罪を行う必要があると考えました。

 23時ごろから柳下氏、高橋氏と共にオンライン会議を行い、上記の考えを伝えました。なお、18時ごろに状況確認のため高橋氏に連絡をしてきていた、てらさわホーク氏も会議に加わっています。3氏ともに、謝罪の必要を認識しており、私は実現のために実務を担うことになりました。
 
 23時09分に、編集部メンバー4名(田野辺氏・岡本氏・奈良氏・ギンティ小林氏)に対し、「新たな謝罪文」作成の必要性をメールにて伝えました。早急には対応しないでおこうといった内容の返信があり、これは私の主観的意見にすぎないものの、主体的に事態収拾に乗り出す意思が感じられませんでした。

 私はいずれにしても、現状までの報告書が何らかの形で必要であると考え、高橋氏、柳下氏による岩田氏への聞き取り調査の内容と、岩田氏による謝罪文が発表された経緯をまとめる形で文書の作成を始めました。これが1月26日8時00分発表の「ご説明」文書の雛形となります。これをもとに、高橋氏、柳下氏、てらさわ氏とともに大枠の謝罪文を作成し、改めて編集部に公開を提案する準備を始めました。

4.柳下氏、町山氏が「ご説明」文書に連名する経緯

 26日0時ごろ、柳下氏が、創刊編集長の立場からの意見を求めるため町山智浩氏をオンライン会議へ招きました。町山氏も「ご説明」文書の作成に同意し、内容についての議論に加わりました。追って1時ごろ、田野辺氏から私宛に着電があったことから、同氏にも会議に参加してもらいました。文書公開の必要性に関しては田野辺氏も納得されたものの、謝罪を行う主体の問題について指摘されました。その時点では、いまだ岩田氏が「オフィス秘宝」の代表社員であり、役職のうえでは田野辺氏が岩田氏の部下にあたるため、田野辺氏の一存では「オフィス秘宝」、雑誌『映画秘宝』を代表して声明を出すことはできないとのことでした。

 つまり、岩田氏の起こした問題を、「合同会社オフィス秘宝」及び『映画秘宝』編集部が責任を持って対処する必要があったものの、その時点では問題を引き起こした岩田氏自身が両者の最高の立場にあったため、公式な謝罪を行うことが困難な状況でした。

 しかし、岩田氏による事件の経緯の説明並びに、被害者様への謝罪は急を要する事案と考え、そこで当座の責任者を立てることで、「ご説明」文書を公開しようと会議で自然発生的に提案がなされました。そこで柳下氏、町山氏を文書の責任者とすることになりました。「合同会社」には法制上「出資者」は存在しないものの、柳下・町山両氏は「オフィス秘宝」設立のための融資を行っており、また、実務的にも多くの支援を行っていたことから、非公式な役職ではありますが「相談役」という肩書きで文書に名を連ねることとなりました。

 また田野辺氏に関しては「オフィス秘宝」を代表する立場ではなく、「オフィス秘宝」に所属する一個人として署名するということで決定します。

 以上のように、文書の署名に関する意思決定がなされました。いち早く本件を対処する責任者は誰かを明確にしたいという意図で署名がなされたものの、被害者様がツイッターで述べられている通り、柳下氏、町山氏という影響力の大きい方の個人名を出すことに、配慮を行うべきだったと反省しております。

5.「ご説明」文書、公開までの経緯

 以上の内容を踏まえ、「ご説明」文書の初稿が1時40分ごろに完成しました。「編集部一同」の署名を加えるために、編集部メンバー4名(田野辺氏・岡本氏・奈良氏・ギンティ小林氏)に宛てて、同文書を公開したい旨のメールを送付しました。奈良氏を除く3名から、すぐに細かな修正要望の返答が返ってきました。

<補記:「編集部一同」とは誰のことか>
 『映画秘宝』編集部の市川力夫氏が自身のツイッターアカウントで、「『ご説明(ママ)』制作過程も内容も何も知らされず蚊帳の外。発表後に知りました。なので「編集部一同」と署名がありますが、誰を指しているのかわかりません。」との投稿で、「ご説明」文書の投稿に関する経緯と署名に関して、問題点を指摘しております。
 私から、市川氏及び、小沢氏に文章を送らなかったのは事実です。
 しかし、意図的に「蚊帳の外」にしていた事実はありません。毎月行われる編集会議に参加するメンバーではなかったため、送付先から漏れてしまったものの、ここまで上記の経緯のとおり私は25日日中から編集部メンバー4名(田野辺氏・岡本氏・奈良氏・ギンティ小林氏)と、何通にも及んでメールのやり取りを行っており、宛先が足りないようであれば、いつでも指摘可能な状態でした。
 いずれにしても送付されなかった責任の一切は私にあり、市川氏がツイッターに投稿されている「偉い方々から見ると、僕は編集部の一員ではない」というような、他のどなたかが意図的に送らないようにしたという事実はありません。
<補記:終>

 
 奈良氏には、私から0時ごろから電話をかけており、2時前後に折り返しの電話を受けたため、ちょうどいいタイミングでしたのでオンライン会議に参加してもらう流れとなりました。

 オンライン会議上で、奈良氏からも「ご説明」文書の内容と、これを出す趣旨に関しては同意を得られたと考えております。そのうえで、柳下氏、町山氏、高橋氏、てらさわ氏と、奈良氏の間で文書の公開の時間について意見が分かれました。4氏は一刻も早く公開すべきという意見で、そのため26日朝8時00分の公開を求めていました。また、田野辺氏も公開時間について同意をしていました。
 一方で奈良氏は、文書を公開する前に、岩田氏と田野辺氏に双葉社へ謝罪に行ってほしい、との意見を持っていました。

 被害者様・読者に対し一刻も早く事態を報告する必要があること、ならびに雑誌『映画秘宝』には組織上も編集権上も双葉社から独立して行動することが可能であること、ならびに(岩田本人ではない)責任の主体をはっきりさせるため、いち早く発表する方向で意見がまとまったのですが、奈良氏はそれに反対だったということです。

 その後、「映画秘宝公式ツイッター」にログインできるのが編集部では奈良氏だけでしたので、投稿をお願いする運びとなりました。3時ごろに予約投稿がなされ、朝8時00分にツイッター上で公開されました。

 いまから思えば、本件で雑誌『映画秘宝』に失望された読者の方々に対して、一早く説明責任を果たしたいという気持ちを、私のみならず、会議参加者全員が強く抱いていたために、結果として「ご説明」文書が拙速なものになってしまったと考えております。

 1月26日8時00分に投稿された、「ご説明」文書は現在(3月15日時点)においてまで、本事案に関する最終の経過報告及び謝罪となってしまっていますが、上記の経緯でも一部触れたように、岩田氏への聞き取り内容をまとめた、暫定的な報告書という意図で作成されたものでした。
 「『映画秘宝』編集部」主導のもと、迅速に被害者様も含むあらゆる関係者に被害実態についての、さらなる聞き取り調査を行い、確定された調査報告及び最終解決に向けた謝罪を発表することが不可欠だということは、田野辺氏、奈良氏を含む会議参加者で確認しておりました。
 
 その後、私は業務委託の契約が打ち切られることになりましたが、それまでの期間において、本件の解決に向けた事実の解明が進めることができなかったことに関して、当時の編集部員として責任を感じております。

おわりに

 長くなりましたが、以上が「ご説明」文書投稿の経緯となります。

 すでに『映画秘宝』編集部の業務から離れた身ですが、岩田氏による不適切行為、および私自身も関わりを持った「ご説明」文書に関する不手際について、深くお詫び申し上げます。

                            2021年3月15日
                               秋山直斗

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