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GWなので短めで好きな漫画を紹介しよう【アメノフル】

なんか書きたい欲が高まったけど、ゲーム系であんまり書きたいことが無いので漫画の記事を書くことにした。

というわけで今回ご紹介するのはアメノフル。

週刊少年ジャンプで連載していた作品で全3巻。

ジャンルを一言で言うと「能力バトルもの」。
能力のモチーフは「お菓子」。

「特定のキャンディを食べると後天的に能力を得る」という方式や、「原則として1人1能力で同一能力者が存在しない」という点は明確に「ONE PIECE」のオマージュだが、端々に「ワールドトリガー」からの影響も強く感じる作風。

惜しくも短期打ち切りになったものの、良い点がいっぱいある良作だったので、今日はあれやこれやと語っていきたい。

だだ滑りでも気にしない。
だって「思いつきで慣れないことをやったら失敗する」ということを、アメノフルは僕達に教えてくれているのだから……(じゃあこの記事を書かないほうが良かったのでは?)



1.アメノフルのセールスポイントって?


まず、個人的にこの作品の一番の長所はなんと言っても、「バトル中の独特な会話のノリ」であり、「それによって各キャラクターが獲得する個性、いわゆるキャラ立ち」に尽きる。

登場人物紹介の画像だと全身像が上手く並ばないので切り抜き

まず、こちらがストーリーを引っ張るメインの3キャラクターとなる。
全体的にキャラクターデザインはやや大人しめで、そこまで際立ったところはないのだが、この独特なセンスに引き込まれると、一気にキャラが魅力的になるのでいくつか紹介していこう

1人目:水瀬ツムギ


主人公。ペロペロキャンディを操る黒髪長髪JK。
正直キャラクターデザインは限りなくシンプル。ただ、内面は意外とややこしいキャラクター性をしており、ツムギがどういうやつなのかを掴めるとアメノフルは面白くなってくる。

ふてぶてしく、タフで、強か。
とりあえず舌戦になったら相手のメンタルを削り始める女。

ツムギと入江が相手の心を痛めつけ始めるとだいたい泣きが入るから用心せいと虎眼師匠も言っていた(なんでメンタル削りガールが主要3人の中に2人もいるんだよ)。


2人目:入江トウカ


登場回での仁王立ちスライドが好きすぎる

おそらくアメノフルで一番印象に残ったキャラを聞いたら10人中9人くらいはこの人を挙げると思う。面白さとカッコ良さを極限までハイブリッドしたポンコツ

序盤は主人公を阻む難敵として、中盤は主人公を導く先達として、終盤は組織の最高戦力として、最初から最後まで存在感があり、キャラクターも一際立っている。
ぶっちゃけ主人公が食われ気味でさえあった。

掛け合いの良さは早くから光っており、序盤戦ではここが好き。
ストーリー的には主人公が入江トウカに冷凍されて殺されるかどうかの死線上にいるのだが、いつでも妙になごやかなのがアメノフルワールド。


3人目:三鳥ミサキ



お菓子使いの取り締まり機関【ルセット】に所属する一般隊員。
良くも悪くも生真面目で、融通が効かない性格。
主人公の水瀬ツムギが取り締まり対象であることに最初に気づくが、その精神性と行動から逮捕、拘束などを控え、敵対組織内の協力者として振る舞う。ワートリで言うところの三雲修である。

まあ、正直地味なんよね
デザインは隊服含め、マフラーとアホ毛ぐらいしか特徴がないので。
特に序盤はどうしても「生真面目だけどクソ弱いやつ」という印象に。

しかし筆者は中盤戦のこの「敵がミサキの秘密を暴こうとする尋問シーン」が本当に好きでね……。


ミサキ、お前は普通に面白えやつだよ……。

ちなみにこの左上で泣いてるやつはミサキをさっきまでボコってて、今まさにクラスメイトの前で尋問しようとしている敵です。

こういう「なんか絶妙にそこじゃないだろって論点であっちとこっちの掛け合いが成立して面白くなっちゃう」という独特のセンスが一番の長所で、これをもっと見たかった……!

そしてこれは割と流れの中で会話する理由があったけど、これ以外にも戦闘中に敵側から「ちょっと待って」ってバトル止めて普通に会話が始まるやつとかもあり、それも面白いんだ。

戦闘中であっても言葉の刃で相手の核心を衝くことでダメージを与えることはバトル漫画では多々あるが、言葉のノコギリによって心の「いたたまれなさ」にじわじわとダメージを与えていく描写を読めるのはアメノフルだけ!


2.能力バトルものとしてはどうなの?


お菓子を能力にして戦うの、だいぶ縛りがキツくない? 
そうお思いの方も多いでしょう。


実際キツいです。

ここは正直、もうちょいベース部分を考えた方が良かったかな……って思う。
お菓子が武器だとどうしてもシリアスになりきれなかったりするし……。


中盤以降はツムギの能力の幅も広がったりするのだが、そもそも最強格の入江がアイスクリーム使いというよりかは冷気使いになっているように、能力が一本槍にならないよう応用していくと、どうしてもなんか「それもうお菓子使いと呼べなくない?」感は否めない


メタ的に作者サイドが気にしてそうなセリフがあったりも……

ただ、それはそれとして、バトルシーンはさっきの掛け合いの面白さ以外にも、決めるところはちゃんとクライマックスも決まるので特に終盤の入江vs敵幹部、ツムギVSラスボスあたりはバトルものとしてもジャンプで戦えるラインに到達していた。

流石にキメのシーンを貼るのはネタバレが過ぎるので、君も購入してたしかみてみろ!

入江先輩の決戦シーンは必読だぞ。


3.その他の目を見張るべき設定とか


アメノフルは最初に少し話した通り、エリートは「特異な1人1能力」で戦い、一般兵は「汎用強化能力」で戦うという形式なのだが、この「汎用強化能力を敵方が持っていない」という形でバトルが進んだのは斬新さを感じた。

作中だと主人公組織であるルセットはひたすら後手を引いてる上に基本的に一般兵は全員お菓子使いにボコボコにされ続けてるんだけど、この1点で数の優勢を保っているので強いのだ。

作中最大のお菓子使い組織が7人だったし、そもそも基本的には最大100人の能力者しかいないはずなので、公的機関と連携が可能で一定レベルの足止めができる人員を大量に動員できるルセットは持久戦なら必勝に近い。

この辺の数の優位性や、汎用強化能力の利点をもっと主軸に組み込めれば、組織戦としての面白さもあったのかもなーと想像は広がる。

誰に汎用強化能力を与えるかはルセットが試験で選抜しているが、「個人差はあれど一般人でも誰でも使える」のは世界構造に与える影響がでかい。

作中では明示されなかったが、おそらくルセット内に「金平糖のお菓子使い」がいて、そいつが「能力アップする金平糖」を量産して配っているのだろうし、もっと連載が続けば量産品ではなく、生産者の争奪戦があったはずなどと空想は広がる。


4.どうして3巻で終わっちゃったんだろう


まず先に言っておくが、週刊少年ジャンプのサバイバルレースってのは、ちょっと面白いくらいじゃ生き残れねえ蠱毒の壺なんだよ! 運も流れもあるし、そんな「こうやれば生き残れますよなんて必勝法」は一つもないんだから、終わる時は終わるんだ。
俺らはメメント・モリの精神でアンケートを入れるしかねえんだ!

で、そんな過酷なサバイバルレースの話は別として、アメノフルは好きだけど、これはちょっとな……ってのは、正直ある

1番でかいのは「主人公である水瀬ツムギのキャラが立つのが遅かった」かな。
前述した通り、アメノフルで読者の印象に一番残ったのはたぶん入江パイセンだと思うんだけど、これはとりもなおさず「主人公の印象が弱い」ことに直結する。

いや、悪いキャラじゃないよ?

作品を全部読み終わると、過去の事件から来る罪悪感と付き合いながら生きていくために人格的に裏表を使いこなしてて、裏の素の部分には世渡り上手だったり狡猾さだったりもある。けど、その裏表を超えた部分で正義感と善性は持ち合わせている。
いいキャラしてる。

ただ、序盤において、この「狡猾さ・強かさ」と「ジャンプ漫画の主人公としての善性」が絶妙に噛み合わないまま進んじゃうんだよ

筆者の場合、この狡猾さ・強かさが善性と噛み合った上で、ツムギがまあ良いやつだな、って伝わってくるのが10話くらいだったんだよね。


〜10話より。顔色ひとつ変えず、ミサキに案件を押し付けるツムギ〜

序盤のツムギは自分の力を隠して逃げることに必死だから、「逃げたほうがいいだろ」という狡猾さと、「戦うべきだ」という善性が衝突して、その狡猾と善性で戦った結果として善性を選んだように見えちゃう。

実際にはもっと攻めの形で噛み合わせることで真価を発揮するタイプで、「嘘泣き、メンタル攻撃、闇討ち上等で悪びれもせず、目的のために手段を選ばないところはあるが目指す目的が善」というキャラになってから良くなってくる。

この人間的成長を描くための序中盤だったというのはあるかもしれないんだけど、いかんせん序盤のチグハグさが「逃げ」と「攻め」に見えてしまった。

あとは……キャラ紹介カットが1話になかったことかな
最初に人物紹介で挙げたミサキと入江先輩みたいに、1話に全身像+顔アップのシーンが無いんだよね。黒髪ロングのJKというめっちゃシンプルデザインなのもあるけど、こういうので結構キャラが印象に残るかどうか違うんだなって、今回読み返して思った。


その次にネックなのは、やっぱりアレかな……一次試験編。そして海野マモル
おそらく読者にマジで名前が覚えられていない。
筆者も読み返して「あー、こんな名前だったな」ってなる。


週刊少年ジャンプはどんなに遅くても8話くらいまでに加速つけてホップステップジャンプまで決めておかないと死ぬ狂瀾怒濤サバイバル空間
なわけだが、

1〜2話:ツムギとミサキ
3〜5話:入江先輩

で初めの一歩はやや厳しかったかもしれないが、ギリギリで加速はかけられたのでまだ間に合う、というところから踏み込んで、

6〜10話:入隊試験編(海野)

ここで盛大にブレーキが掛かってしまった印象

海野も別に全編通してみると悪いキャラではないんだが、アメノフルの「キャラの第一印象が最悪からスタートした後、バトル中の掛け合いでキャラを良い方向に立てる」方式は味方キャラと相性が悪い

敵キャラはもともと第一印象最悪からスタートしても問題ないから、バトル中の掛け合いで面白い感じになると好感度アップになるのに対し、味方キャラは第一印象が最悪だと普通に最悪なので掛け合いで好感度アップさせてプラマイゼロになってしまう。

入江先輩の好感度が高いのも「敵だけどやたら面白い」から始まったところがデカいので、ミサキや海野も半信半疑とかではなくはっきり敵スタートにすべきだったのかもしれない。

あと、「序盤のアメノフルは名前をそんなに呼ばない」というのは、割と重い欠点であった気がする。

作中で名前を呼ぶ機会がそもそも少ない(敵の大半も〇〇のお菓子使いで名前がない)のと、下図みたいな感じで吹き出しの文章の中に入るんだよね……

主役格のツムギとミサキに対しては「そいつの名前だけのフキダシ」を1〜3話にはアホほど入れて欲しい。下図みたいな感じのやつ

逃げ若1話より(https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496699708598)

コンテンツ過多の今の時代、殺意を持って覚えさせないと、読者はキャラ名を覚えられない。

これは前に数えたことあるんだけど、逃げ若は3話までに合計30回くらい「時行」って呼ばれるので、あの松井優征先生でさえ、これぐらい連呼させないと足りないと思ってるはず。

10話以降はこの辺も改善されて名前呼びも増え、通しで読めばメイン3人(ツムギ、ミサキ、入江)はスッと覚えられるんだけど、やはりスタートダッシュの時点で主人公の名前が覚えづらいというのはネックだったかなと。

以上、なんだかんだ言ったけど、マジでこの漫画でしか味わえないバトル中の掛け合いから得られる栄養素はあるし、終始に渡って大活躍する入江先輩が放つキャラクター性、そして終盤の展開は今読んでも全然楽しめるので是非どうぞ。

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