仮面ライダー鎧武見た報告と総論

‪鎧武すごかった。‪途中で無料期間が終わりラスト4話はレンタルすることになったけど結果的にわずかでもお金を払えてよかったくらい面白かった。しかもそのラスト4話全部泣いたし。今年一番泣いたかもしれんし。‬ PSYCHO-PASS的なシステムとの戦いを経て聖杯戦争にシフトしまどかマギカ的決着へと収束していく物語はまさしく虚淵玄の極アームズ大・大・大・大・大将軍!であり、それでいて紛れもなくストレートな「子供向け」シナリオであった。この鮮やかさはちょっと反則だろとすら思う。‬

‪虚淵作品って正直スロースタートでいつも3話どころか7話くらいまではよくわかんねぇな…と思いながら見る感じだけど、ある時点で急にギアがかかりピースがどんどん組み上がっていく展開が悪魔的に上手いし、そうなると、も、もしかして序盤のあの台詞って…!みたいになって結局1話から全部面白いよね。インベスはもしかしたら元人間か?ってとこまでは何となく予想できたけど、始まりの女=未来の舞ちゃんって、わかる!?こんなのもう2周目は絶対1話から泣くじゃん。
しかも、え!まだ終わらないの!?ってなるポイントが3回くらいあったぞ。ユグドラシル解体までの展開もすごかったけどそれからが凄まじかった。世界の危機をなんとかした後に個人の物語の決着が待っているのはサイコパス一期を彷彿とするけど、僕らはこれがめちゃくちゃ熱いことをしっているじゃないすか…。

‪そしてキャラの動かし方がめちゃくちゃ上手じゃん。全員主役じゃん。虚淵玄の群像劇うま男っぷりが惜しみなく発揮されちゃってたじゃん。推しはプロフェッサー戦極凌馬様だけど一番最高だったのはカイトくんですね、あの狂犬っぷり…‬
ぶっちゃけ、虚淵さん毎回似たようなテーマ書くし登場人物も割とパターン化されているんだけど、似たような設定の似たような人達が物語ごとに違う結末に辿り着くのは普通にめちゃすごい(例えばまどかとこうたさんは似て非なる結末を選んでいると思う)。
それでなんか、気付いたら全員大好きになっちゃうんだよな。

‪虚淵作品って、世界の仕組みがそもそも絶対クソだけど、世界そのものに勝つ事はできないからそんなクソ世界で自分自身がどう納得して生きていくかを見つけようよっていうところに着地していくじゃないですか。それは紛れもなく妥協なんだけど妥協を希望と呼んでくれるのがめちゃくちゃ有難いんだよな。だって現実では殆どの事に対して私たちは妥協するしかないから。‬生きることって妥協の積み重ねだもんね。自分が何にどれだけ妥協したかが価値観とか信念という言葉で呼ばれているだけだと思う。
‪だからこうたさんが自分のために戦うって言い切ったくだりがめちゃくちゃに泣けるんだわ。人生は自分自身との決着をつけるための長い長い戦いであり、しかもこの場合の決着というのは勝敗を決めるのではなくて「折り合いをつける」ってことで、即ち「自分自身に妥協する」ってことだから。
そしてたぶん、この時代、この国で私たちが幸福に生きるためにできることって当面はこれしか無いと思う。
こうたさんもカイトくんもミッチもミッチのお兄ちゃんもみんなボロボロになっていくけど、この、ボロボロに苦悩して泣きながら妥協を選んでいく男たちの頼もしさときたら、まるでやりたくもないのにやらされている人生という持久走の伴走者のようではないですか。

ところでジョージオーウェルの1984年に、‪「ぼくたちが今やっているゲームではこちら側に勝ち目はない。ただ同じ敗北でもましな敗北がある、それだけだよ」という名台詞があるけど、虚淵作品を読む時に鍵となるのはたぶんこの考え方だと思ってる。
‬今、私たちって世の中(それは資本主義とか新自由主義とか色んな名前があると思うし、或いはそれこそ名前のない怪物かもしれない。)というものにウルトラ理不尽なルールのゲームを強いられている状態と言って差し支えないじゃないですか。
そんな中でどう「かっこよく負けていくか」を一緒に悩んでくれる。私が虚淵玄を好きな理由はこの辺だったりする。

‪で、そんなクソ世界でせめて惨めに敗北しないために自分を守る鎧になるものが妥協であり、妥協は更に言うと赦しだと思う。
だって自分や誰かを赦さないと生きていくのって辛いだけになっちゃうからな。だからミッチがミッチを赦せるようにこうたさんがミッチを赦したのは、もうこうたさんの優しさが暖かすぎて私はビッチャビチャに泣いた。しかしこんだけ言ってもなお納得していないミッチ!わかる!お前の気持ちわかる!世界に呑まれると誰も赦せなくなるのわかる!でも赦せ!自分を!‬!兄を!!!こうたさんを!!!!(号泣)

世界に呑まれた点ではカイトくんも同じだけど、カイトくんはものすごいメンタルの強さでもって自分も他人も赦さない選択をしたのが、かっこよすぎるよな。
これはある意味一番フィクション的な展開であり、だからこそ個人的にめちゃくちゃ憧れるカイトくん。
行き着く先が最悪の地獄しかないのをわかった上で最悪を引き受ける機会って現実ではそもそもあんまないしね。
現実はだいたいの場合もっと曖昧な地獄が広く浅く広がっているから。それもそれで辛いんだけど。

出来ることならこうたさんみたいにルールの外側に行く選択がしたい。
ただそれはまどかもだけど自己の消滅以外やりようがないし、これも現実で選びにくい選択肢ですよね。

とりあえず全体としてこんな感じのことを考えながらおいおい泣きながら見た鎧武でした。こんな事考えながら特撮見てんのちょっとキモいな。
ちょっとキャラクター毎の語りたいこともあったんだけどここまでで死ぬほど長くなったから別で書くわね。
というわけで以上です。

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