別れのチャンス

今までも、数回そのチャンスはあった。特に、歩行困難になった2015年からは何度も。

終活という言葉を使いたくないけど、立つ鳥跡を濁さずというか、有終の美というか、自分がこの世を去った時、何も遺したくないなぁ~というぼんやりした思いをずっと抱えていた。

祖国日本との直行便が欠便となった3月半ば。気持ちはグッと沈んだ。元々日本への行き来が多いわけでは無かったし、行こうと思えば、数か所経由で行けるわけだけど、この事実には、完全にシャッターを降ろされた気分だった。

これが最後のチャンスなのか?そう思って本棚を眺めた。
あんなに大事に抱えて持ってきた詩集や歌集や小説。ペラペラの切り抜き記事でさえ、私にとっては掛け替えのない日本の活字だった。

ここ最近、松葉杖を出したりして、不自由さと格闘している。今のうちなら、私の手で葬ることができる書籍類。

一冊一冊改めて目を通し、初めて読んだ時の感動を再確認して、丁寧に拭いて抱きしめて箱へと詰めている。
寄付というと、聞こえは良いけど、あんなに熱心に買い求めた自分のパッションをはぎ取る作業だ。

大したことも無かったんだなぁ~私の情熱なんて・・・。