水無月

誕生日と言えば、小さい頃からよく言われたのが「6月生まれなの?雨で鬱陶しい月ね」だった。

もちろん6月のイメージであって、私のことではないのは解っていたが、ちょっと寂しい気がしたものだった。
今なら科学的データを上げて、東京都の降雨量の多い月は9月と10月だと言えるのだが、いや、そんなことを言ったところで始まらないから、やっぱり寂しく笑って過ごすだろう。

梅雨の花なら断然アジサイだろう。 アジサイを英語で hydrangea と呼ぶ。 発音はカタカナ表記で「ハイドレインジァ」と言ったら良いかな。名前に hydr から始まる言葉は「水」関連だから、アジサイの英語名はかなり科学的なのかもしれない。

このアジサイ、漢字では紫陽花と書くのだけど、実は花びらがハラハラと落ちて枯れる花ではない。ずっと同じ姿で、少しずつ枯れていくのだ。丁度、ドライフラワーのような姿になって。

紫陽花は、雨の中誰かを待って、そのまま梅雨が明けたら、誰も紫陽花のことなんか忘れちゃって、夏の日差しに喜ぶ子供たちの声を聞きながら、立ち枯れていく。

そして、私の記憶の中の紫陽花は、今でも裏木戸の横に静かに佇んでいる。子供の頃、でんでん虫を探して、手の平に乗せたりしていた幼い私の側に咲いていた紫陽花。

雨が降れば降るほど、その青色ー紫色ーピンク色を濃くした紫陽花を思い出す私の生まれ月ももう過ぎた。

そして7月になった・・・。