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片親パンの思い出

みなさんはお弁当のおかずって何を思い浮かべますか?ハンバーグやからあげが人気ですが、私が学生の時は食べる機会があまりありませんでした。
『片親パン』といわれるものが当時の私にとってのお弁当のおかずになっていました。

片親パンとは・・・
SNSの普及により登場した言葉。共働きの家庭や母子家庭、父子家庭による収入減、家庭内暴力などにより子供に与えられる食事のこと。主に安く買えるあんパンやスティックパンなどがある。

twitterより




・小学生の時

小学生のときのお弁当は、ご飯に梅干しだけといういわゆる『日の丸弁当』だけで他のおかずはありませんでした。
母親、父親共働きで朝も忙しくしていてそのため簡単に作ることができる『日の丸弁当』になりました。
運動会や遠足などの行事では、それをクラスメートに見られるのが恥ずかしくてトイレに行く振りをしてトイレの中で食べたり(いわゆる便所飯)したり、どこかの影に隠れてこっそり食べたり、ご飯を道ばたにある鉄の網がかかっている下水道に捨てたり、カラスや野良猫にあげてお弁当を忘れたと担任の先生に嘘をついて先生のお弁当のおかずを分けてもらったりしていました。



・中学生の時

中学生になってもそれは続きました。
学校生活での食事は給食がありましたが運動会、遠足、文化祭といった行事には必ずといっていい『日の丸弁当』でした。
小学生の頃と比べて身体的にも精神的にも成長した中学生から見れば『日の丸弁当』なんてダサい、気持ち悪い以外の何者でもありません。
また遠足や修学旅行ではグループを作ってみんなと一緒にお弁当を食べるという謎のルールにより、なお恥ずかしくなってトイレに行って食べることも難しくなりました。
クラスメートにクスクスと笑われながら心を殺して食べるしかありませんでした。周りのクラスメートのお弁当にはハンバーグやからあげなどのおかずがあって美味しそうで羨ましいと思いましたが、それを分けてもらうことはできません。なぜなら私のお弁当はおかずがないからです。
お弁当のおかずの交換は一方的に誰かに分け与えるではなく必ず「誰かと交換」という暗黙の了解があってそれを中学生で知っていたのでクラスメートの「誰かと交換」できるはずもなく、ただただ心を殺して食べるしかありませんでした。

でも1つだけ嬉しかったことがありました。
母親の仕事が忙しくなったりして『日の丸弁当』でさえ作るのが難しいときは『ヤマザキの薄皮つぶあんぱん』を買ってきてくれることがありました。パッケージ袋に入ったままではなくお弁当箱にそのまま入れられて持たされましたが、これが本当に嬉しかったです。2023年の現在は値上げによりあんパンの数が4個ですが私が中学生の頃は5個入っていました。
またおやつに『ヤマザキのチョコチップスティック』が追加されました。

『日の丸弁当』を食べていたらクラスメートにバカにされたりクスクスと笑われながら心を殺して食べるしかなかったんですが『ヤマザキの薄皮つぶあんぱん』はバカにされることも笑われることも少なくなり精神的に食べやすかったです。
またおやつとして持たされていた『ヤマザキのチョコチップスティック』のおかげで初めてクラスメートの誰かとおかずの交換をすることができました。「おいしい」という食感と「うれしい」という感覚を一緒に持てたおかずになりました。


・高校生の時

『日の丸弁当』は高校生になっても続きました。
身体的にも精神的にも成長した高校生になっても『日の丸弁当』は中学生の頃よりももっと恥ずかしくつらい思いをすることになりました。
小学校、中学校の頃にはあった給食がなくなったからです。
これは本当につらかったです。体育祭や文化祭などの行事に関わらず学校という日常生活でも『日の丸弁当』を食べなければいけないという苦行のような毎日でした。
幸い、中学生の頃にあったグループを作って一緒にお弁当を食べるという謎のルールがなくなったので小学生の頃のようにトイレに行って便所飯という機会も日に日に多くなっていきました。

また1つ嬉しいことがありました。
高校二年生の頃に父親が自死したことをきっかけに母親が『日の丸弁当』を作ってくれる機会が少なくなり『ヤマザキの薄皮つぶあんぱん』を食べる機会が自然と多くなりました。
これにより手早く美味しく食べることができるようになりました。昼食を食べた後は図書室に通い詰めて昼休みが終わるのを耐えていました。
それから母親からの経済的DV(家族に対して経済的に追い詰める行為)が始まってアルバイトをするしかありませんでした。
アルバイトを始めてから母親が『日の丸弁当』を作ってくれる機会がだいぶ減って自分のアルバイトのお給料から『ヤマザキの薄皮つぶあんぱん』や『ヤマザキのチョコチップスティック』を買う機会が増えました。
それからは『日の丸弁当』に対しての嫌悪感を抱くことなく精神的にも楽になりお弁当のおかずを食べやすくなりました。


・まとめ

一般的な家庭ではパンはお弁当のおかずではないと考えがちですが2023年の今でも『片親パン』は健在で私が高校生の頃受けた親からの経済的DVや家庭内暴力、会食恐怖症(かいしょくきょうふしょう)が増えてきて実際にお弁当のおかずになることも少なくありません。

会食恐怖症とは・・・
大人数や人前での食事に恐怖と不安を感じ、吐き気などの体調不良を引き起こす社交不安症のこと

中国新聞デジタル より

SNSの普及により『片親パン』という単語が登場しました。
調べてみると私以外にも『ヤマザキの薄皮つぶあんぱん』や『ヤマザキのチョコチップスティック』などを学生の頃、お弁当のおかずとして食べていた人がいるのを知って自分だけじゃなかったんだと安心感を覚えてました。
お弁当のおかずとして『片親パン』をなくすためには最低賃金の賃上げ、消費税の減税、物価の低落、親業免許制度ができるのを祈るしかありません。


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石島 道康さん https://note.com/michiishijima/