バスオーボエって何?~ホルスト「惑星」だけではない特殊楽器1

ホルストの組曲「惑星」。音楽ファン、とりわけ管楽器に親しむ者にとっておなじみの曲であり、演奏経験を有する者も多いと思う。
さて、同曲は大規模な編成で、数々の特殊楽器を含む。テノールチューバ、バスフルートもある中で、最も異色を放つのは「バスオーボエ」ではないだろうか。
本稿では、そんなバスオーボエ楽器の紹介、そしてこれまで言及されなかった同曲におけるバスオーボエを指定した背景を考察したい。
 
2003年ポップス歌手・平原綾香による「木星(=ジュピター)」のカバーもあり、一般的にも「惑星」の認知度が高まった。また、2006年、冥王星が惑星から外されるニュースがあり、発売のタイミングが重なったラトル&ベルリンフィル盤のCDが爆発的な売れゆきを見せたニュースがあった。
この曲はそれほど古くから知られていたものではなく、ようやく知られるようになったのは1980年代と考えられる。理由として、オーディオシステムが進歩し、スペクタルなサウンド曲が喜ばれたこと、カラヤンによるベルリンフィルの録音CDが発売されたといったことが挙げられる。それ以降、多くのCDがリリースされるようになったと記憶している。
CD(当時はレコードだが)を買って、解説書で楽器編成の一覧表を眺めた人も少なくないと思う。最も異色を放つのは「バスオーボエ」ではないだろうか。「惑星」は7曲からなり、うち、「火星」「水星」「土星」「天王星」「海王星」でこの楽器が登場する。
「土星」の冒頭と「海王星」の中間部にはソロがあり、イングリッシュホルンよりも低く、重くほの暗い音が聴ける。また、「水星」ではソロが一瞬きらめき、「火星」「天王星」ではオーボエ、ファゴット類とのアンサンブルも聴ける。ホルストが託した期待は小さくない。
ところで、このバスオーボエ、その実態はあまり知られていない。事実上、「惑星」専用の楽器と見なされ、某サイトによると「惑星」があるから製造されている旨が書かれていた。もっとも、1970年代、楽器が調達できなかったのだろうかバスクラリネットで代奏したり、バスクラリネットを重ねるケースもあった。前者はアルメイダ指揮モンテカロルフィル(私が初めて接したレコード)、後者はマゼール指揮フランス国立管だ。
本当に専用の楽器なのだろうか。もっとその音を聴いてみたいと、切望し続けていた。(続く)

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