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『紙猫』紹介 その2

『紙猫』誌紹介の続きです。

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浮沈する牡丹のなかを登廊   岡田由季

自句もやるんかい。やるんです。
紙猫の各自15句は、旧作でも新作でもOKだったのですが、私は仔猫句会の吟行で作った句のうち、行った場所のわかりやすい句を選びました。
この句は2015年4月に、奈良の長谷寺に行った時の句です。「紙猫」は吟行の年表つきなので(個人的に)便利です。

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双六の上で眠ってしまふ猫  木村オサム

木村オサムさんは、ひとつの語を使った連作にハマっているようです。今回の「猫と双六」も15句全部が双六の句です。ちなみに、猫の句を最低一句は入れなくてはいけない、というしばりがあり、「猫と双六」には猫の句も4句入っています。

オサムさんは、第一回鈴木六林男賞を「πr²×h÷3」という20句連作で受賞しています。これは円錐の体積を求める式です。20句全句に円錐という言葉が使われています。

受賞作品はこちらのサイトで読めます。
鈴木六林男賞

同じ語を使った連作という手法は従来からあると思うのですが、木村オサムさんは徹底しています。一語からの発想の豊かさに感心。

現代川柳でも同じ語を使った連作があります。石田柊馬さんの「もなか」の連作とか暮田真名さんの「OD寿司」とか。一語を使うという意味では同じ手法ですが、川柳と俳句でどう違うのでしょうね。


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熱帯夜狂気山脈そそり立つ  毬月

長い間句会をご一緒していても、作品をまとまって読む機会があまりなかった作者もいて、毬月さんもその一人でした。俳句スクエア同人。

仔猫句会は吟行句会なので、吟行の嘱目句を見ることが多いのですが、今回の毬月さんの「襖の奥の春山河」は虚に傾いた作品も多く、こういう句を作る人だったのかと認識を新たにしました。

掲句は狂気山脈という言葉に少しびっくり。元ネタがあるのかとググってみたら「クトゥルフ神話に登場する架空の山脈」とのこと。それを踏まえた句かどうかはわかりませんが、クトゥルフ神話となると、ますます尋常ではないですね。

毬月さんご本人がとても穏やかで、きつい言葉を発しているのを見たことがなく、とても優し気な人なので、余計に「おっ」と思ったのでした。

最近、ご体調などの関係で、あまり出席されていないので心配です。

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次回につづきます(不定期)



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