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エッセイ⑤

久々に風邪をひいてしまって寝込んでいる。
会社も休んだ。病床に伏すとふと数年前にコロナにかかり、肺炎も併発して入院する羽目になったことを思い出した。

防護服姿の男性達が黒塗りの高級車に乗ってぼくを隔離しに迎えに来た。病室も当然に隔離され、カーテン越しに若いお兄ちゃんと一緒の相部屋になる。
トイレもベッド脇にある簡易なもので用を足した。猫の砂みたいなものを毎回かけて汚物ダストへ入れる一連の作業が病人には辛く、「伝染病患者」の自覚を持った瞬間だった。

支給される飲み物は水かお茶のみだった。
「そろそろポカリとか飲みたいな。。」と思い、看護師の方にナースコールボタンを押す。

「お金払うので何か清涼飲料水をお願いします」と千円札を1枚出したが、患者のお金は触れるとコロナが伝染る可能性があるので購入することは出来ないと断られてしまった。かわりに誰か身内の人間に買ってきてもらい、それを受け取り看護師から僕に渡すことなら可能ということだったが、なんとも回りくどいことだろう。オプションに清涼飲料水の無い病院に隔離されてしまったことに、ぼくは心がぽっきり折れそうになった。

今後しばらくのあいだ、何かで寝込んだときには良いフラッシュバックは見られそうにないかもしれない。


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