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“四不青年”

“四不青年”

“四不青年”
       1.不搞対象、

       2.不結婚、
       3.不买房、
       4.不要孩子

   近年のネット流行語の代表格に“四不青年”がある。巨大な生存圧力を前に恋愛、結婚、住宅購入そして子供をもつことを諦め、拒否する青年層の現状を象徴する表現だ。因みに、広州市共青団市委が行った「広州青年発展状況」調査では、15,501の回収済み有効サンプルのうち、“不搞対象、不結婚、不要孩子”、すなわち,恋愛も結婚もせず、子供もいらないという大学生の回答は1,215というから、およそ1割方の青年がこの“四不青年”ともみられる。

  こうした現象の蔓延に対し、当然お上も危惧しており、ネット上に流布した広州市共青団のものとされる文書では、これら“四不青年”を“四要”、すなわち,恋愛、結婚、住宅、子供に向かわせなければならないとして、多くの方策を施し、青年発展型の城市建設を進めるべきだと強調しているが、ネット上の反応は冷たい。

   コロナ禍もあり、経済はこの半世紀以来の最低水準となり、都市青年層の失業率が歴史最高水準となっていることから、若者のこの“四不”選択こそ、まさしく「無奈之挙」、つまり選択肢なき中の無力感による無気力な選択でしかないのではないかという。この“四不”を“四要”に変えるためには、スローガンを叫ぶこと以上に、先ずは一部の青年層の“躺平”の原因を明らかにし、その上での対処することだとのコメントもある。

 この“四不青年”と並ぶネット上の流行語がよく知られているように、“巻、躺、潤”。激烈な競争を意味する「巻」とそれを拒否、放棄し、現状に甘んずる「躺」、そしてそうした不快な環境から逃避する「潤」だが、特に「潤」のrunという発音は文字通り「逃げ出す」(run away)という英語にも通じる秀逸な選択。

  とまれ、若者を激励し、社会発展に積極的に参与させ、“躺平”心態から脱却させ、如何にして個人の成長と発展を図るか、政府、社会はより良い発展環境と機会を提供し、その潜在力と創造力を発揮させることが要請されているとの冷静な声もみられる。

“十不青年”

   だが、ここへ来て、“四不青年”に加えて最近では、十不青年という謂も出現している。
   実は、この“十不青年”という表現にも2種あり、一つは特定青年層に汎通的な文化現象を指したもので、以下の10項目に距離を置こうとする行動特性を指す。

“十不青年” A 
    1.不听李宇春、周杰伦:
    2.不唱红歌:
    3.不看《新闻联播》和春晚:
    4.不上门户网站:
    5.不读郭敬明:
    6.不看中外主旋律大片:
    7.不玩魔兽、偷菜:
    8.不买奢侈品:
    9.不关注凤姐、芙蓉:
  10.不做自己不喜欢的事:

1.不听李宇春、周杰伦:李宇春(Chris Lee)、周傑倫(Jay Chou)等の流行音楽を自ら判断し、流行歌手を盲目的に追っかけることはしない
2.不唱红歌:紅歌と呼ばれる政治宣伝歌曲に興味なし
3.不看《新闻联播》和春晚:伝統的なニュース番組や春節特別番組に関心なし
4.不上门户网站:その他類型のウェブページ、プラットフォームを使う
5.不读郭敬明:郭敬明等の流行文学作品に興味示さず
6.不看中外主旋律大片:内外のヒット映画に興味示さず
7.不玩魔兽、偷菜:《魔兽世界》(World of Warcraft)、偷菜等オンラインゲームは遊ばない
8.不买奢侈品:物質消費に独自の判断を持ち、むやみに高級ブランド品を求めない
9.不关注凤姐、芙蓉:「凤姐」(罗玉凤)、芙蓉等のインターネット上の有名人や話題の人物に興味なし
10.不做自己不喜欢的事:個人の自由と興味関心への重視を強調する

  いわば主流に与することなく、世間のメインストリームには一歩距離を置くアウトロー意識であり、自らの判断のみをその主流反撥反骨精神の基礎に据えている。

   その一方で、消極的な生活態度に流れる青年層を形容する表現としても“十不青年”が用いられる。

“十不青年” B
   1.不愿意献血、
   2.不愿意捐款、
   3.不愿意结婚、
   4.不愿意生小孩、
   5.不愿意买房、
   6.不愿意买彩票、
   7.不愿意炒股、
   8.不愿意买基金、
   9.不愿意扶老人、
  10.不愿意感动

  「不愿意献血、不愿意捐款、不愿意结婚、不愿意生小孩、不愿意买房、不愿意买彩票、不愿意炒股、不愿意买基金、不愿意扶老人、甚至不愿意感动」、すなわち,献血、寄付、結婚、子供、家、宝くじ、株式、基金、高齢者援助、そして感動をも拒否するという一連の抑制行動である。上記の“躺平”の延長線上にあるものと見られるが、競争に倦み、単に現状に甘んずるというより寧ろ現状への拒否の色彩が濃い。

 但し、前記の“十不青年A”がその主流判断忌避に確固たる自己が確立されていることが基礎となっているのに比較すれば、後者の“十不青年 B”は“躺平” の極致、過激なまでの怠惰にしていわば自己の喪失、両者の違いは明白であろう。


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 こうした醒めた無気力層の“四不青年”“十不青年”を含む00后世代は今や中国の総人口の過半に迫る。これら“四不”“十不”の帰着するところとは、少子化の加速、結婚/住宅市場の収縮、娯楽/エンタメ市場の枯渇にして、労働力数量の減少、社会福祉/ボランティアの負担増であり、国家運営に阻碍をもたらしかねない大きな要因となる。ただ、こうした社会的エネルギーの低下は必ずしもひとり中国固有の現象と捉えることはない。寧ろ一定レベルの豊かさに達した層を抱える中にあってのいわば先進国病理の一環であり、各国・地域に共通する課題ともいえよう。
                                                                                              [了]

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