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城郷差異と差距

 農村派としてよく知られる賀雪峰(武漢大学社会学院院長、中国郷村治理研究中心主任、教授)が行った城郷対比論。
 そもそもは三農問題解決に向けての《中共中央 国务院关于实施乡村振兴战略的意见》(2018年中央1号文件)における郷村振興戦略の提起以来の流れに沿ったものと映るが、郷村研究者の中央政策への期待と不安がないまぜになった慎重な対応が窺われる。

 曰く;

城郷差異の縮小にはまず城郷差異を理解すべき。
現在の中国の都市と農村は二つの異なるシステム。都市が高度に市場化されているのに対し、農村は依然として多くの伝統あるいは自然経済成分を多く保持している。
城郷関係は中国現代化過程における一対の基本矛盾で、対立統一、相反相成の関係。城郷の形態、環境、内在机制が異なっており、異なる規律で運行している。
今日の中国現代化の特殊段階にあっては、城郷間の相異なる机制、規律を尊重、利用し、現代化目標の実現を図らねばならない。

 末尾の一節は、目標達成には、相異なる都市/農村間のメカニズム、規律をこそ尊重すべきだと農村寄りの配慮を訴えているものと読むべきだろうが、その指摘するところを項目別に整理してみたので、以下瞥見しよう。

形態与環境

賀雪峰「論城郷差異」《文化与伝播》2024年第1期から作表 
以下同

制度差异

生活方式

功能

 この賀雪峰の指摘するところは、“郷賢回郷”、“耕読傳家”等農村の伝統価値を尊重しつつ、農民意思に沿った農村振興を訴える王振耀「乡村振兴与共同富裕」(《中国乡村发现》2023年第4期)にも相通じる。王振耀は、現在北京師範大学中国公益研究院院長に収まってはいるが、かつて李学挙・民生部長の下、1990年代当時、民生部基層政権建設司で村民委員会主任選挙(所謂村長選挙)の推進に尽力、“民主の小実験”に邁進した開明派民政官僚の代表格。彼らの軌跡は、日本の全共闘世代のその後をも彷彿とさせる。

                              [了]


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