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マイケル・モーパーゴ 『だれにも話さなかった祖父のこと』

僕にとってのこの本:
年長者とこども。傷つき生きること。やがて許される。通じ合う。こどもだけができること、祖父の歴史を継ぐこと。

おじいちゃんって笑わない人だな、どうしてかな……とずっと不思議だったが、そのわけが理解できたのはかなり大きくなってからだ。皮膚がつっぱって、動かすと痛んだのだ。そもそも声をたてて笑うことがめったにない人で、笑っても表情はおなじ。微笑んでいるときは目にあらわれた。子どものころのわたしには、そういうことがなんにもわかっちゃいなかったのだ。

p20より

素晴らしい本でした。本当に僕は何にも知らない。この人を知らずに39年間もよく生きてこられたなと。そのくらい素晴らしいと思いました。

年長者とこどもの対話です。マイケルの目線でおじいちゃんのことが語られていきます。おじいちゃんは、戦争で傷を負った。心身ともに。

その傷が、どうしようもなく痛かったし、傷が別の傷を生み出すように、痛みをひろげていってしまった。

それでもなんとか生きた。そして、最後にマイケルがおじいちゃんを痛みの海から救出していく。

そんな感じでした。

年長者との対話、こういうものにジャンル名があるのだろうか。いつか僕もそうしたものを書きたい。教育という仕事も、いつかそうしたものになってほしい。

年長者との対話、考えさせられる。古くからある物語の形式だし、歴史を継承するときのひとつのやり方。ネルーの『父が子に語る世界史』をひくまでもなく。

児童文学の著名な作家、マイケル・モーパーゴ。
はじめまして、このあと、あなたのことを調べてみます。
代表作「戦火の馬」は、映画になったみたいですね。

戦争の傷を、ことさらに特別視しないのは、イギリスならではなのかな…好印象です。傷は、傷なんだ。戦争で得たものも、そうじゃないものも。悲劇的なものといういみでは同じなんだ。
それを特別視しすぎると、きっと立ち直れなくなる。少年マイケルはきっと、それをしなかった。こどもだったから。


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