9511 沖縄電力 値上げ申請認可で黒字化 飛びついていい??
沖縄電力の値上げ申請が経産省に認可されました。5月17日の22年度通期決算発表時に保留していた23年度業績予想を公表し、+40億円の黒字転換、となっています。
2021年2月のウクライナ戦争以降急騰していた石炭(&ガス)価格を受けて、電力各社は非常に苦しい時期を過ごしてきました。
今年に入ってから石炭価格は急落、ウクライナ侵攻前の水準に戻していますが、火力発電に頼る沖縄電力は、22年度、通常の年間当期利益に比して1桁多い大赤字を計上。
漸く値上げ申請が認可され、黒字転換を発表しています。
とうとう電力冬の時代は終わりか??
と春の息吹を感じるようなgood newsではありますが、一旦落ち着いて今回の値上げ申請と業績予測について分析してみたいと思います。
まずは沖縄電力の業績の概況です。
2022年3Q以降業績は右肩下がり
2021年3Q以降四半期当期利益はマイナスに
2022年4Qは過去最高赤字額▲163億円/Q
当期利益推移は以下の通り、昨年度は桁の一つ違う損失。
2018年度:+38億円
2019年度:+67億円
2020年度:+83億円
2021年度:+20億円
2022年度:▲455億円
22年度、お疲れ様でした…。
では、次にこのひどい赤字を出した背景について見てみましょう。
まずは電源構成です。
販売電力量は年間7,000MWh前後
65%が石炭火力
27%がガス火力(LNG)
沖縄電力の供給する電力は、99%が火力発電由来です。
そして、65%が石炭火力となっています。
4分の1はガス火力なのですが、以降話を簡単にするため、ガス(LNG)については割愛しましょう。
さて、では沖縄電力の業績(売上原価)を左右する石炭価格の推移です。
皆さんご存じの通り、特にウクライナ侵攻後は過去最高も最高、前代未聞のレベルまで急騰しています。
本当に、信じられないレベルです。
豪州石炭価格は、欧州(世界)の電力危機を契機に2021年から右肩上がり
ロシアのウクライナ進行(2022年2月)を契機に、天然ガス/LNG価格が暴騰したことで、石炭価格も暴騰
ガス価格が落ち着きを取り戻す中、豪州石炭価格は2022年末まで過去最高値圏を維持(350~400超USD)
そして、この石炭価格の推移に、四半期毎の業績を重ねて見ましょう。
沖縄電力の四半期業績は、石炭価格の上昇とともに、2022年3Q以降ずっと赤字です。
そして、価格の上昇と反比例するように、その赤字幅をぐんぐんと拡大させています。
2022年4Qは、四半期だけで▲160億円の赤字(沖縄電力の通年の当期利益は通常+数十億円です)。
この強烈な赤字を計上した沖縄電力、今日、待望の値上げ申請が認可されました。
まず、最も最新の値上げ申請は、5月16日に申請したものとなります。
現行料金26円を、36円に引き上げる(それにしても大幅な値上げ幅)ものです。
値上げの前提条件を確認しましょう。
石炭価格 53,189円 / 138.77(円/$)= 383USD/t
足下、石炭価格はウクライナ戦争前の水準である160USD程度で足踏みしていますので、足下の価格自体は沖縄電力石炭価格前提とおよそ半値程度、ということになります。
さて、では、仮に沖縄電力の値上げ申請の前提価格から、実際に沖縄電力が23年度に購入する石炭価格が半値となった場合、業績に与えるインパクトはどの程度でしょうか?
収支不足額は▲622億円
燃料費+他社購入電力料=1,400億円
燃料費部分は1,400億円になりますので、もしこれが半値になるとすると、+700億円の収支改善になります。
終始不足額は▲622億円ですので、ここに+700億円をプラスすると、+数十億円の黒字になるのではないか、という見通しがたちます。
これを踏まえて、本日発表された業績予測を見てみましょう。
来期は、+40億円の黒字、となってますね。
上記の見通しと一致しています。
念のため、業績見通しの前提条件も確認しておきましょう。
石炭価格の前提(但、沖縄電力の購入CIF価格)は217USD/tとなっています。
※こちらはCIF価格ですので、先ほど引用している石炭価格(FOB価格)よりは輸送費等が乗っかるためやや高くなります。
最後に、これまでの石炭価格の推移と、沖縄電力の石炭購入価格(22年度、23年度見込み)を可視化してみます。
どうでしょうか。
22年度に比べて、半値程度(約60%)の石炭価格を見込んでいますね。
値上げ申請で漸く黒字化の光が見えてきた沖縄電力ですが、23年度の業績は、今後の石炭価格次第です。
ここ最近足踏みしている石炭価格が今後どうなるのか、目が離せない状況です。
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