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日本散らばる格差「格差と分断の社会地図」要約・所感 

おはようございます。本日は石井光太さん著書の「格差と分断の社会 16歳からの日本のリアル」を取り上げたいと思います。

石井光太さんの書籍をとりあげるのはこれで2回目になります。石井さんは国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材と執筆活動を行うノンフィクション作家であります。

本書では日本に存在する格差と分断を高校生でも分かる語り口で伝えてもらえます。自分周りの世界だけ見ているだけでは気がつくことも知ることもできない事実がそこにあります。

本書で紹介される分断を一部ですが以下にまとめておきます。


1.日本も今や格差社会

“君に今直視してもらいたいことがある。君が生きて行く日本社会は格差という地雷に埋め尽くされている。もはや格差という言葉では表しきれないほど深刻になりつつある。それが分断だ。”

本書はこのような語り口ではじまります。

かつて日本は1億総中流社会とも呼ばれ、中間層が豊かな国として世界的にみても格差問題の少ない国でした。

一般に自由主義で資本主義の社会体制では格差は拡大すると言われています。格差の行き着く先は社会的な分断です。ここ最近の世界動向に目を向ければ、2016年アメリカでのドナルドトランプ大統領の誕生、2020年のイギリスではブレグジット(EU離脱)といずれも社会的な分断が背景とされる象徴的な出来事がありました。

そして迎えた新型コロナの世界的パンデミックは社会情勢や人々の価値観を一変させ、時代を何十年も先に進めるほどのインパクトがありました。

そんな急激な世界的な社会変化を受けて日本でも格差が拡大してもはや分断すら生まれている深刻な状況なのです。

「えっそんなに?分断だなんて言いすぎなのでは?」

格差が埋まらずにむしろ拡大してしまう根本原因はここにあります。

自分を含めて多くの人が「自分が生きてきた世界」またはそれに近い世界しか知らず、それ以外は想像すらできないのです。

TVで犯罪者の複雑な生育環境が取りたざされても「たしかに大変な幼少期を過ごしたかもしれないが、だから犯罪をする理由にはならない。犯罪に走ったのは彼の責任で罰せられるのは当たり前だ」と自己責任という言葉を振りかざすのが世の多数派です。

しかし、このよう姿勢では埋まるどころか分断は深まるばかり。もし本当に格差を埋めようとするならば、相手の事をしっかりと知り理解しなければなりません。歩み寄ろうとせずに批判だけするのでは根本的な解決策にはなりません。

2.貧困と教育格差、その先にある職業格差

学校の先生は言います。「君たちには無限の可能性があり、うまれや育ちが違っても素晴らしい人生を手に入れることができるんだ」と。しかし、現実はそんな綺麗事ではありません。

2021年現在、日本の相対的貧困率は15.7%でたり6人に1人の約2000万人が貧困ライン以下での生活を余儀なくされています。母子家庭は2世帯に1世帯が相対的貧困ともされます。(貧困と教育にどのように影響するかは以前のnoteでとりあげました)

一方で東大生の6割が年収950万以上の家庭であり、国立大学医学部に通う学生の親の3割が医者だと言います(私学では5割とも)。教育にどれだけお金がかけられるかは進学に大きく影響します。親が高所得というだけで子どもが受けるメリットがいかに大きいかが分かります。

日本はまたまだ学歴社会。教育の差が職業格差に直結します。社会は弱い立場の人を搾取する構造があり、教育格差によって不利益を被った人たちに待遇の悪い仕事を押し付け、さらに見えざる差別をしているのです。

生活が厳しい上に待遇の悪い仕事、職場では大きなストレスを抱えている。このような人がはけ口として走ってしまう事が多いのがギャンブル。日本の社会ではギャンブルやタバコ、アルコールなど依存症を引き起こすものが合法ビジネスとして認められています

カジノのある国と比較してもギャンブル依存症の割合は高いのです。そもそもカジノは富裕層向けのギャンブル、日本のギャンブルは所得の低い人から吸い上げる構造で成り立っています。(パチンコで遊ぶ人の約半数は年収300万以下というデータもあります。パチンコの市場規模画約15兆円あり、その半分は所得の低い人からまきあげている)

現実には多くの人が消費者金融に手を出し、借金返済に行き詰まって人を台無しにしてしまうのです。

3.移民はなぜギャングになるのか。国籍格差

近年の社会問題の一つに外国人ギャングによる犯罪の増加があります。その背景には何ながあるのか。

少子高齢化が進む日本では労働者は年々減少しています。そこで頼って来たのが外国人労働者です。外国人にビザを発行して日本で働いてもらうことでその穴埋めをしようとしてきました。

しかし、国の政策や支援は外国人労働者にやさしいものではありませんでした。そもそも賃金が安い上に不況下において真っ先に解雇される対象であり生活に困窮する人が多くいました。

中でも苦しい境遇に立たされたのが、彼らが連れてきたり日本で生まれたりした子どもたちです。親の都合でいきなり日本に来て右も左もわからないまま日本の学校に入れられる。短期間で語学習得することは難しく、文化に溶け込めなければ待っているのが孤立。

日本人である限り中学までは義務教育で教育が保障されていますが、外国人の子どもでは事情が異なります。仮に不登校になって、親が転校先で手続きをしなければ不就学つまり小学校中退という事態にもなり得るのです。(外国籍児童の15.8%は不就学というデータもあります)

日本語が出来ないのと日本に馴染めないのも自己責任だと自分で生きていくことを強いられます。このように社会のレールから外れてしまった子どもたち同士で非行グループをつくり、生きていくために犯罪に手を染めてしまいます。ドラッグやコピー商品の密売、人身売買、詐欺、みかじめ料の聴取や債権の回収などがその例です。

外国人労働者の受け入れ環境が整っていない日本の中にも、良い取り組みで成果を出している地域があります。岐阜県の可児市がその例にあたります。可児市は外国人労働者の数が多い地域でそのお子さんの不就学問題が課題としてありました。そこで市で予算を立てて、外国籍の子どもを対象としたバラ教室KANIを設立します。(https://www.city.kani.lg.jp/23216.htm可児市ホームページ)

市が教師や通訳を雇い入れ、来日して間もない子どもたちを集めて日本の学校に入学させるために3ヶ月間日本語から文化の習得までみっちりと学ばせます。学校には国際教室を設置し、フォロー継続します。このような環境は日本の子どもにとっても国籍に関係なくたがいに認め合い関わり合う多様性の精神を養うのに最適です。

ここまでに日本でも格差社会化が進行していること、具体的に教育格差、職業格差、国籍の格差についてまとめてきました。本書を読むまでは恥ずかしながら不就学、小学校中退という言葉自体を知りませんでした。

人は知らない事と嫌いな事を割と近い距離感に置くと言います。自分の周りのごく小さな世界だけで生きて他の世界を遠ざけてばかりいては格差は広がるばかりでしょう。まずは知ることからはじめる。今回のnoteだけでは十分にまとめきれなかったので、次回また違うテーマでの格差を取り上げていこうと思います。

気になった方がいれば是非手にとって読んでみてください。



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