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死を考えるのは生を考えること「在宅死のすすめ方」要約・所感

おはようございます。本日は「在宅死のすすめ方」を取り上げた気と思います。

これまで多くの書籍で取り上げてきた少子高齢化問題ですが、今回は少し違う視点も見ていきたいと思います。高齢化を突き進む日本では、いずれは年間150万人の方が亡くなる多死社会を迎えます。そんな社会では医療機関で亡くなる方よりも自宅で亡くなる方が多くなってきます。

そんな時代への準備として今のうちからの在宅ケアを取り巻く状況を知り、在宅死のすすめ方を理解しておきましょう。いずれは必ず訪れる自分や大切な人の最期を後悔が無いものへとする助けになるのは間違いありません。

本書から学んだことを以下にまとめておきたいと思います。


1.在宅死を取り巻く理想と現実

あなたは何処で最期を迎えたいですか?この質問に対して7割の日本人は自宅で迎えたいと答えるそうです。(私もその一人です)

つまり、多くの人が在宅死を望んでいるのです。しかし、2019年になくなった方で在宅死を実現できた人は14%でした。実に7人に1人の割合です。

70年ほど前まで遡ると、日本人の8割は在宅で亡くなられていました。そこから病院などの医療機関で亡くなる数が増えていき1980年代に在宅死と病院死の割合が逆転し、病院で亡くなる時代が30 年ほど続いてきました。

そして病院死の数は5年ほど前をピーク減少を転じて、再度流れが変わる過渡期にあります。国も在宅死を支える在宅医療の支援に力を入れており、様々な制度が整い始めている時期になります。


2.在宅死を取り巻く誤解 

・お金に余裕がないと、在宅死は実現できない?
決してそんなことはありません。各種の支援制度や保険制度を利用すれば実現できるというのが正しい認識です。

日本には世界一とも呼ばれる公的医療保険制度と介護保険制度があります。75歳以上の後期高齢者が支払う医療自己負担額は1割です(収入による変動あり)。また自己負担額高額の際に所得に応じて一定金額が払い戻される高額療養費制度も活用できます。介護保険についても同様の制度があります。

公的な支援にしっかりと手が届けば、在宅死の実現は難しいことではないのです。

・1人暮らしでは在宅死はむずかしい?

日本では多くの高齢者が独居で暮らしており、年々その数は増えております。身寄りがない自分は、在宅死を実現することが難しいのでしょうか。これも在宅死の誤解ひとつです。

実は本人が在宅死を望んだ場合、実現しやすいのは身寄りがない方あるいは身内がいても介護を拒んでいるケースだといいます。

訪問診療や訪問看護、各種介護サービスを組み立てること。場合によっては近所の方や友人、ボランティアの人にも協力してもらって本人の希望を第一優先で考えてそれを実行できるからです。

変に身内がいて、家族の要望に従うあまり本人の望みが叶えられないといこともあるのです。

3.在宅死を難しくする壁

・在宅ケアに詳しくない医療職の存在
「入院したからには病院に勤務する医療職にすべて任せておけば、在宅死も実現できる。」そう思っている人も少なくないと思います。しかし、現実は決してそうではありません。

病院の病棟に勤務する医療スタッフは救命や急性期医療のスペシャリストたちです。その道では頼りがいがある一方で、在宅ケアについては専門外であり、様々な部署を経験したベテランスタッフを除けば詳しいわけでは無いのです。

知らないがゆえに「こんな状態でお家に帰れるわけがない」「退院でなく入院が継続できる医療施設を探すべきだ」と安易に考えが凝り固まってしまうこともあるでしょう。本当であれば在宅復帰が可能であるにも関わらず、言われるがまま転院が進んでしまうこともしばしば見受けられます。

中規模以上の病院であれば、在宅復帰を支援する専門の部門が必ずあります。入院して在宅復帰を希望する場合は主治医や病棟のスタッフだけでなく、まずは在宅ケアに繋げる専門職に相談をすると良いでしょう。

・救急搬送されてしまう

近年、在宅で療養している高齢者が救急搬送されるケースが増えています。自宅で介護をする家族などが急変に慌ててしまい119番をしてしまうのです。実は在宅死を望んでいる患者さんが救急搬送されてしまうと、望んだ形で在宅死を実現できなくなってしまうかもしれないのです。

救急車は救命を目的にしています。つまり119番するということは心肺が停止した時には蘇生処置をしてほしいという意思表示でもあるのです。そして救急隊には救急処置を行う義務があります。

この点で本人が在宅での自然な看取りを希望していても、病院に運ばれた上に本来は望まない負担のかかる処置を施されたあとに亡くなってしまうケースが出てきてしまいます。

すぐに亡くならないにしても、残念ながらほとんど病院では最期においても過剰な点滴や薬の投与等かえって苦痛を与えてしまっているケースも少なくありません。

4.在宅死を実現するために出来ること

人生会議という言葉を聞いたことがあるでしょうか。人生の最終段階を考え、最期をイメージしておく、それを大切な人と共有しておくことをいいます。

ACP(アドバンスケアプランニング)とも呼ばれ、近年医療介護領域では盛んに広がってきています。かつて、近いものでリビングウィルというものがありました。その違いとは、リビングウィルが本人の意思のみで決定されたものに対して、ACPは本人と家族そして医療介護専門職が三者が対話をとおして協働で創る点です。そしてその過程を大切にしています

また、ACPは変わることが前提です。本人の病状や状態に合わせて何度も創りかえて行けば良いとされています。

本人と家族、それを支える医療介護チームがその想いを共有していれば望んだ形で最期を迎えることが実現する可能性を高めることが出来るでしょう。

まもなく訪れる多死社会を迎えるにあたり現状の医療介護制度の理解、課題を整理する上で非常に有益な機会となりました。

まだまだ社会的にも家族で「死」ついて話し合おうとすれば、不謹慎が先立って進みづらいのが現状でしょう。「死と生は振り子の関係、死を考えることはその分生を考えること」という言葉があります。

まずは私達自身が人生を考える意味で、死について想像を働かせることから始めなければと改めて思いました。

より詳しく知りたいと思った方は是非手にとって読んでみて下さい。



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