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事業再生のこと−36

実際に再生をしている私たちの現実をお話ししたいと思います。
2011年に開業したカフェを事業転換して菓子製造販売に集中し、順調に事業を拡大してきました。
現在の私たちは事業拡大のための岐路に立っています。

●決断すること

「決断する」と言ってもポジティブな決断だけではありません。
ネガティブな「決断」もやはり決断には違いありません。
皆さんは現在の景気の動向をどう予測しているでしょうか?
円安、原材料の高騰、感染症の拡大、世情の不安。
あまり良い指標は見当たりません。
入国者の制限が大幅に緩和されてインバウンド需要は大きく改善しています。
日本という国が渡航先として人気があるのは、
サービスの良さ、商品の品質の良さ、治安の良さなど、もともと持っていた日本人の気質を反映しています。言い換えれば「日本」というブランドはある程度確立していると言って良いでしょう。
「観光業」を主体に見ればそれでも良いかも知れません。
人の輸送、宿泊、飲食業などは状況は好転していると言って良いかも知れません。
しかし、かつて日本の経済を下支えしてきた製造業や建設業は原材料費の高騰で大きな打撃を受けています。
私たち菓子製造業や食品加工業も同じことが言えます。

私たちは以前は飲食業を営んでいました。
飲食業が上手くいかなかった理由は「マーケットの変貌」です。
つまりユーザーの高齢化が主たる要因でした。
営業している地域にもよりますが、このユーザーの高齢化の問題は日本中で起こっていると考えられます。
現在は潤沢な年金額、寿命の延長などで高齢者をターゲットにした産業はまだ拡大傾向にあるようです。
しかし、年金をもらえる年齢や支払う年齢を順延したり、すでに破綻している年金問題を先送りしている現在の状況は団塊の世代がいなくなって人口が先細りしている状況ではいずれ高齢者を対象にした産業にも限界が来るでしょう。
私たちの現在の事業の利点は「マーケットを移動できること」にあります。

私はマーケットの購買層の主体は以前と変わらず30代〜40代の女性であると考えています。

●次のマーケットは「教育」

そして次の新しいマーケットは「教育」に関するマーケットではないかと考えています。もうすでに「リスキリング」など社会人の再教育のマーケットは拡大を始めています。私が注目しているのは「相互教育」と言えるもので、既存の学校教育や大手企業が手がける部屋に集まって講義を受けるタイプのものではなく、またテーマを決めてそのことについて順序立てて枠組みを決めて行うこれまでの教育システムとは違うものです。
教育する側と教育を受ける側がお互いに相手を選び、自由に様々な教育を選択できる仕組みを構築する必要があると考えています。
この教育システムは特別な機材や施設を必要とせず、それぞれが納得した上で安価なコストで教育を受けることができ、しかも一方通行ではなく状況によっては生徒が先生になり、先生が生徒になることも可能です。
それが成立するならば「学校」というシステムや場所が必要なくなる可能性もあります。

教育者はある専門分野に対して知見のある人たちで、特別な資格は必要ないことが重要です。もちろんその人たちの知見に対する裏付けは必要になるでしょうが、ありとあらゆる人が教育者になる可能性があります。

●教育者は実践者

例えば、下町の魚屋の奥さんが魚料理のコツについて教えたり、農家を営む人たちが野菜の育て方の教育をしたり、ホームセンターの従業員が工具の使い方を伝授することが出来ます。もちろん私たちのような事業再生を実践している人間が再生の過程を教えることもできます。大切なのは「実践者」であることで、「理論」や「教育」で手に入れた知識よりもより実践的であることが重要だと考えています。もちろんYoutubeなどですでに行われている内容ですが、それらをまとめ上げて分類し、相互コミュニケーションにまで引き上げることが大切だと考えています。

私たちはクリエイター業界や小規模事業者同士で集まって相互教育をする勉強会Interection Lab.というチームをもうすでに作って活動を始めています。
現在はみんなが集まって行っていますが、それだと人数が限られ時間の制約や場所の制約があります。それらを取り払うためには同じことが出来るweb上のプラットフォームが必要になります。
そしてそれは大手企業が主体になって行うような大規模システムではなく、それこそweb3を活用したようなDAOに近いシステムがマッチしているように思えます。
教育を主体にした経済ネットワークが出現するのもそう遠くはないと考えています。そういうシステムが出来ればこれまでGoogleで検索して自分で学んできたことを自由に好きな時にあらゆるレベルのものをもっと詳細に学習することが可能になります。

●実業への実装

もちろん現在の「菓子製造販売」事業とはかけ離れた発想ですが、新しい事業とはそういう場所から生まれるものだと考えています。
web3が「製造業」のような実業に実装されるのはまだ少し時間が必要なのかも知れません。
これからは「相互交流」によって新しい事業が生まれる可能性が高いと考えています。私たち食品を扱う職業も「生産者」「加工者」を直接繋ぐことが可能になります。そこから新しい「商品開発」による商品が生まれてゆきます。
私たちが自分の事業を維持し発展させようと思うのなら5年後、10年後、何が起こっているかを予測しなければなりません。
時代の変化を正確に予測し、次の時代に生き残る事業の「種」を植えておくことが大切です。
現在の私たちにはまだ「種」を植えるための資本力は脆弱です。
現在は資本を「投資」によって確保する方法が顕著になっていますが、もちろんそれよりも現在の「実業」によって「固定資産」を増やし、投資するための「流動資産」を手に入れやすい状況を作ることが大切です。
無茶をして新規事業に資本を「投下」することは博打を打つようなものです。
新規事業に打って出るには地力をつけて、どんな状況になっても下支えできる企業体力が必要になります。
私たちはまだしばらくは先行投資しながら成長する必要があります。
利益を生み出す体質に変えてゆくことで、将来に備えていきたいと考えています。


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