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事業育成の実際1

●まずはじめに

あけましておめでとうございます。
年明け早々にご報告があります。
私たちの「菓子事業」「デザイン事業」「サポート事業」などを合わせまして昨年12月末に株式会社に法人成りをしたことをご報告いたします。
これも皆様の支えがあってのことと感謝いたします。
破綻しかけたカフェからの業態の変換。マーケットの開拓。ブランドの開発、組織の構築を経て、いよいよ私たちは次のステージに飛び出すことになりました。
ありがとうございます。

●事業の規模について

事業の規模を語るとき指標となるのは「資本金額」なのか「売上」なのか「利益」なのでしょうか?
「資本金額」は企業が持つ資産の大きさを表し、「売上」は事業全体の規模を表し、「利益」は企業の成長力を表します。
おおよその考え方としてはこんなところでしょうか?
もちろん指標となる数字はもっと複雑で多岐にわたります。
良く「年商○○億円の大企業」などと言われることがあります。
例えば上場するには年商○○億円以上必要、なんて言い方をしたりします。
しかし、上場と言っても様々なマーケットがありどの市場に上場するかによって条件は異なるのです。
私たちのような実業系企業のスタートアップとデジタル系企業のスタートアップでは資金の調達の方法が異なるので開業時に保持している資本は全く違っています。
将来性のある事業に対しては10億、100億の投資がされることもザラにあります。
しかし、株式会社を設立するのに必要な資本金は実際には1円で事足りるのです。書類の提出に必要な費用や行政書士に支払う金額を考えても50万円もあれば株式会社を作ることは可能なのです。

●どれほどの売上を目指すのか?

企業規模を「年商」で判断するのなら、まずどの程度の年商を上げれば良いのでしょうか?
良く「年商3000万円」を超えたら法人にした方が良い。という話を聞いたことはないでしょうか?
これはいわゆる「スケールメリット」と呼ばれるもので、税制での優遇措置によってどう言う手法を用いるかでメリットとデメリットが拮抗する売上額の範疇に入るということです。
もちろんここでも「利益率」「利益額」や、今後の企業の成長をどう考えているか?ということも考慮しなくてはなりません。
私たちの場合は個人事業を拡大する中で多くの企業との契約を締結することが出来ました。この場合「売上額」とともに「信頼度」という条件が加わります。
現在8社以上の取引先は全て上場企業、あるいは上場企業の子会社ばかりです。
以前ほどは厳しくなくなりましたが、かつては法人でなければ取引さえ出来ないことが多かったのは「個人事業」では経営が安定せず、突然業務が停止したり商品が納入出来なくなることを考慮した大手企業側の防衛策であるとも言えます。
大手の上場企業と取引を安定して続けるためにはそれなりの生産性や人員の確保、生産管理、財務管理が必要になります。
このことは以前書いた「事業再生のこと」でも触れている通りです。
私たちの会社はまだそれらを網羅して管理できているとは言えませんが、努力してきたことは少しは形になりつつあります。

さて話を戻して私たちはどれほどの売上を目指せば良いのでしょう?
個人事業ではわずか年商300万円〜600万円しかなかったものが現在は約2000万円に成長しました。法人成りのスケールメリット3000万円には少し足りません。
ただ、この3年間に自分自身が「財務」の勉強をしてきたこと、「商品開発」や「広報宣伝」で取り組んできたことはある程度の成果を実らせています。
その中でも大きいのは「財務管理」を指導してもらえる「顧問税理士」と管理ソフトを手に入れたこと、外部の「財務の専門家」に相談できる環境が整ったことは大きいと言えます。
彼らとの相談の上で「法人成り」を進めてきました。

私たちは年始に「事業計画書」を毎年更新し、翌年の売上目標を立ててきました。これまではほぼこの売上目標を実現することが出来ています。スタートアップ企業にありがちな「無理な売上目標」を立てるのではなく、これまでの実績やマーケットの傾向などを分析しながらリアリティーのある売上目標を立てることで、実際の売り上げとの整合性を持たせることが出来ています。もちろん売上を達成できなかった月もありましたが、目標値を下回っていることで次にいかにして挽回するのかという問題意識も生まれ、方法を考え実行することによって売上を回復することが出来ています。
今年2023年は売上目標は前年比100%という低い設定にしています。
法人成りをすることで飛躍的に業績を伸ばす、ということは考えていません。
まず、今年の景況感がわかりにくいということ。現在の景気は世界情勢と感染症に左右されているという事実は国政や企業努力ではコントロールしづらく、ブレの大きい年になるはず。
それでも人は置かれている環境に順応し、解決する方法を考え実行し、やがて以前のような経済活動を始めるでしょう。
ただし、不安定な環境のうち回避できない条件はクリアしなくてはなりせん。感染症のリスクは地球温暖化とともに簡単には解決できす、毎年のように経済活動に打撃を与えるかもしれません。侵略戦争は一定の解決をみると思われますが、この戦争により露呈した食糧の問題とエネルギーの問題はこれからの経済活動でどうしても解決しなくてはならない課題となります。
つまり「ゆらぎの幅の大きな時代」「回避できない健康問題の時代」「食料とエネルギーの供給の模索の時代」の三つは並行して続くということです。
さて、もう一度私たちの目標を時代背景を考慮しながら考えましょう。
とはいえ、私たちは零細企業で先の三つの課題をクリアすることのできるクライアントがなくては生き残れません。幸い私たちのクライアントのうち3社はその可能性を大きく持っています。
それらのクライアントと太いパイプを繋ぐためには、私たちが目指す企業の売上高は10億必要だと考えています。それも成長性を備えた売上高でなくてはなりません。

考えてみれば売上高1億程度の企業は無数にありますが、そのほとんどは1年程度で倒産や廃業の可能性が大きいと言えるでしょう。実際私たちの目の前で窮地に追い込まれ消えていった企業も沢山あります。
逆に言えば売上1億円はそれほど高い目標値ではないとも言えます。真面目に取り組んで5年程度の期間、計画的に事業を行えば可能な目標ということになります。
年商1億をとんでもなく高い目標だと感じるのであれば事業の拡大は考えない方が良いのかもしれません。
年商2000万円程度の小規模事業者の戯言と言われるかもしれませんが、10億を目標にした時点で1億円は最初のステップになります。
そして1億を達成することで得られるメリットはとても大きいとも言えます。
これまでの私たちの事業は非正規雇用者だけでも運転ができました。しかし1
億になればそういうわけにはいきません。私たちはこれから正規雇用者を雇い入れるための社内環境を整えなくてはなりません。
そしてその先10億を超えた頃からは私たち経営者よりも能力の高い人材を雇用する必要があります。
前述した「財務管理」「商品開発」や「広報宣伝」に「人事・人材育成」が重要課題となります。
つまり自分以外に3名程度の経営者を育てる必要があるということです。
それぞれが5000万円程度の小規模事業を管理できる能力を持てば、その時点で年商は2億円程度まで上げることが出来ます。
人材育成に関しては当初は中途採用者(経験値を重視)が中心になりますが、これから3年を目処に新卒採用を始めていわゆる「生え抜き」を育ててゆきます。
それから必要なのは短期間で多店舗の経理システムを統合させ、一元管理できる仕組みを作ることです。
また自社のマーケットを育成するための会員制アプリなどの開発を並行して行ってゆきます。
これまでは「財務」「商品開発」「広報宣伝」「人事」「生産」「生産管理」とそれらをまとめ上げる経営計画の策定を二人でこなしてきましたが、これからはそれぞれを担当する部署を作ってゆく必要があります。
ただし私たちの会社はまだ知名度が低く、優秀な人材にとっての魅力に欠けます。企業の実力以上の人材を雇用するためにはそのための資本、そして何よりも他の企業にはない独自の魅力、そしてそれを伝えるための広報手段を持たなければなりません。
これらの人材が企業内で育ち集まることによって企業の事業は多角化し広範囲なマーケットから収益を得ることの出来る事業体へと成長できます。
3〜5年を目処に1億の売上を獲得し、利益率20%、そして人材獲得のために利益の中から30%を投下する必要があります。

●売上の増加や上場だけが目標ではない

一般的には会社を興したからには売上を伸ばし、いずれは上場することが目標になるのが普通でしょう。
では上場することで誰が利益を得ることができるのでしょう?
企業の利益が伸びても企業の中では役員報酬が上がってゆくだけで平社員の報酬がそれほど伸びるわけではありません。だから入社した社員は努力し、出世して取締役まで上り詰めようとします。
株式会社というのは経営者の所有物ではなく株を持っている株主の所有物となります。それでも多くの場合創業者は経営権を握ることのできる株を保有し大株主である場合が多く、上場することにより多くの資産を得ることになります。
ですからほとんどの場合、創業者は会社を大きくし上場を目指し、資産を増やそうとします。
では、創業者の目的が「資産を増やす」ことでなかったとしたらどうでしょうか?
株式会社ではない法人のあり方や上場せずに会社を大きくする方法は存在します。
自分たちの理想の姿があって誰の影響も受けず、自分たちの考え方に賛同してくれる人たちだけで経営してゆく方法は確かにあります。
ただ、その方法ではすぐには会社を大きく育てることは難しいでしょう。最初から大きな固定資産を持って大きなプロジェクトを動かすことができるのなら可能なことであっても、小さな事業を大きく育てるのは苦難の連続でしょう。
●サントリー
●YKK
●ヤンマー
●竹中工務店
●エースコック

などは上場していない大企業の一例です。
上場の目的はほとんどは「資金調達」でしょう。
●サザビーリーグ
などは上場を廃止した企業として注目を浴びました。
大型の製品を作る産業では成長過程で資金調達することは重要になるでしょう。
しかし、上場することで企業文化の方向を変えなくてはならなくなったり、目的からそれてしまうのを嫌うのなら「非上場」というのも一つの方法かもしれません。
また企業判断を素早く柔軟に経営に反映させるにも株主の意向が経営を左右する上場企業よりも非上場企業の方が優位であるかもしれません。
しかしそのためには上場企業よりも信用できる能力の高い経営陣やサポート人材を保持していることが前提となります。
パーパス経営が注目され、ファンマーケティングが重視されている今、非上場を選ぶ企業は増えるかもしれません。

●年商1億と10億を目指す理由

年商1億という数字で何ができるのかを考えましょう。
例えば広報宣伝費は売上の3~5%、あるいは利益の10~15%と言われています。
年商1億の企業の広報宣伝費は3,000万円〜5,000万円ということになります。
年商1,000万円なら300万円〜500万円では出来ることは限られてきます。
しかし年間に3,000万円〜5,000万円使えるのなら動画制作に毎月100万円かけることができ、ネット上のコンテンツを増やすことが出来ます。
年商1億という企業は吹けば飛ぶような小さな規模です。小さな企業を大きく育てるためにはいくつか方法がありますが
●大企業との取引を成立させる
●企業の知名度を上げる

などが考えられます。
「大企業との取引を成立させる」ことを実現するためには最低限の企業としての信頼度を上げてゆく必要があります。
「生産力を強化する」「経営を安定させる」「販売力を上げる」などの課題をクリアしなくてはなりません。
そのためには「人員の確保」「生産の合理化」「財務管理の強化」を実現するために事業強化への投資が必要になります。そして私たちが取り組んだように「法人成り」を目指すのも一つの方法です。
しかし自分たちよりも大きな企業を相手にするということはその「大企業の思惑」に乗るということでもあります。
大企業(クライアント)の思惑はどんどんと増長してゆきます。もちろん自分たちを対等に扱ってくれる良いクライアントも存在します。あるいは担当者レベルでの相性も存在します。
それでも企業がより利益を求める限り、私たちの限界を超えるような要求をしてくることもあるでしょう。それはクライアントと取引先(下請け)という関係である限り逃れられないものです。

●最優先にするのはエンドユーザーである

私たちの知名度がお客様の間で広がり、お客様が私たちの商品を優先して要求するようになれば「市場の原理」は逆転します。
クライアント側が私たちの商品をこれまでの「条件」を変えてでも必要とするからです。
現場にいる私たちはエンドユーザーのことを一番よく見ています。クライアントよりも私たちはエンドユーザーが何を求めているか知っているはずです。
そして場合によってはクライアントの判断が間違っていることも良くあるものです。「クライアントからの要求」と「エンドユーザーの欲求」のどちらを優先するべきか選択を迫られることが良くあります。
「誰がお金を支払っていると思うんだ」とクライアントから言われれば下請けの企業は逆らえなくなってしまします。
しかし、クライアントの間違った判断で業績が落ちたとしても責任を問われるのは下請け企業になります。ならば確信のある正しい方法で自分たちの業績を守る方が正しいでしょう。私たちが直視するべきはエンドユーザーであって、お金を支払っているのもエンドユーザーなのです。そして正しい判断で売上を上げることが出来たなら、それもクライアントの手柄になってしまうかもしれません。それでもクライアントはあなたの会社との取引を続けるしか方法がなくなります。
クライアントも売上が必要なのです。あなたの会社が売上を上げる限り契約はあなたたちに優位になってゆきます。
会社の商品が優秀でエンドユーザーが私たちの商品のことを知っていて、私たちの商品を要求していることはやがてクライアントにも伝わるでしょう。
自分たちの商品に自信があるのであれば、私たちは自分たちの商品の認知度を上げていくことが第一の目標になります。
年商1億円の企業が最初に手がける目標は認知度のアップであり、自分たちの商圏の中で知らない人はいないほどの知名度を作り上げることです。

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